ep9.若く見られたいと思ったその時が大人
未来 オフィスにて
「「な、なんだってェーー!!」」
俺とナノハが素っ頓狂な声を上げる。及川は俺らの反応に、満更でもない笑顔を見せた。
俺の目の前にいるこの
正直、信じられない。今まで女子高校生位の年齢だと思っていたのだから。
俺とナノハは、暫く空いた口が塞がらなかった。しかし、及川はそんな俺達を無視して、意気揚々と話し続ける。
「まぁウチが”チョベリグ”な美少女やから驚くのも無理ないけどな!」
「...おい、なんだチョベリグって。なに急に年代感じさせようとしてんの?ちょっと使い方違ぇし。」
及川は俺の指摘を無視して一方的に話を進めた。
「まぁウチが若々しいっちゅう話はまた後でってことで、」
「もうしねぇよ」
「この課の課長を紹介する!!」
遂に、今度は課長の紹介か。というか元々の話の本筋は、特課内の序列の説明であったことをすっかり忘れかけていた。
でも確かに、俺達を未来に連れてきた及川がNo.2なら、この特課のトップ、つまり課長は一体誰なんだ?
俺はまだ見ぬ未来人が意気揚々とこの場に現れることを予見し、オフィスの狭い出入り口に視線を向けた。
...しかし、及川が勢いよく指をさした場所は、オフィスの出入り口なんかではなかった。その指が向けられた先は、狭いオフィスの敷地を存分に使って設置されているソファー。
そしてそのソファーに座っていたのは...
「我らが特課の課長はこの人!!『谷 紫咲』課長や!!」
サキちゃんが俺とナノハにニコッと笑顔を向けた。
「サキちゃんが課長ゥーーー!?」
俺は予想外すぎる課長の正体に、及川アラサー発覚事件以来の仰天をしてしまった。
まさか、俺達と同じ現代からタイムリープしてきたサキちゃんが、いつの間にか課長にまで出世していたとは...!!俺とナノハはまだ下っ端なのにッ!!
「ごめんなさい2人共。別に隠していたわけじゃなかったんです。ただ、この間任命されちゃって...」
サキちゃんがはにかんで笑った。可愛い。
本当に彼女は真性のロリコンでさえなければ、完璧な美少女だったのに...
と、サキちゃんの笑顔に釘付けになってしまった横で、ナノハが大きな声で喚く。
「で、でも、なんでサキが課長なんじゃ!?サキはわしらと一緒で、まだ未来に来て間も無いハズじゃ!」
おお!よく聞いたぞナノハ!
正直ナノハが聞かなかったら俺から聞いていただろう。
そしてナノハの質問には、サキちゃんではなく、及川が返答する。
「んー、強いて言うなら、サキがこの中で1番強いから。...まぁとどのつまり、ようこそ!実力至上主義の警視庁へ!ってとこやな。」
「おいあんま他作品の名前出すな銀髪アラサー。」
いやマジか警視庁。いくら特課が適当な課だからって、そんな単純な戦闘力で地位が決まるのか?
なんだここ、アメリカのストリートと変わんねぇな。
しかし!実力主義であるなら、俺でも特課内で地位を築ける可能性がある訳だ!
まぁ、素早さと特力カンストのサキちゃんに勝てるとは思わないけど...
