第23話会合の約束と不穏な光
「よく来たな!魔王殿!!」
「…」
上裸の王、王の隣にいる参謀っぽい人、左右に並んでいる騎士団。
唖然としている私たち。
とりあえずアーサーちゃんの目をふさいだけどどうしよう。
このパターンはさすがに予想できなかった。
「余はグロム王国第7国王、ベルクである」
ものすごくふんぞりがえっている。
「王様、こちらが魔王のエルクルさん、参謀のアーサーさん、ハーピィのハルさんです」
ニチレンが一切の動揺なく私たちを紹介する。
え、これ日常茶飯事なの?
「私たちを追い詰めたすごい友人ですよ」
「勇者をか!それはなんとも!」
「いえ、そんな…」
ものすごく誇張されているのでやめてほしい。
「どうした魔王殿!余の肉体美に何か問題でも!?」
ポーズを何度も変えながらこちらに話してくる。
「すみません、王様。きたない…いえ、教育によくない…いや、えーっと…」
服を着させるいい言葉が思い浮かばない。
「切り捨てていいですか?」
「やめてハルさん」
すぐに戦いに発展させようとするハルさんを抑える。
「貴様!王を侮辱する気か!」
騎士団の一人が叫ぶ。
「良い良い!しかし、幼子に見せるには少し刺激が強すぎるようだな。着るものもないのですまぬが外で待ってもらおう」
有無を言わせずアーサーが騎士団につれられる。
「あの!私!待ってくださいー!」
外交の主力が…。
「改めて、よくぞ来た!魔王殿!」
ダメだ、ちゃんと切り替えよう!
「ふぅ…。こちらこそ、お呼びいただいて光栄です」
「まずはそう、勇者の件はすまなかったな」
「いえ、こちらも部下を制御できず…」
「襲われた村も元に戻っておるのを確認している。相互の理解が足りなかったようだ」
あぁ、よかった、変た…変人だけどちゃんとしてる。
「それで我が息子はどうであったか?強かったであろう?」
…ん?
「いや、あの、息子さんというのはどういう?」
「勇者パーティの一人に戦士がいただろう?余の息子だ。名はワルク」
「ワルク…戦士…って、ええぇぇー!?ワルクさん王子だったんですか!?」
っていうか王子が攻め込んできてたの!?
「戦い方も余が教えた!まだ余の方が強いがな!」
この世界のステータスバランスおかしいって。
「あの…すみません、私、ワルク殿にケガをさせてしまって…」
ハルがおずおずと手をあげる。
「なに!?100mの崖から落としても傷一つつかないワルクをか!それは今世の名誉だぞ!」
騎士団の人たちがざわつく。
「…」
もうツッコミが追いつかないんだけど。
でも騎士団の人たちを見る限り、人族の中でもバグ扱いという認識でよかったよ。
王様の隣にいる参謀っぽい人が王様に突然耳打ちする。
「あぁすまぬ、次の予定があってな。もう時間がないようなので本題を。そなたらを呼んだのは同盟を結ぶためだ!」
「同盟…ですか?」
「うむ、人間と魔族、争わない道があるのであればそれに賭けたい」
確かにそれは賛成だね。
「そうですね、私たちも人族のことはよくわかっていない。このままだと魔族側も距離を間違え、傷つけて戦争になってもおかしくない」
「よし決まりだ!明日、時間を作る!そなたらと対等に向き合うための時間だ!」
立ち上がり大きく手を広げる。
「お互いわからぬことも多いが言葉があれば理解はしあえる!友好のため、共に歩んでいこうではないか!」
王様の考えは私の考えに近いのかもしれない。
それを断る理由はなかった。
「はい、よろしくお願いします!」
そして謁見が終わり、退出した。
その後、アーサーと合流して今日泊まる場所に騎士団の人が案内をしてくれた。
部屋の中にて、アーサーに同盟のことや明日の会合について話す。
「なるほど、それは要注意ですね」
深く考え込んでいる。
「どうして?文字通り恰好はすごかったけどいい王様なんじゃないかな」
しかし目をぎらつかせこちらに指をさしてくる。
「甘いです。ここで明日、そのままうなずいていたら私たちに不利な条件を叩きつけられる可能性が高いです」
「どうなんだろう?そこまで考えている風には見えなかったけど…」
考えすぎなんじゃないかと思っていると
「魔王様…」
アーサーはこちらへ座りなおしてまっすぐ見てきた。
「魔王様は人を信頼しすぎですよ!何が見えたのかはわかりませんが、私を外す理由が刺激が強すぎるだけだと思いますか!?」
う…確かにちょっと不自然だったかも…。
「明日は私も絶対同席します!それで騙されないよう目を光らせておきますから!」
そしてズンズンと寝室へ向かっていった。
「アーサー、すごいですね…」
ハルが唖然としている。
「私が悪いよ…。確かに気が抜けてたかも。ちゃんと警戒しよう」
そうして1日が終わり、夜が更けていった。
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システム起動
検索…王の寝室
固定完了
…開始
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王の寝室で、突如強い光が発生する。
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