第6話石神絵里のひみつ2
学校近くのカフェに向かう。電話では石神先輩は『あそこのカフェ』とだけ言っていた。夢の中に出てきたカフェだろう。でもなぜ、俺があそこのカフェのことを夢で見ていて知っているとわかったのか不思議でならない。でも、俺のことをいろいろすでに知っていそうではあった。
いつもの学校に向かう並木道の途中にそのカフェはある。外に長く出ていると寒い。風が冷たい。そんなことを思いながらカフェを目指す。
「やっほー!!元気してる??なんか、君、つまらなそうな顔してる気けどどうしたん??よかったら、お姉さんがあそこのカフェで話聞こうか??」
ナンパのセリフでよく聞くような言葉を並べながら現れたのは石神先輩だ。非常にテンションが高いようだ。俺的にはテンションが高くなるような要素は一つもない。
「初めまして、石神先輩ですよね?なんでそんなにテンション高いんですか?薬でもやってるんですか??それとも、素でこのテンションなんですか?だとしたら、相当やばいですね…」
石神先輩は急にどこからか現れて気づけば俺の後ろにいた。背後を取られていた。もし、彼女が忍びかなんかで私が暗殺の対象だとしたらもうすでに命がなくなっていたとしても不思議ではない背後の取り方だった。
「直接、君と会うのは久しぶりだね。私は君に会えることを楽しみにしていたんだよ。夢の中でも会ってると思うし。私も君に聞きたいことがいっぱいあるんだよね。あと、私は至って健全な女子高生なので」
直接、会うのは久しぶりとか言っていたが一体、どこで会っていたのだろうか?全く記憶にない。自分がボケているだけかもしれないが…
「いや、全く健全さを感じられなかったですよ。あと、なんで僕がどこにいるかわかったんですか!カフェの前で合流するって言う話だったじゃないですか。もしかして、待ち伏せしてたんですか?」
石上先輩は少し笑ったあとに、少しの間を置いて話し始めた。
「君は人の心を読むことができると思うかい?大体の人はそんなことを信じないで相手を笑うと思うんだけど、しかし、結論を言えば私はそれが出来ちゃうの。なぜなら、私はある日不思議な力を手に入れたからね。未来予知と人の心を読む力。これを使って君のことを少し見させてもらったよ。あははー」
未来予知とか人の心を読むとか言っていたが一体、この人は何を言ってもいるのだろうか。発言だけを見るとただの厨二病にしか聞こえなかった。
しかし、逆不思議の国のアリス症候群について考えてみればこのようなことがあってもおかしくないのではと思ったりもする。
「石神先輩、さっきのところ発言だけ見ると厨二病みたいにしか聞こえませんでしたよ。あと、未来予知とか人の心を読むとか本当にできるんですか?」
「ならば、君が今考えていることをあてて見せよう。あ〜だんだん見えてきた。見える見える」
やはり、発言だけ見ると全然、信頼ならならい。怪しい占い師もどきにしか見えない。ちなみに、今、自分が考えていることは早く家に帰りたいということだ。正直に言ってしまえばだるいのである。なんで、休日に学校の近くに来なければならない。私としては今日は家でダラダラするか外に出るにしても学校の近く以外に行きたかった。見える見えるの人はすべてを読み通せましたといったようなドヤ顔している。
「見える見えるとか言ってるのすごい怪しい人みたいですよ。結局、どんなことが見えたんですか?」
「君が今、考えていることはさっさと帰りたい。めんどくさい。なんで、休日に学校の近くに来なければならないのかという怒りの心が感じられますね。なんなら、表情に少し出ちゃってますね~」
わあ~この人の発言すごいムカつく。あんたのせいで怒っているのだと言ってやりたい。そもそも、なんで今日なんだよという気持ちはあらかじめ読み取れなかったのかなと思う。
イライラしながら歩いているうちに目的のカフェには到着した。僕と一緒に来た人は自分とは対照的に笑顔のままだった。何を考えているのかはやっぱりよく分からなかった。
カフェに入ると早速、気になっていることを全部聞いた。逆不思議の国のアリス症候群について、石神絵里という人物について、未来予知、人の心を読む力について聞いた。
「まあ、とりああえずお話を始める前に何か頼もうよ。ちなみに、私がここのカフェでおススメするのはこのモンブラン。期間限定なのもポイントが高いと思うのよ。ここのモンブランは茨城の笠間の栗を使ってて味わいが~~~」
「あ、僕は普通にこのショートケーキにします」
「うん、ここはショートケーキもいいんだよね。落ち着いた甘さのクリームが~~~」
この人の話は一回が長い。なんか、一人でケーキについて語ってるし。まあ、僕はこの人の話は無視させていただき無難にショートケーキと紅茶を頼んだ。ちなみに、自分はダージリンが好きなのでダージリンを頼んだ。先輩はコーヒーを頼んでいたが自分はコーヒーはあまり好きではない。この人とはやはりなんか合わないらしい。
ケーキと紅茶が到着したのち、二つを一口だけ味わい俺は本題に入った。休日の午後ということで少しカフェは賑やかになっているがあまり気にせず話を進めた。
