第14話
レイアンを仲間にしたその日のうちに、戦闘が始まると聞かされた。
もう少し時間があれば周回して性能を確認できたのに……まあ、仕方ない。
「とりあえず、前線にいる強そうなのにぶつけてみるか」
俺は軽く息を吐いた。
出撃準備の合間、レイアンには能力の説明を済ませてある。
「戦場では、俺が指定した場所に“配置”される。そこからは自分の判断で戦うことになる。
バーサーカーってのは暴走型の近接職だ。攻撃力ならトップクラスだ」
レイアンは少し不安げに笑いながらも頷いた。
「……なるほど。言われた通りにやってみます」
マップが浮かび上がる。
俺はみんなの配置を確認しながら指を滑らせた。
「よし、リリアは高台、イーリは後方支援。ゾルドは中央防衛。……そして――」
マップの前線に、異様に大きな反応が一つ。
「お前の出番だ。強そうなやつにぶつけるぞ」
俺はバーサーカーのコアをその敵の正面マスにスライドした。
「配置――!」
光がはじけ、レイアンの姿が現れる。
次の瞬間、彼の体がみるみる膨れ上がっていった。
筋肉が爆発したように盛り上がり、目が紅く光る。
――バーサーカー、発動。
「……おおおおおおおおっ!!」
雄叫びとともに、巨大な敵兵を殴り飛ばす。
一撃。
それだけで、相手は地面に叩きつけられ、沈黙した。
「強っ……!」
ゾルドが驚き、リリアが「なんやアレ、怖っ!」と叫んだ。
けど、その後が問題だった。
バーサーカーは次の敵を探してあたりを見回した。
だが、敵は遠く。範囲の外にいる。
こいつは直径五メートルの円から出られない。
TD(タワーディフェンス)仕様だからだ。
最初に配置した位置が悪かったかもしれない。
敵がこっちに流れてくるまでの間、バーサーカーは――
ただ、そこに立ち尽くしていた。
剣を構えたまま、うなり声を上げて。
……怖い。なんかホラー映画みたいになってる。
たまに敵が通りかかると即座に殴り飛ばすが、基本的には暇そうだった。
「これはだめだな……」
俺は頭を掻いた。
せっかくの火力がもったいない。
バーサーカーにはタウント(敵を呼び寄せる)能力がないから、敵が近づかないと何もできない。
ゾルドが防衛線を維持し、リリアとイーリがフォロー。
戦い自体は勝ったけど、バーサーカーの存在感は最初の一撃だけだった。
宿に戻ると、全員がぐったりと椅子に沈み込んだ。
「ふあぁ~……今日もよう働いたわ」
リリアが尻尾をぱたぱた振りながら伸びをする。
「でも、あのバーサーカーの人、最初の一撃はすごかったですね」
イーリが紅茶をすすりながら言う。
「最初の一撃“だけ”な」
ゾルドが肩をすくめ、鎧の音を響かせた。
「うち、見てて思たけど……アンタ(バーサーカー)、たぶん暇すぎてストレスたまるタイプやで」
「確かに。あの目、戦いたくてうずうずしてたな」
俺は苦笑する。
イーリが心配そうにこちらを見る。
「たけるさん、あの人、使い方難しいですよね……」
「まぁな。強いけど、場所を間違えたら意味がない」
ゾルドが腕を組んでうなずく。
「俺の防衛線と合わせられれば、かなり戦えると思うが……現状じゃ、力を持て余してるな」
「うち、もうちょい前に出てもええで?」
リリアが軽く拳を握る。
「いや、それは危ない。次の戦いは配置を見直す」
俺は地図を思い出すように目を閉じた。
しばらく沈黙が流れたあと、レイアンが静かに口を開いた。
「……あの、そういえば、ちゃんと自己紹介してませんでしたね」
彼は丁寧に姿勢を正し、にこりと微笑む。
「レイアンといいます。普段は……ええと、読書が好きで。あまり戦いは得意じゃないですけど……頑張ります」
「読書好きのバーサーカーって、ギャップすごいな」
俺が笑うと、リリアがすかさず突っ込む。
「そらギャップどころちゃうで。さっきの筋肉見たあとやと、詐欺レベルや」
イーリが穏やかに笑いながら自己紹介する。
「私はイーリ。魔法使いです。攻撃より支援のほうが得意です」
「イーリちゃんの魔法、ほんま助かっとるで」
リリアが親しげに肩を叩く。
ゾルドは腕を組んだまま、低い声で言った。
「俺はゾルド。騎士だ。盾は持てないが……その分、体を張る」
「ゾルドはほんま頼りになるわ」
リリアがうなずき、続ける。
「うちはリリア。弓使いや。たけるに拾われてから、ずっと世話になっとる」
俺は少し照れながら頭をかいた。
「俺は……傭兵だ。職業は、ちょっと特殊だけどな」
リリアがニヤリと笑う。
「そしてうちらのリーダー様、っちゅうわけやな」
「いや、やめてくれ。その呼び方マジで恥ずかしいから」
「ええやん、“リーダー”。悪くない響きやで?」
イーリがくすっと笑い、ゾルドがうなずいた。
「確かに、悪くない」
――笑い声が響いた。
この瞬間、ただの寄せ集めだった俺たちは、ようやく“チーム”になった気がした。
それから数日。
戦闘もあったし、周回もした。
だけど結果はいつも同じだった。
バーサーカーを普通に配置しても、敵が来なけりゃただの置物。
スピードも力もあるのに、範囲制限が足枷になっていた。
「アンタの能力でも、万能やないってことやな」
リリアが尻尾を揺らしながら言った。
「まぁ……そう簡単にはいかないか」
俺は苦笑しながら、マップを閉じた。
イーリが穏やかに微笑む。
「でも、あの人……“動かない時”は不思議と落ち着いて見えました。
戦う時は暴風みたいなのに」
「二面性ってやつか。面白い奴だよな」
ゾルドが笑う。
リリアが小さくため息をついた。
「せやけど、うちらのチーム、どんどん変わっていくな。
最初はアンタ(たける)もガキ扱いやったのに、今じゃリーダー様や」
「いやいや、それは勘弁してくれ……」
俺は苦笑した。
――バーサーカーの“本来の使い方”はまだ試していない。
でも、いつか必ず、その力を正しく使う日が来る。
あとは――その時が来るのを待つだけだ。
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