第19話 ぶつかる心

 週末、久しぶりに会う約束をしていた。


 駅前で待つ亮の胸は、不安と期待でざわついていた。


 遠くから歩いてくる真司の姿を見つけた瞬間、込み上げる安堵よりも先に、胸に突き刺さっていた言葉が口から出た。


「……この前の写真、あれ、何だったんだよ」


 真司は立ち止まり、視線を逸らす。


「もう言っただろ。仕事仲間だって」


「それだけ? 本当に?」


「亮……信じてほしい」


 その一言に、亮の胸の奥で張り詰めていた糸が切れた。


「信じたいよ! でも、お前はいつも『気にするな』とか『大丈夫』しか言わない! 俺はただ…安心したいだけなのに!」


 声が震え、涙がにじむ。


 真司も堪えていた感情を抑えきれなくなった。


「俺だって全部を話したい! でも言ったら、お前がもっと不安になるだろ! 俺は……お前にこれ以上負担をかけたくないんだ!」


 二人の声が、駅前のざわめきにかき消されていく。

けれど、互いの胸には確かに響き合っていた。


「負担なんかじゃない……。俺は、お前の全部を知りたいんだ」


「……全部なんて、見せられるわけないだろ」


 真司の言葉は、亮にとって刃だった。


 好きすぎるからこそぶつかり、好きすぎるからこそ離れられない。


 その矛盾が、二人を深く傷つけていく。


 しばらく沈黙が落ちた後、亮は小さく呟いた。


「……俺たち、本当に大丈夫なのかな」


 その言葉に、真司は返せなかった。


 握りしめた拳が震え、答えの代わりに冷たい夜風が二人の間を吹き抜けていった。




#BL

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