第17話

「いや、俺、生きてるから」

 ゾルドのツッコミで爆笑が起きたあとも、俺たちはそのまま飲み続けていた。

 戦闘の緊張がほどけ、久々に空気がやわらかい。


 ジョッキを置いて、ふと気になっていたことを口にした。

 「そういえばさ、敵に“銀ランク傭兵”とかいたけど、あれってどういう仕組みなんだ?」


 リリアが耳をぴくっと動かして、俺を見る。

 「お、知らんかったんか、たける。ランクは傭兵の強さの目安やで」

 「ほう」


 イーリが補足するように微笑む。

 「無印、銅、銀、金、オリハルコン、そして最上位が英雄――です」

「なるほどな。銀でもあれだけ強いんだから、金とか英雄ってどんな化け物だよ」

 「そりゃもう、ひとりで国を落とせるレベルやろなぁ」

 リリアが肩をすくめる。


 ゾルドが苦笑しながらジョッキを傾けた。

 「まあ、今の俺らは“無印”だ。実力的には銅の下くらいってところだな」

 「お前が言うと説得力あるな。あの銀ランクに挑んでたし」

 「いや、挑んでたんじゃなくて、挑まれたんだ」

 ゾルドがため息をつくと、リリアがくすっと笑う。


 「でも、こうして見ると……うちら、強うなったなぁ」

 リリアが腕を伸ばして背中を鳴らす。

 「前は雑魚相手に必死やったのに、今じゃ中規模戦闘で名前呼ばれるくらいやもんな」

 「確かに」イーリもうなずく。「今の私たち、レベル30台でしたっけ?」


 その言葉に、全員の視線が俺に向く。

 リリアがニヤッと笑う。

 「せやけど、たける。あんた……レイアンに全部ポイント突っ込んでレベル70にしたやろ?」

 「うっ」

 俺は思わず目をそらした。

 「だ、だって、あの時はゾルドがやられて、もうあれしかなかったんだよ!」

 「せやけどずるいわ〜。うちらコツコツやっとるのに、レイアンだけレベル70て」

 「たしかに」イーリも控えめに頷く。

 「……なんか、納得いきません」


 レイアンは困ったように笑って、両手を上げた。

 「いや、僕もそんなつもりじゃ……。気づいたら“強化されてました”って感じで」

 「気づいたらってお前……」

 ゾルドが呆れたように息を吐く。


 リリアが笑いながらジョッキを掲げる。

 「まあええわ! せっかく勝ったんやし、今日ぐらいは文句なしで祝お!」

 「賛成!」

 イーリも笑顔でグラスを合わせた。

 ゾルドがぼそっとつぶやく。

 「……お前ら、ほんと自由だな」


 俺はみんなの笑い声を聞きながら、

 ふと、自分の“システム”を思い返していた。


 ――同時に出せるユニットは5人。登録できるのは8人まで。

 ――あと一人で最後。その次からは、誰かを外さなきゃならない。


 仲間が増えていくほど、選ばなければならない瞬間が来る。

 そのことを思うと、ほんの少しだけ胸が重くなった。


 でも今は――この笑顔を壊したくなかった。

 「よし、今日は朝まで飲むぞ!」

 「おーっ!」


 グラスの音が響き、酒場にまた笑い声が満ちていった。

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