魔王様は足止めたい

たっつん

勇者、足止め

第1話 プロローグ

終わりです、魔族は終了となります。私もいずれ勇者に討伐されることになるでしょう。

涙を流しながら終わりを確信する私こと魔王は異世界転生をした元人間です。


そう、終わりの始まりは伝達係である鳥の姿をしたハーピィの男版みたいな魔族が謁見の間に転がり込んできたことからだ。

「ま、魔王様!魔王エルクル様!大変です!」

また飛ばずに走ってるよ。

「どうしたの?今はオークの方たちと大事な食料の話し合いをしているところなんだけど」

「申し訳ありません、しかしゴ、ゴブリンの突撃部隊が」

「?」

「ゴブリンの突撃部隊が魔王様の名前を使って人族に攻撃をしました!」

「えぇ!?またあの部隊…。仕方ない、お詫びとリザレクションで復活を…」

「そして勇者と名乗るものに瞬殺されこちらに向かって進軍をすると言っております!」

「え…。は…?」

ゴブリン突撃部隊とは精鋭部隊で並みの人間では勝てない軍隊である。

この世界はレベル制で私がレベル90として彼ら1人1人がレベル50近くある。

いろいろな耐性や攻撃手段を持っており全員相手となると私でも苦戦する。

最高レベルは基本100となっていて大抵どこかで壁にぶつかって止まるようにできている。


「こちらを」

そう言ってモニタ型の魔物を出してくる。

監視用で目玉の魔物と対になっていて今から流すのは録画だろう。


「この村はわがゴブリン突撃部隊が制圧した!魔王エルクル様が降臨されたと王に伝えるのだな!はーっはっはっは!」

死体だらけの上で部隊の隊長が叫んでいる。

死体がどうやって伝えるのだ。勘弁してほしい。


その時突然隊長ゴブリンが吹き飛ぶ。

「ごぶぁ!!」

「何者!?」

「我こそは勇者!魔王エルクルを討伐するために立ち上がった!」

そう言って4人の男女が現れる。

勇者、魔法使い、僧侶、戦士だ。

「死ねぃ!」

勇者が剣を振りかざし一振りで何棟も家が吹き飛ぶほどの衝撃を見せる。

魔法使いが災害ではないかと思うほどの火の竜巻を繰り出す。

戦士が地面の地形が変わるほどの斧の攻撃を見せる。

僧侶はゴブリンが逃げ出さないよう村を囲む形でシールドをはっている。


最後には村があったとは思えないほどの被害になっていた。

ゴブリンは跡形もなく全滅である。

「魔王に伝えろ、確実に息の根を止めに行くとな!」

そこで途切れる。


「し、死体がどうやって伝えんねーん…」

つっこんでは見たもののどう考えてもレベル100超えているような壮絶な光景であった。


「魔王様、私死にたくは…」

「お、落ち着け!ゴブリンたちやお前らは私の部下!レベルは低くなるが復活可能だ!」

どうすればいい?考えなければ。

「そうだ、手紙を出すのだ!私が丁寧に説明し平和的解決を手に入れる!」


10分後、片翼を無くし転移から帰ってきた伝達係が言う。

「即刻…破りすてられ…ました…ガクッ」

「伝達係ー!!」



終わった。

涙を流し終わりを確信する。

戦えば確実に負ける。魔族は終わりだ。



いやまだだ、私が転生した理由はこのためではないのか。

諦めの悪さは前世の私の取り柄だったはず!

そう、どうすればいい?

わからない…が…アイデアは出てこないけどとにかく!


「足止めだ!皆、足止めに全力を尽くすんだ!死んでも復活させる!私についてこい!全力で平和な日々を取り戻してやる!」


そうして全力で足止めを行う戦いが始まったのである。



手紙の内容

拝啓

勇者様、人族の皆様におかれましては益々ご盛栄のこととお慶び申し上げます。

さて、この度魔族の一部の方々が人族にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。

亡くなった方々には可能な限り元に戻して復活をさせ不自由ない暮らしを…


~略~


よって、我々魔族と人族で和平を結びたく思います。

条件のすり合わせとして一度円卓の場を設けさせていただければ助かります。

返事は伝達係のハーピィ男にて承ります。

どうぞご一考の程よろしくお願いいたします。

敬具

魔王エルクル


最初の一文を読み破り捨てる。

勇者「魔王の言いなりにはならん!確実に息の根を止めるぞ!」

仲間「「おぉーー!!」」



魔王「私の渾身の手紙が…」


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