余命一年!!どうせな死ぬなら女の子に声かけまくって死んでやる。【余命一年物語】
イタノリ
序章 恋の女神様
序 アラフォー男。金ない、モテない、命ない。
天高く空は晴れ渡り、桜は咲き乱れ春を謳歌する。人も草木も動物も、春の訪れを楽しみ、みんな浮かれポンチな気分に酔っているこの季節。毎年のことだが、この時期になると変な人間が出てくる。
鬱屈した冬からの開放か、あるいは春の陽気が人をおかしくさせるのかは定かではないが、ともかく、春は変になる人間が多い。特に俺。
現にこうして俺は神社に赴き、下世話なお願い事をしようとしている。恋の縁結びにべらぼうなご利益があるという、この神社へ。
不敬千万、呆れて果てなし。普通にバチでも当たろう願い事をするつもりだ。どうせ先のない人生だ。本日神罰で命を奪われようとも、地球の資源が人間一人分まるまる浮くと思えば、地球にだってエコだろう。
それでは願いましょう!恋の神様、俺に女をあてがい、スケベ生活を満喫させてくれ!!
誰もいない早朝に、低俗かつ卑猥な願いがこだまする。
天は途端にどす黒い雲に覆われ、渦を巻き雷鳴が轟く。次の瞬間、「このバカチンが!!」という怒号と共に雷が落ち、脳天に凄まじい衝撃と痛みが走った。まるで、脳天にチョップを喰らったみたいだ。
あまりの痛みに目がクラクラする。一体何が起こったかと顔を上げると、そこには誰かが立っていた。こんな早朝の境内に誰もいなかったはず。一体どこから現れたのか、そいつは手刀の構えをして俺の前に立っていた。
筋骨隆々の巨体、岩のようにゴツゴツした体と顔、ゴツゴツしすぎたその顔は目元が暗くよく見えない。だが、頭髪は艶のある黒に長い髪、服は神楽でも舞うのかと言わんばかりの綺麗な巫女装束だった。これは巫女さんコスプレのプロレスラーみたいな風貌。一体何者なんだ。
「あの、どちら様でしょうか?」
おそらく、岩みたいな顔した性別不明のこの人に頭をチョップされたのだろうが、あまりの異様な出立に、なぜ人の頭をぶったのかより、何者であるかを先に聞いてしまった。
「不敬千万!!」
再度、脳天にチョップが落ち、俺は地面に倒れ伏した。
「あんたあ!!この神聖な神社でしかも縁結びの神様になんてお願い事してるのよ!!不敬よ、不敬!!」
もんのすごい野太い女の声。どうやら、俺の頭をど突いた岩のようなこいつは女であるらしい見た目は女とは程遠いが。それにしてもすごい力だ。あまりの痛みに倒れ伏したまま悶絶してしまう。
「まったく、神に女をあてがえとは下劣にもほどがある!言いなさい、なぜこんな下劣かつ低俗な願いをした。場合によっては祟ってやる!」
「祟るだと?!神様気取りかよ、やべぇやつだなあんた!」
「たわけが!私こそこの神社に祀られる恋の大神!」
「なっ、なんだとっ!」
「に、仕えし女神の一人!だが、お前を祟るかどうかは大神様より一任されている。さぁ、言ってみよ!なぜこんな願い事をした!」
まさか、マジもんの神様なのか?そこで、はたと気づく。この女の足が、地に着いていない。よくよく見上げると、この岩みたいな女、でかいだけかと思っていたら、宙に浮いてやがったことが分かった。ということは、この人は本当に・・・?
