宇宙を駆ける「運び屋」というロマンある職業設定に、
「棺桶の中から物音がする」という不穏すぎる導入で、引き込まれました。
本作の魅力は、単なるSFアクションではなく、
「運ぶ」という行為が、想いや過去、封印された真実まで運んでしまう
という点にあると感じました。
遺体輸送という禁忌に足を踏み入れた瞬間から、物語は静かに、しかし確実にスケールを広げていきます。
〈エコー〉事件へと繋がる展開は、導入の不安感を裏切らない緊張感がありました。
セレスティナとAI〈リリス〉、輸送船レムリアスという相棒たちの存在も心強く、
サスペンスの中に「仕事としての矜持」が感じられるのもすごくよかったです。
SFが好きな方はもちろん、
「誰かの想いが、思わぬ形で未来を動かす物語」が好きな人に強くおすすめしたい一作です。
テンポの良い語り口と、セレスティナとリリスの軽快な掛け合いがとても心地よく、
気づけば第1話を一気に読み切っていました。
明るくコミカルな空気の中で物語が進む一方、
高額報酬、詳細不明の依頼、棺桶、エリアZ――
少しずつ差し込まれる要素が、確実に「嫌な予感」を積み重ねてきます。
特に印象的だったのは、
笑える会話で油断させておいてから、
「これはただの運搬じゃない」と読者に悟らせる構成の上手さです。
軽さと不穏さのバランスが非常に巧みで、
読みやすいのに、読み終わったあと胸にざらっとした感触が残ります。
SF世界観の説明も自然で、
運び屋という設定が物語の軸としてしっかり機能しているため、
第1話の時点で世界に置いていかれる感覚がありません。
「この荷物は何なのか」
「なぜ、こんなにも急がせるのか」
そうした疑問が自然に湧き、
続きを読まずにはいられなくなる、完成度の高い導入回だと思いました。
これから先、どんな“想い”が運ばれていくのか。
続きを読むのが楽しみです。