第21話 避けられない再会

 距離を置いてから、二人は一度も連絡を取らなかった。


 画面に浮かぶ名前を見つめることはあっても、指は一度も送信を押さなかった。


 沈黙の日々は、一週間が一か月に感じられるほど長かった。



 そんなある土曜の午後。


 亮は買い物の帰り道、駅前の広場で人だかりに足を止めた。


 ――そこで見たのは、偶然ステージに立っていた真司の姿だった。



 ライトに照らされ、汗を光らせながら踊る真司。


 観客の歓声に包まれ、誰よりも輝いて見えた。


 その瞬間、亮の胸に強烈な痛みが走った。


(……遠い。こんなに近くにいるのに、手が届かない)



 ステージが終わり、真司が控室へ戻ろうとしたとき。


 観客の隙間から、ふと亮の姿を見つけた。


 一瞬、呼吸が止まる。


「……亮」


 思わず駆け寄った。


 亮も逃げられなかった。


 二人は人混みの外れで向かい合い、しばし沈黙する。



「……来てたんだ」真司が言う。


 亮はうつむいたまま、小さく頷いた。


「偶然。買い物の帰りに、たまたま」


 言葉にできない想いが胸に溢れそうになる。


 でも、簡単には口に出せない。


 それは真司も同じだった。



 沈黙を破ったのは、亮だった。


「……あんなに輝いてるお前を見て、やっぱり不安になった。俺なんかじゃ、隣にいられないんじゃないかって」


 真司は驚いたように目を見開いた。


 そして、苦しそうに吐き出す。


「俺も同じだよ。……お前を守れる自信なんかない。

でも、それでもお前を失う方が怖いんだ」


 二人の言葉は、涙に混じりながらぶつかり合った。


 避け続けていた本音が、やっと零れ出した瞬間だった。


 ――再会は、傷を深めるか、それとも繋ぎ直す一歩になるのか。


 答えは、まだ見えなかった。




#BL


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