第25話――存在価値って?

 目の前には、幽子さんと祓ちゃんがいた。

でも、なんで?


「早く花を助けないと」

 祓ちゃんはそう言い、花に近寄る。そして、花の傷口に手をかざし、いきなり緑の光を放ち始めた。

「ど、どうゆうこと?

ちょ…幽子さん?教えてくれません」

「えぇ…実は、数分前。

何故か、あなたの声が聞こえたのよ。「ゆるなさい!」ってやつね。

しかも私と祓ちゃんだけ。近所の人達は無反応だったから」

「なるほど…でも、どうして」

「私もよくわからない。

けど、祓ちゃんが今すぐ行かないとやばいって言うから…車をわざわざ出して、猛スピードでここまで来たの。

そしたら…これで…」

 幽子さんは心配そうに花を眺めた。それもそうだ…こんな血だらけの花がいたら、さすがに心配するだろう。

「それと、祓ちゃんは今何を…?」


「祓ちゃんは…今、花を回復させているのよ」

 私は目を見開き、祓ちゃんを見つめた。でも、もともと不思議な力をもつ子なんだもんな。

 回復術ぐらい持っていてもおかしくはないか…。

しかし。

「あんなに花と喧嘩してたのに…なんで駆けつけてくれたの?」

 私の質問を祓ちゃんは、淡々と返す。


「ゲームの対戦相手。いないと、つまんないから」

 祓ちゃんの光は徐々に強くなり、花の傷も塞がっていく。す、すごい。

花の顔色もどんどん良くなっていく。

 なぜだろう…花はもう死んでいるのに、生きてるみたいだ。

 花はゆっくりと目を開け、上体を起こした。

「……っ…

な、なんだ…。そ、そうだ…私…やられて…」

「おい、バカ!」

 祓ちゃんは大きな声でそう言った。

「なんで、弱くなってんだよ。

私と戦った時はもっと強かったんじゃん!

なんで…なんで?」


「それは…ひ、み、つ、だ…」


 弱々しくそう言った花を、祓ちゃんは睨見つけた。

「噂に聞いてたのと随分違うね。まるで誰かに力を分け与えてるかのよう。

もうちょっと、特訓したら?

じゃないと、死ぬよ?」

 祓ちゃんは冷たくそう言い放ち、その場から離れた。でも…、その言葉は少し温かいような気もした。

「花!」

 私は花に駆け寄り、彼女の手を握った。

「花!大丈夫!?ケガは!?具合は!?」

「あぁ…祓のおかげで、マシになったぁ……。マジで…巻き込んじまって、すまない…。

あーっと…えーっと。お前に言わなきゃいけねぇ事が。んでも、それは後回しだ。

とりあえず今は…あの、クソ猫を…」

 花が指さす方向には、猫がいた。それも、先ほどよりも弱々しく小さくなった奴だ。

 

 一発蹴りを入れてやろう。私は猫へと近づき、

「おい!」と声を荒げた。

「よくも花をこんなにしてくれたな!絶対に許さないんだか……ら…?」

 このまま、猫を怒鳴りつけてお仕置きしようと思っていたが、


「……あれ?」


 化け猫は子猫サイズへと変化しており…その姿がとーっても愛らしく、どタイプだった。


「えぇ…可愛い…」

 し、しまった。つい本音が…。

それに反応するように

「おい」

 花が、どすの効いた声を出した。そして…めっちゃ睨見つけてくる。怖い怖い、なんで回復したばっかじゃん!?

 花ももちろん可愛いと思ってるよ。

でも、やっぱり、今は…この猫のほうが…。


 しかし、次の瞬間。




「あなたに存在価値はありません」




 突然、機械のようなロボットのような声が響いた。



「あなたはボスの命令を遂行する事ができませんでした。よって、処分の対象です。

つまり、クビです。

裏切った罰です。

もう、あなたは必要ありません。

ボスの部下に変わり、わたくしがお伝えいたしました」


 その途端、声は聞こえなくなった。辺りも静まり返る。

猫は弱々しそうに、うずくまった。

 耳をしゅんと垂らし、小刻みに震えている。

先程の化け猫からは想像できないほど弱々しい。

猫は薄暗く、冷たい床の上で震えていた。彼の表情はどこかさみしげで…敵ながら同情してしまった。

 

 そして、気がつくと私は口を開いていた。

とっさに出た言葉を、優しく猫にかけていた。



「ねぇ。うちに来る?」


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