第3話 水辺の呼吸

狙撃銃。安くて、使い慣れた銃。スコープとサプレッサーをつけたそれは、見た目以上に静かで、遠くまで真っすぐ飛ぶ。


 レンジファインダーで距離を測る。 400メートル少々。ゼロインは300。少し上を狙えば、届く。


 風は?

 波打ち際を見て、判断する。問題なし。


 ──いた。


 木の陰、味方と談笑しているのか、完全に油断した動きのプレイヤーが一人いた。


 見たところ、サブマシンガンの突撃兵が隊列を乱していた。


 少し離れた位置に長物を背負ってハンドガンを構えた狙撃兵、アサルトライフルに倍率スコープが乗った1人が側を警戒している。観測手を兼ねた護衛だろう。


 引き金を引いた。


 音は草と波に吸われ、敵の頭だけが弾ける。


 すぐには気づかれない。


 残りの二人、観測者と狙撃手。

 ソワソワと辺りを警戒し始めるも、まだ緊張感は薄い。


 狙撃手は、味方がどこかで遊んで死んだだけとでも思っているのか。


 私は観測者に狙いを定める。


 一発。


 観測者が崩れ落ちる。


 さすがに狙撃手は遮蔽物に隠れた。


 だが、逃げる方向は限られている。


 私は、その視線の先、逃走ルートにスコープを移動させる。


 待つのは慣れている。


 私は、見られるのは苦手だが、見ることには慣れているのだ。


 ゆっくり観察しながら、私はデイリーミッションを終えたらすぐに引き返した。


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