「逆不思議の国のアリス症候群って一体何なんですか?」
「聞きたい?じゃあ、しょうがないから教えてあげる」
モンブランを頬張りながら俺の話を聞いているようで時々もぐもぐしている。あと、ニコニコしながら『おいしい~』と言っていてなんか幸せそうだった。
「逆不思議の国のアリス症候群については君もいろいろ聞いてると思うけど、これは将来への不安感や日常のストレスによって引き起こされるの。将来への現実逃避、モラトリアム症候群も関係していたりするの。まだ、分からないことも多いけどこの辺りが今わかっていること」
「先輩はなんで逆不思議の国のアリス症候群について詳しいんですか。これは明確に病気として記されているわけでもないし、これを発症している人の数も詳しくは分からないという不思議な病気なのに」
逆不思議の国のアリス症候群は、特に治療法が確立しているわけでもない。症状もさまざまに最近はなってきているらしい。でも、比較的若い人がかかることが多いとネットに書いてあった。
「私もある日、不思議な力を手に入れて触れた人のその後の未来や心の中を読めるようになったの。自分でも、この力が少し怖かったからいろいろ調べてみたの。それで、調べているうちに一冊の本を見つけたの。そして、その本の中に逆不思議の国のアリス症候群について書いてあって自分の置かれている状況が分かったんだよね。さらに本の中にははこう書いてあった。この病気の末期には人としての存在が認識されなくなり、この世から消えるって書いてあった。で、この本には続きがあるらしかったんだけど続きの本はいろいろな書店とか古本屋さんとか探してみたけどなかったんだよね。何か解決するヒントがあるかもしれなかったけど」
今、聞いた話だと逆不思議の国のアリス症候群をそのまま放っておいたらやばいことになることが分かった。そして、周囲から見えなく力を手に入れたとか言っていた椿さんは結構、やばいのではなかろうか。
「ちなみに、私は君と学校の階段でぶつかったことがあるのだけどある日を境に君の未来を見ることができなくなったの。つまり、君は私が予測できない何かが起こったのかあるいは死んだってことになるの。だから、今日はそれを伝えようとい思って君をここに呼んだの。ちなみに、私は人の夢を見たり中に入ったり出来るから、君のこともよく知らなかったしこの力を使ったって感じ」
今、死ぬかもしれないとか言われたんだけど。え?まじで死ぬかもしれないの。あと、階段でぶつかったのって眼鏡かけてた大人しい感じの人だったはずだが思ってよりもテンション高い系の人だったらしい。あの日は偶々眼鏡をかけていただけだろうか?今日は眼鏡使ってないし。
「マジで死ぬかもしれないんですか?」
「本によればマジかもしれもしれないです。ただ、私も実際に人が死んだところとかは見たことないので分からなあいです。まあ、頑張って未来に抗ってください。未来は必ず私が見たとおりになるわけじゃないし。未来は小さな変化でも大きく変わったりもするから」
とりあえず、死ぬ可能性があることは分かった。あと、消える可能性があることも分かった。これからの行いで変わるらしい。死にたくないし消えたくもないのでとりあえず未来に抗うために定石に対して逆張りをしていきたいと思う。まあ、未来にそれが含まれていて逆張り人間として死ぬ可能性もあると考えたら根本の原因を早く探したほうがいい気もするけどね。
「少し質問いいですか?石神先輩についてちょっと聞きたいことがあるんですけど…」
「何~??恋愛相談ですか~百戦錬磨の私が聞いてあげましょうか」
「違います。私が聞きたいのは先輩が自分の未来が見えるのかということです」
少し気になっていた。自分の未来も見えるのか。もし、見えるのだとしたら未来を自分で変えることは出来るのか気になったから。
「自分の未来は自分では見えない。人の未来ならいくらでも見えるんだけどね」
「え!じゃあ、先輩は逆不思議の国のアリス症候群にかかっているからもしかしたら消えるかもしれないってことですか??」
「え?うん。未来、自分のは見えないから可能性はある」
消えたり、死んだありする可能性があるのが自分だけではないと分かって嬉しくなった。でも、石神先輩がさっき言っていた話が本当だとしたら椿さんが消えるかもしれない。それは、避けたい。
「先輩、この後、空いてますか?会ってほしい人がいるんですけど。未来を見てもらいたい人がいるんです。この後、うちのほうまで来てもらったりできないですか?」
「君の家、遠いからめんどくさいんだけど。あと、見てほしい人って宮前椿さんって人でしょ。君がどうしてもというなら行ってもいいけど…」
椿さんに確認を取ったところ今日は家にいるらしい。日葵もいるらしい。二人に確認を取ったところ一回来てほしいとのことだった。
「どうしても、来てほしいです。お願いします」
「まあ、しょうがないか。宮前椿さんとかいう人に会ってあげる」
こうして、石神先輩と椿さんの家に行くこととなった。
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