第4話石神絵里のひみつ1

 今日も電車に揺られて学校の最寄り駅まで向かう。40分ぐらい時間がかかる。今日も、眠りについた。いつも通り。

 今朝の夢の続きを見た。うちの制服を着た誰かとまたお話をする。この人がいったい何者なのかさっきの夢の中ではそこまでの思考は回らなかったが今なら夢を操れる気がする。


「あなたの名前を教えて下さい」


 少し微笑みを浮かべたのち案外すんなりと名前を教えてくれた。石神絵里いしがみえりという名前らしい。名前が分かったのはいいのだがそもそも何でこの人と話しているのかが気になる。ただ、この先は夢をうまく進めることはできなかった。いつまでも夢にとどまることはどうやらできないみたいだった。その人は、最後に『またあとでね』とひとこと残した。それと同時に夢から覚めた。


 学校の最寄り駅の二つ手前とかいう何とも微妙なところで起きてしまった。もうあと2,3分は寝られたと思う。だからと言ってここでまた二度寝をしようものならこの電車の終点にでも連れていかれそうなのでやめておくことにした。まあ、何回か終点まで行ったことあるんだけどね。ちなみにここが埼玉で終点が神奈川なので終点まで行ったら戻ってこれないと思う。 


 学校の最寄り駅についてまた、バスに乗っていたら学校に着いた。ただ、学校までのバスは混んでいて結構、疲れた。うちの高校の制服を着たやつがいっぱいいた。

学校について部活の活動場所に行くと先輩が先にいた。藤塚彩音ふじつかあやね先輩だ。でも、寝てた。普通にソファーで寝てた。


「先輩、おはようございます。あと、そんなところで寝てると風邪ひきますよ」


「あっ!!おはよう。いや~ねむくてさ。冬休みに入って部活なんかしなきゃいけないのって感じだし。やる気起きないから。眠くなっちゃうのよね~」


 そして、部活を始める九時に近づくにつれみんな集まってきた。野島先輩、砂原先輩、あと同じ一年生の伊原野々花いはらののか。これで一見、全員がそろったように見える。部員は五人しかいないのでそろったと言えばそろったのだが30分になっても顧問だけは来なかった。なんで来ないのと、部長である伊原先輩がキレていた。まあ、昨日、『普通に明日はちゃんと九時から行くから~』とか言ってたのに全然来る気配がないからキレられて当然であるとは思う。ちなみに、我々がなんの部活をやっているのかというとなんと、ここ演劇部なんですよ。まあ、私は演技しないんですけどね。裏方やってるだけなんで。ということでやる気も起きないので顧問が来るまでとりあえずお菓子パーティーをすることになった。用意のいいことにお菓子をたくさん溜めているためできる技である。結局、顧問が来たのは10時過ぎだった。


「え?お前らなんもやってないじゃん」


 ちょっとキレてるようにも見えた。すかさず藤塚先輩が顧問にチョコパイを差し出した。ちょっと不満そうな顔をしていたが受け取って食べていた。ちょろいな。

 その後は、顧問も含めてお菓子パーティーをした後、ちゃんと練習した。


 時間は12時ぐらいになり部活もそろそろ切り上げる時間になった。みんなで駅まで向かってその後はそれぞれの電車が違うので別れて帰った。ただ、俺と藤塚先輩は乗る電車が同じなので途中まで一緒に帰っている。


「先輩、今から話す話は流してもらっても構わないんですけど、石神絵里っていう人うちの学校に居ますか?」


「え?急にどうしたの。石神絵里ちゃんならうちのクラスに居て私の友達だけど…」


「連絡先を教えてもらうことはできますか。結構、大事な用事があって…」


 先輩から連絡先を入手することができたので、あとで電話を石神絵里とかいう人物にいろいろ聞いてみることにした。先輩から聞くことができた情報では石神先輩は現在、高校二年生で部活は化学部に属しているらしい。藤塚先輩とは仲が良いらしく二人いろんなところに行ってたりするらしい。初めて聞いた。


 いろいろ聞いてるうちに20分ほどたち先輩の最寄り駅になったので先輩とは別れた。その後の20分はぼっちになった。まあ、20分なんてぼーっとしてたら一瞬で立ってしまうようで気づいたら最寄り駅に着いた。


「あれ、冬真君じゃん冬真君も今日、学校だったの?あっ、うちの車乗ってく?」


椿さんが駅前にいた。この時間バスが少ないので日葵を迎えに来たらしい。まあ、この駅で一時間待ちは確かにきつい。椿さんに甘えて車に乗せてもらうことにした。10分くらいして日葵がやってきた。


「なんで、冬真がいるのよ」


「いや~たまたま、会ったから乗せてってあげようと思って。バスは当分来ないし」


 日葵は口を少し膨らませたのち、車に乗り込んできた。椿さんが運転できるとは思っていなかったが、この辺だったら大学生になったら免許をみんな取っている気がする。昨日はお酒を飲んでたからバスに乗ってたみたいだった。ちなみに、今日の服装はミニスカサンタ姿ではなかった。ちょっとだけ残念な気持ちになった。でも、今日の上品で大人な服もとても似合っている。運転している車の車種の影響もあると思うがとてもかっこよく見える。ちなみにこの車は新車で600万ぐらいすると思うのだがなぜ女子大生がこの車に乗ってるのだろうか。


「椿さんは何でこの車乗ってるんですか?」


「え~?なんとなくお父さんの車乗ってるって感じだから理由はあんまりないかも。強いていうならお母さんの軽よりもかっこいいから?まあそんな感じ」


笑いながら、田んぼ道に入ってアクセルを踏みながら加速していく。なんか、すごい運転が手慣れている気がする。バスだと言えまで40分ぐらいかかるところ25分ぐらいでついた。椿さんが飛ばしたからだろうか?それとも、ただ単にバスが遅いだけだろうか?僕は前者だと思う。だって、田んぼ道で80キロぐらい出してたもん。


 いろいろあって、宮前家でお昼を食べることになった。椿さんがなんか作ってくれるらしい。ピラフを椿さんが作ってくれた。日葵より料理が上手だった。中学の時、日葵は不器用だったので野菜を切るのが非常に下手だった。これはちゃんと家庭科の時に目撃した。まあ、日葵に言ったら俺の首が飛ぶかもしれないという危機が再び訪れるかもしれないのでやめておくことにする。


 お昼ご飯を食べながら日葵に今日の朝、電車で見た夢の話をした。すごい興味を示しているようだった。あとで、石神絵里さんに電話してみないとなと思う。何か、新しいことを知るチャンスが隠されているかもしれないから。


 逆不思議の国のアリス症候群についてはまだまだ分からないことが多い。もしかしたら、今、自分たちが考えていることがすべて覆されるかもしれない。なぜなら、現時点での情報が少ないから。これからいろいろな方向に転がっていくかもしれないから。


 家に帰って、石神さんに電話をかけてみることにした。


「もしもし、柏寺冬真君だね。電話待ってたよ。彩音から聞いたよ。君のこと。でも、私はそれよりも前から君のことを知っていたけどね。君が今、一番気になっていることは逆不思議の国のアリス症候群についてでしょ?いろいろ、じっくり教えてあげる。明日の午後、空いてるよね?あそこのカフェと言えばわかるよね」


「え?なんで明日の午後、俺が空いてるってわかるんですか?」


「それは会ってからのお楽しみってやつ。まあ、楽しみにしてて」


まるで俺の頭を読み取られているような気がした。もしくは未来予知でもされているのだろうか?石神絵里という人物は一体…

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