まえがきから1話、そしてあとがきへと続くこの導入。まるで作者が自分の中の矛盾や衝突を、そのまま紙の上にぶつけたような勢いを感じた。
混沌(カオス)という言葉がタイトルに二度も使われているのは偶然ではない。秩序と無秩序、静寂と激情、現実と虚構——その全てが絡み合い、読者を不思議な迷路へと誘っていく。まさに「迷い道にハマってしまった」と表現したくなる感覚だ。けれどそれは不快な迷いではなく、むしろ心が研ぎ澄まされていくような迷いである。
登場人物たちはまだ輪郭がはっきりしていない。誰が善で誰が悪か、その境界も曖昧だ。しかし、その曖昧さこそが物語の核なのだろう。現代社会の中で、白と黒の間に広がる無数のグレーゾーンを描く——そんな意図が見え隠れする。
作者は敢えて説明を避け、読者自身に考えさせる余白を残しているように思う。だからこそ、一つひとつの台詞や行動に「パンチ」があり、読み手の心を掴んで離さない。
人は誰しも、選択の瞬間に揺れるものだが、この作品ではその揺らぎを「弱さ」としてではなく、「生きている証」として描いている。
そこに温度があり、人間味がある。混沌の中にこそ真実があるというメッセージが、じんわりと胸に染みてくる。
また、文体にも独特のリズムがある。少し粗削りで、時に感情があふれすぎるほどの勢いがあるが、その“荒々しさ”がこの作品の魅力だ。整いすぎた言葉では届かない、人の奥底にある本音や衝動を、作者は真正面から描こうとしている。その姿勢が読者の感情を揺さぶるのだ。
この混沌の先に何が待っているのか、想像するだけで心が高鳴る。もしかすると、この「カオス&カオス」という題名自体が、私たちの生きる現実そのものを映しているのかもしれない。秩序を求めても、結局は混沌の中に戻っていく——そんな人間の宿命を暗示しているように思う。
最後に。
迷いましたが、挑戦する心意気に星を。