そんなことを息巻いている俺の横で、ナノハがわなわなと身を震わせていた。
「サ、サキが課長なら!わしも下っ端では無いはずじゃ!わしは守備力がカンストしてるし、氷の壁も作り出せるのじゃぞ!」
ナノハはこの待遇の違いに相当悔しがっているのか、対抗心をこれでもかと燃やしている。しかし、その対抗心は及川には届いていなかったようだ。
「いや守備力高くても、ナノハちゃん他なんもできひんやん。」
「ひぐっ!」
(うわ、かわいそナノハ。)
案の定、ナノハは涙目で口をへの字に曲げていることしかできていなかった。仕方ない、ここは1人の大学生として、このロリっ娘を励ましてやろう。
「まーそう落ち込むなよナノハ。俺達はまだ下っ端かもしれねぇけどさ、これから35巻のナルトくらい急成長して、2人で上り詰めようぜ。な?」
「...うるさい1番弱いやつ。」
「ちょ、テメ、おいクソガキ!今俺励ましてたよな!?なんで敵なの!?なんでチクチク言葉なの!?」
と、俺とナノハの喧嘩が勃発しそうになった所で、及川が口を開いた。
「...ってことで!今回の仕事は下っ端の特人とナノハに行ってもらう!ヨロシク!」
...はぁ、結局未来に来ても雑用か。まぁそっちの方が俺らしいしな。
「はいはい分かったよ。じゃあ謎の大男探しに行くぞ、ナノハ。」
「わしに指図するな!」
「拗ねてんなよ...」
_____________
10分後...
未来の街中にて
俺とナノハは警視庁の建物から、初めて外の世界に降り立った。つまり、生まれて初めて未来の世界というヤツを目の当たりにしたということである。
流石300年先の未来と言うべきか、辺りは見慣れない物に溢れていた。
車にはタイヤが付いておらず、宙に浮かぶように行き交っているし、建物も外壁が液晶の様に色を変えて、街全体を彩っている。
さらに、街の人々は底辺ヤンキー高校くらい多彩な髪色をしているし、中には明らかにヒト科ではない生命体もそこら辺を闊歩しているではないか。
これは及川から聞いたが、宇宙人とのハーフは、銀髪の
ちなみに、これも及川から聞いたのだが、なぜ未来人が現代から来た俺たちのように特力を使えないかと言うと、『宇宙人の血が混ざっているから』らしい。つまり、特力は純粋な地球人の血を持った人間でないと扱えないということだ。
今街中を見渡してみたが、黒髪の人間なんか一人もいない。ってことは全員宇宙人とのハーフということなのだろうか?
もしかして純地球人ってこの未来の世界だと滅多に居ない存在なのでは...?
と、俺が未来の世界を前にとめどない思考の渦に飲み込まれかけていると、横に居たナノハが突然話しかけてきた。
「それで、外に出てきた訳じゃけど、どうやって大男とやらを探すんじゃ?」
「...え、知らん。」
「えぇ!?し、知らんって、わしらは仕事として謎の大男を捜査しなければならないのだぞ!?」
「ナノハって意外と真面目ちゃんだなぁ〜。自称九尾の生まれ代わりがそんな仕事熱心とは、驚いたね。」
「う、うるさい!あと、『九尾の生まれ代わり』の前に『自称』をつけるな!」
ナノハはこんな非日常的な光景を前にしても、女子中学生らしく元気ハツラツであった。なんだか、コイツと一緒に居ると未来への衝撃も薄まっていく気がする。
「まぁとりあえずさ、未来の街中を散策しようぜ。俺達まだ知らないことだらけだろ。」
「た、たしかに、それもそうじゃな。大男を探すがてら、未来の町というものも見てみるか...!」
それでも結局は、
そして俺には、未来に来てからどうしても行きたい場所が一つだけあった。都合のいいことに、そこに行けば色々な情報を掴むことができるという確信もある。
そんな揺るがぬ目的地を心の中で設定し、俺はしばらく歩みを進めることにした。
...ナノハと共に歩くこと数分。
突然、その目的地は俺の視界に入り込んだ。
「お!目的地を見つけたぞ、ナノハ!!」
「...ちょっと待て。」
「なんだよ、早くついてこいよ。」
ようやく見つけたその目的地を前に、ナノハが立ち止まった。
「お、お主、まさかとは思うが、目の前のあの店に行くつもりじゃないだろうな...?」
「?目の前のあの店に行くつもりだけど?」
すると突然、ナノハは俺の腕を掴み、思いっきり引っ張ってきた。しかし、流石に女子中学生の力じゃあ俺は動かせない。
「おいおいナノハ、何をそんなに嫌がってるんだ?」
「だってだって、ここ、パチンコ屋じゃないかぁ〜!!」
続く!!
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