第4話
翌日。
俺たちは再び戦場に呼び出された。今回は街の傭兵団の末席としてだ。
「おい、昨日の獣人の嬢ちゃん、今日も一緒か?」
「ありゃすげぇぞ。英雄になるかもな!」
周囲はリリアを称える声でいっぱいだった。
……俺はといえば、岩陰に隠れて震えてるやつ、という扱いのまま。
「アンタ、ほんま損な役回りやな」
リリアがぼそっと呟く。
「別にいいさ。俺が目立たなくても、勝てればそれでいい」
俺は肩をすくめた。
戦闘は何とか勝利で終わり、俺たちは街へ戻った。
宿に戻るにはまだ時間が早い。
「ちょっと歩こうか」
「ええけど……アンタ、ほんま散歩好きやな」
リリアは呆れながらも、尻尾を揺らしてついてくる。
石畳の大通りには露店が並び、焼きたてのパンの香りや肉を焼く煙が漂っていた。
行き交う人々の視線は、自然とリリアへ向けられる。
「昨日の獣人の子だ」
「矢の雨を降らせた英雄だぞ」
小声の噂が聞こえてくるたびに、リリアの耳がぴくぴく動く。
「……なんか落ち着かんわ」
「誇っていいと思うけどな」
「そやけど、ウチだけが褒められるんは……」
リリアは小さく唇を尖らせる。
そんな彼女を横目に歩いていると、町角にしゃがみ込む黒い影が目に入った。
擦り切れた黒ローブに、欠けた杖。
少女が膝を抱え、うずくまっていた。
「……また、駄目だった」
かすかな声が聞こえた。
通りすがりの傭兵たちが嘲るように言葉を投げていく。
「魔法が撃てねぇ魔法使いなんて、ただの荷物だ!」
「もう二度と戦場に来んな!」
少女は何も言い返さず、ただ唇を噛んでいた。
リリアが足を止めて眉をひそめる。
「……あかんな、ありゃ。まるで昨日のウチみたいや」
俺も歩みを止め、じっと少女を見た。
心臓が高鳴る。ウィンドウが勝手に開き、光の文字が浮かぶ。
【契約可能:対象 魔法使い:イーリ】
俺は息を呑んだ。
詳細を確認して……目を見開く。
――攻撃魔法:ゼロ。
――特殊:スロウ、アーマーダウン、アタックダウン。
「……これ、デバフ……」
「は?」リリアが首を傾げる。
「こいつは攻撃魔法が使えないんじゃない。違うんだ。敵を弱体化させる魔法……専門のデバッファーなんだ」
「デ……バッファ?」
「つまり、相手を鈍らせたり、防御を下げたり、攻撃力を落としたり……直接殴るより、戦い全体を楽にしてくれる役割」
リリアは耳をぴくりと動かして、少女を見た。
「……ほな、無能やないってことか」
「そういうことだ」
少女は信じられないという顔で俺を見つめていた。
「……そんなこと……今まで誰にも言われたこと、なかった」
俺はしゃがみ込み、少女と視線を合わせる。
「俺は知ってるんだ。お前がいれば戦いは変わる。だから……一緒に来ないか?」
少女の瞳に、じわりと涙が浮かんだ。
「……それ、本当に……信じていいの?」
「俺は約束する。お前を役立たずなんて絶対言わない」
そのとき、【契約しますか? YES/NO】が表示された。
少女は一瞬だけ迷ったが、強く頷いた。
「……わかった。私を……連れてって」
光が彼女を包み、契約成立。
俺の視界に新しいユニットアイコンが追加された。
【魔法使い:デバフ特化】
「よし……仲間が増えたぞ!」
俺が拳を握ると、リリアが小さくため息をついた。
「アンタ、ほんま拾い癖あるな……」
けれどその声は、どこか楽しそうに聞こえた。
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