ネモフィラは、種さえ植えれば翌春には一面に咲き誇り、目を楽しませてくれる。
だが、ラベンダーは日本の気候では難しい。夏の暑さや梅雨の湿気が天敵だ。まして、一度萎れてしまったラベンダーを再び咲かせることは、熟練の園芸家でも至難の業である。
主人公の少年・樹良は、その"一度萎れたラベンダー"──元アイドル・霧島未来と出会う。
芸能界を離れ、心に傷を抱えた彼女。花を愛する少年。二人の静かな交流は、やがてネモフィラのように優しく広がり、ラベンダーのように香る再生の物語へと育っていく。
劇的な事件も派手な恋愛もない。
けれど、花と人の呼吸が重なるように綴られた静かな瑞々しさが、読後もそっと心に残る。まるで、風に運ばれてきたラベンダーの香りのように。