第22話王への謁見

「ファウストさん、何か言ってたけど」

「きっと激励の言葉ですよ」

私の言葉にニチレンさんは特に気にすることなく歩いていく。

少し考え、また何か起こりそうだなと思いつつ付いていく。


「止まれ!」

ガチャガチャと甲冑を付けている人達が槍を向けてきて警告する。

「皆さん、なぜ!?」

ニチレンが動揺する。

「ニチレン様、こちらが呼び出したとはいえ彼女らは魔族。危険の可能性があるのならば警戒は必要です」

「ですが…」

納得がいかないニチレン。

まぁ確かに素性も姿もそれぞれでよくわからない種族なんて警戒するよね。


「君、大丈夫か?怖かったね。さぁこっちへ」

「あ、あの、私違います…」

あれこれと考えているとアーサーが連れていかれようとしていた。

「待って!その子は私の連れ!連れて行かないで」

「嘘をつけ!魔王がただの人間の少女を連れてくるわけがないだろ!」

た、確かに!

論破されてしまった。

いやダメだ、言い返す言葉は、えーっと、えーっと…。

「魔王様、こいつらぶっ飛ばしてもいいですか?」

ハルが風の剣を形成し始めた。

あれ!?ハルさんそんな戦闘民族だったっけ!?

「ちょ…やめてハルさん、トラブル起こさないで」

「しかし」

ごたごたと話していると。

「やめてください!」

ニチレンが叫びだした。


「騎士団の皆さん、槍を下げて。それとその方は魔王さんの連れで間違いありません」

「ニチレン様?」

騎士団と呼ばれる人たちがうろたえている。

「私の友人に失礼を働かないでください。それにこの方々は王が直々に呼んだ方々です」

「ニチレンさん…」

やっぱり変わっているとはいえさすが勇者パーティにいた人だ。

ちゃんと私たちのことを信じてくれている。

ポンコツとか思っててごめん。

「…承知しました。ですがこちらが指定した場所以外へは行かないようお願いします」

「わかりました」

そうして見張られながらも城へと連行された。


「夕方には面会の予定が立つ。ここで待つように」

待合室という名の牢屋に見える。

「いい加減に…」

「ニチレンさん、私たちは大丈夫だから」

「でも…」

ニチレンは納得できない様子だ。

「すみません、我々もここが譲歩の限界です。地下でないだけご容赦を」

「…わかりました、では私も入ります!」

そう言って4人仲良く牢屋入りとなった。


「結構な歓迎だね。ちょっとこの先心配かも」

いきなり打ち首とか言われたりしないかな…。

「私は人間が信じられなくなってきています」

ハルが眉間にしわを寄せている。

この頃短気だったのそれが原因か…。

ちゃんとフォローしなくちゃ。

「大丈夫だよハルさん、お互いを知らないからみんな警戒しているだけ」

「そうです大丈夫です!王様はとってもいい人ですから」

ニチレンも明るく援護する。

「なぜならですね、」

「歴代最高の王…」

アーサーがぽつりとつぶやいた。

「はい!よく知っていますね。食料自給率増大、犯罪率低下の法改定、図書館や各地域の役所、娯楽施設設置など、地味ですが改革がすごくて全て大成功を収めています」

すごい有能なのか。魔王としてちょっと詳しく話を聞きたいかも。

「魔境の調査や魔王の討伐なども王からの依頼ですよ」

「はい、図書館で過去のニュースを一通り調べました。民衆からの支持も高いとか」

アーサーがさらっと言う。ほんとうに連れてきてよかった。

というかこの王様、物語とかだと裏で悪いことやってる悪役みたいな感じだね。

ニコニコして近づいてきたりしたら気を付けよう。


そうこうしているうちに夕方になり面会が可能となった。

牢屋を出て、立派な城の中を騎士団のの人に見張られながら進む。


「この先が謁見の間だ、失礼のないように」

「わかりました」

そしてゆっくりと歩いていき、玉座を見て絶句する。


「よく来たな!魔王殿!!」


そこには上裸で筋肉もりもりの背筋を見せつけるようなポーズを取っている変た…王様がいた。

思わず私とハルさんはアーサーちゃんの目をふさぐ。

「えっ?あの…魔王様?ハル様?」

あれは見てはいけない。

そして二っと笑う王様に私は苦笑いするしかなかった。

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