第13話

その日も戦場に駆り出されていた俺たち。

 リリアの矢、イーリの魔法、ゾルドの障壁――布陣は完璧で、敵の進軍を押し返していた。


 「よし、いいぞ……!」

 思わず拳を握る。


 だがそのとき、視界の端に妙に騒がしい一角があった。

 敵も味方も入り乱れて、誰も近づけない。


 「なんだ、あれ……?」

 目を凝らすと、一人の男が――まさに暴風のように暴れていた。



 筋肉が膨れ上がり、目は血走り、剣を振り回すその姿は……人間じゃなく獣だ。

 味方だろうが敵だろうが関係なく、目に入ったものを叩き潰していく。


 「……ああ、バーサーカーか」

 頭に浮かんだ情報に、俺は小さく納得した。


 タワーディフェンス的には、バーサーカーは優秀な削り役だ。

 攻撃力が高く、スピードもある。硬い敵にぶつければ、HPをじわじわ削ってくれる。

 ただし配置マスから動かないゲームの中と違って――リアルだと、こうなるのか。


 「……って、あれ? なんか、こっちに近づいてきてない?」


 次の瞬間、バーサーカーの男と目が合った。

 「……!」

 全身から悪寒が走った。


 「やべっ……逃げろぉぉぉぉぉぉ!」


 俺は全力で走った。だが後ろから、ズシン、ズシンと地面を揺らす足音が追いかけてくる。

 「こっち来んなぁぁぁぁ!」


 必死に逃げ回る俺の頭上で、戦場終了の合図が響いた。

 途端に、バーサーカーの体から力が抜けていく。

 あの獣みたいな目が、徐々に人間のものに戻っていった。


 ……助かった。

 マジで死ぬかと思った。



 次の日。

 宿の前に立っていたのは、細身の文学青年のような男だった。

 すっきり整った髪、物静かな眼差し、本を抱えた姿は、戦場とは無縁そうに見える。


 彼は丁寧に一礼すると、口を開いた。

 「すみません。傭兵を募集していませんか? 昨日までいたところ、首になってしまって……」


 俺は少し驚いた。どう見ても本好きの青年で、戦士には見えない。

 「えっと……君、戦えるのか?」


 彼は困ったように笑って首を傾げる。

 「……正直、よく覚えていないんです。戦闘中は意識が飛んでしまって……気づいたら周りがぐちゃぐちゃになっていて」


 まさか。

 俺の脳裏に、昨日の戦場で暴れ回っていたバーサーカーの姿が浮かんだ。

 慌ててシステムを起動し、目の前の青年を確認する。


 【契約可能:対象 バーサーカー:レイアン】


 「……昨日のお前かーーーい!」

 思わず頭を抱えて叫んだ。


 彼はぽかんとした顔で首を傾げる。

 「え? 昨日……?」


 どうやら本当に記憶がないらしい。


 でも、面白そうだ。

 バーサーカーなんて、ゲームでも上級者向けのユニットだ。使いこなせれば絶対強い。


 「……よし、契約だ!」


 その瞬間、光が彼を包み込む。

 新たな仲間――文学青年レイアンが、俺のチームに加わった。


 ……ほんとに大丈夫か、こいつ?


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