俺は観念して、神の降臨という現実を受け入れることにした。神頼みに来てるくせに、内心、神様の存在を疑っていた俺だが、むしろ本当に神が現れたなら好都合というもの。
だが、ほら、やっぱりそうだ。こんな願い事、するべきではなかった。それでも、俺は願わずにはいられなかった。これは、俺の奥底から湧いてきた願いであることは熟慮済みだ。
「男にとって、性欲とは実に抗い難いものです」
歯を食いしばり、どうにか立ちあがろうと、足に力を込める。
「十年以上、俺には浮いた話の一つもなかった。あまりにモテなくて周囲からも結婚は無理だと思われてる。それでも、俺は誰かと幸せになりたくて、これまでできることはやってきたつもりだ。自分磨きに精を出したり、筋トレしたり、オシャレのセンスを磨いてみたり、仕事だってがんばって成果出して、貯蓄だって結構したさ」
生まれたての子鹿のようにうまく立ち上がることができない。それでも、どうにか立ちあがろうと、さらに足に力を込める。
「できることはなんだってした。モテるやつにモテるコツすら教わったりもした。それでも、ダメだった。ダメだっただけじゃなく、全部無駄になった・・・」
「無駄になった、とは?」
両足に踏ん張りが戻ってきた。俺は立ち上がり、岩のような女に向き合った。
「俺の命は、あと一年もない。余命が宣告された。間違いかと思って方々病院で診てもらったが、どこも結果は同じだったよ」
「・・・余命一年、とな」
「詳しいことは医者すらよく分かってないらしいが、死ぬのは間違いないとさ。感染したりさせたりってことはないらしいが、体が内側から壊死していくんだってよ。この病気にかかった人間は死ぬ直前までは変わらず元気らしいが、死期が近くなると一気に体が悪くなってそのままお陀仏なんだと」
「それで、死ぬ前に女とイチャイチャしたいと?」
「そうだ!!」
パンっと岩女の平手が俺の頬をはたいた。
「事情は分かったが、己の命が残り幾らもないからといって、勝手が許されるとでも?ちと女を馬鹿にしすぎてはいないか?恋愛をなんと心得る。相手あってのことぞ」
「分かってる。だからこそ、俺は・・・」
また、頬に平手打ちをお見舞いされる。
「貴様の邪な願望を神が叶えるとでも?」
「そんなことは分かってる!けど、俺は最後くらい、男として・・・人として生きたい・・・」
「ほぅ・・・」
「いいじゃないか、最後ぐらい幸せを感じてみたいと思っても。俺だって男だ、手当たり次第気に入った女とスケベしたいと思ったって。でも、それだってよく考えたら、俺はスケベなことは誰が相手でもいいわけじゃない。ちゃんと、心が通い合った、心から愛することができる人としたい!」
「なら初めからそう願えばいいだけじゃないの。それなら普通の恋愛なんだし、神だって縁を授けるにやぶさかではない。なんで無闇に女に手を出したいみたいなこと言うの」
「だって、余命一年しかないから、心通わせられるかわからないし・・・ならせめて体の関係だけでもと・・・」
「さっきと言ってることが違う!矛盾に気づけ!」
強烈なボディーブローが入った。だが、耐えてみせる、この痛みに!膝をついたら終わりだ、奮い立たせろ、俺のエロパワー!
「ふん、まだ立っていられるの。大した根性ね」
「俺は、このまま死にたくない!時間がないから焦ってるけど、心から女の人と愛し合いたいのは本音だ!でも、俺には時間がないんだ!それに、もしお互い好きになって、それが本気であればあるほど、別れの悲しみを相手に与えちゃうだろ!だから、ドライな関係というか、大人の関係でいいのかなと思った。でも、本当だったら、俺だってもっと長く生きたい、幸せになりたい、愛する人と時間を重ねて見たかった。でも、それはもうできない・・・」
俺の独白を、岩女はじっと聞いている。何か考えているようだが、大きなため息を吐かれてしまった。
「ならば、
「うっ、うけい?」
「古来、我が国の神々は誠実さを証明するために行なった儀式だ。今回は人間であるお前の魂胆を確かめるだけだ。簡易的にこの儀式を行う。これを噛み砕け」
そういうと、岩女は首にかけていた翡翠と思われる勾玉の首飾りを力任せにブチっと引きちぎり、その一つはを俺に渡してきた。
「これを噛み砕き、その狭霧を吹き出せ。お前の本心が、真心を持って女と向き合うことを望んでいるのであれば、白き狭霧が吹き出よう。その時は、お前の言う事を信じよう」
「いや、これ、翡翠ですよね?噛み砕くなんてできませんよ」
「やれ。これ以上の問答は無用である。拒むなら去れ」
お〜っと、これは断れない雰囲気・・・。だが、もとよりバチが当たるのも覚悟の上でここにきたんだ。受けてたとう、この誓約を!
俺は勾玉を一心不乱に噛み砕いた。お?思ったより柔らかいぞ、この勾玉。よし、これならいける。俺は噛んで噛んで噛み砕き、これでもかと噛み潰した勾玉を思い切って口から吹き出した。
出てきた狭霧は、白く透明感があり、吹き出している俺すらも清々しさを感じるような、清浄な狭霧が舞い広がった。
「ふん、ならばよい。喜べ、この私が貴様の願い叶えてやろうぞ」
「本当か?!じゃぁ、俺も人生最後にスケベ生活を満喫できるのか。やった!」
「言い方ァァァ!」
岩女の背負い投げをくらいながら、俺はしばらく感じることのなかった感情を感じていた。それは“希望”だ。余命一年を宣告され、途方に暮れることしかできない情けない俺に、神様が最後にくれたご褒美みたいなものなんだろう。
俺は、最後の一年、恋にうつつを抜かして、最後は笑って死んでやる。
こうして、俺は恋の神様の使いに縁を授かることになり、残りの一年スケベ街道をひた走ることとなる。だが、俺が目指すは清く正しいスケベ街道。俺も女の子も幸せになれる、そんなハッピロードへいざ行かん!
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