“デイビッドの転生

@DKK011

第1話

デイビッドはベッドの端にうずくまり、リボルバーを両手に重く冷たく握っていた。親指がシリンダーの上で震えていた。まるで体自身が心に反対しているようだった。床には空のビール缶と滞納された請求書が散らばっていた。


「……もう終わりだな。」

彼は苦笑し、かすれた声でつぶやいた。

「もう人生が耐えられない。仕事を失った。家族には嫌われてる。金を無駄にしたからな。息がクソみたいに臭うし……それに、彼女は……」声が震えた。

「あの汚いクソ女、タイロンと浮気しやがった。あいつのほうがデカくて、金持ちで、イケメンで、身長は195センチだとよ……」


彼は涙をこらえながら、壁を見つめた。


「俺は170しかないんだよ。でも、もうそんなことは関係ないか。」


拳を握る手が白くなるほど、銃を強く握った。一瞬、彼は銃を下ろし、それを見つめた。顎が震えていた。


「神様……お願いだ。」

彼はひび割れた天井を見上げながらささやいた。

「どうか天国に……地獄じゃなくて……」


彼は目を閉じ、引き金を引いた。


バン。


沈黙。耳に鳴り響く音。体はベッドに横たわり、シーツの上に濃い血が広がった。何年ぶりかで、彼の顔は穏やかで、唇の端にはかすかな笑みが浮かんでいた。


——そして、空気。甘くて涼しい空気。鳥のさえずり。

デイビッドの目がパッと開いた。彼は大きな青空の下、仰向けに寝転がっていた。まるで旅行パンフレットに出てくるような空だった。雲がゆっくりと流れていた。彼はまばたきし、起き上がった。心臓が激しく鼓動していた。


柔らかい草が手のひらに触れた。短くて、ベルベットのような感触だった。暖かい風が野花の香りと、なぜか懐かしいと感じる匂いを運んできた。


「なんなんだ、ここは……?」

彼はつぶやき、辺りを見回した。

「俺はどこにいるんだ?」


裸足で立ち上がると、地面はふかふかしていた。近くで小川のせせらぎが聞こえ、遠くにはまるで絵画のように美しい山々が広がっていた。建物も道路もまったく見えなかった。


「これが……天国ってやつか?」

彼はゆっくりと回りながらつぶやいた。

「なんて……穏やかなんだ……」


そして、自分の体を見下ろした。


「ちょ、ちょっと待て……なんで俺、裸なんだ?」

声が裏返った。

「しかも——な、なんで腹筋割れてるんだよ!?」


彼は腹を触り、顎が外れそうになった。次に手のひらを見た——前よりも大きく、色も濃くなっていた。


「ま、待て待て待て……なんで俺、黒人になってるんだ……!?」


風が草を揺らした。デイビッドは凍りついたまま、水辺に映る自分の新しい姿を見つめた。混乱と恐怖と驚きが入り混じった顔だった。


「なんだよこれ……くそっ……オレが……オレがなんで……黒人に!?」

手の甲を見つめながら、どもりながら叫んだ。

「え、えっと……神様?これがあなたの意志なら、俺は否定しません……でも、どこにいるんですか?」


言葉は風に流され、草が足元でささやいた。返事はなかった。彼はぐるりと回った。


「神様?天使?誰かいないのか?」


鳥のさえずりだけが返ってきた。


彼は首を掻きながらため息をついた。


「……まぁ、探索するしかないか。」


歩き出し、新しい足を試してみた。草の感触は弾むようで気持ち良かったが、何かがおかしかった。走ろうとしたが、足がシロップの中を動いているように重く、三歩も進まないうちに地面に突っ伏した。


「くっそ……なんで走れねぇんだ?俺はデブじゃねぇぞ!」


再び立ち上がり走ろうとしたが、また転んで顔から突っ込んだ。


「何が起きてんだよぉぉぉおお!?」


起き上がると、目の前に草の上に青く光る四角いホログラムのような物体が現れた。それはタブレットのように光り、小さな青いキャラクターがその端に立っていた。腕を組み、足をトントンと叩きながら、まるで待っていたかのようだった。


デイビッドはまばたきした。


「うお……これって……なにこれ。天国って、ここまでテクノロジー進んでんのかよ……」


その小さなキャラは指を上げ、ホログラムに浮かぶボタンを指差した。

デイビッドは直感的にそれに触れた。


ホログラムが音を立て、小さなキャラはまるでニュースキャスターのように姿勢を正した。


「こんにちは、ホーク様。私はベポ。システムの案内役です。」

その声は高く、陽気だった。


デイビッドは目を細めた。


「ホーク?誰だよホークって。俺の名前はデイビッドだ!」


ベポは首を傾けた。


「ああ、管理上のエラーですね。魂の登録名は“デイビッド・ホーク”となっております。しかし、問題ありません!現在、あなたは登録されています。」


デイビッドはこめかみを押さえた。


「登録?何に?ここって……天国じゃないのか?」


ベポは質問を無視して、スクリーンを指でスワイプした。数字やアイコンがゲームメニューのように表示された:



---


名前: ホーク・メイサー

種族: ???

レベル: 0(初心者)

HP: 10



---


「現在、あなたのレベルはゼロ。かなり低いです。」

ベポは明るく言った。

「モンスターを倒し、サイドクエストをこなし、ダンジョンをクリアすることでレベルアップできます。」


デイビッドの目が見開かれた。


「レベルゼロ!?モンスター!?サイドクエスト!?ダンジョン!?はぁっ!?」


ベポは首を傾けた。


「続きをお聞きになりますか、ホーク様?」


デイビッドは顔を覆った。


「……もういいよ。どうせなら、最後まで聞いてやる。」


青いキャラは教授のようにホログラムの縁を歩きながら説明した。


「素晴らしい。レベルアップすれば、スキルセットの選択とステータスポイントの配分が可能になります。筋力、敏捷、持久力、魔力——一般的なパラメーターです。」


デイビッドはゆっくりとうなずいた。情報を飲み込もうとしていた。


「……つまり、これはゲームか。天国がゲームって……まぁ、理にかなってるな。」


ベポは急に真顔になった。


「ホーク様。ここは天国ではありません。あなたはまだ、死んでいません。」


デイビッドの胃がギュッと締め付けられた。


「……俺は……死んでない?なんでだよ……?」


ベポの目がどこかを読むように動いた。


「……おや、来客のようですね。」


「来客?誰のことだよ——」


ホログラムが消えた。前方の草が揺れ、そこから青いゼリー状の物体が、ビーチボールくらいの大きさでぬるぬると現れた。


「……なんだよ、あれは……」

デイビッドは目を細めた。


そのスライムのような物体はピチャピチャと音を立てながら近づいてくる。

デイビッドは、思わず笑った。


「まぁ、殴るもんが必要だったしな。サンドバッグ代わりってことで。」


一歩踏み出し、構えて蹴りを入れた。


次の瞬間、まるでボウリングの玉を蹴ったかのような衝撃が足を駆け上がった。


HPバーが頭上に現れた:10 → 6


「うわああああああっ!」

彼は片足で飛び跳ねた。

「なんてこったぁぁぁ!?」


足を押さえてよろめく彼の前で、スライムはなおも無表情のままヌルヌルと迫ってきた。


「ご、ごめんってば!そんなつもりじゃなかったから!」


彼はひざをつき、草の中を後退りした。手のひらが何か硬いものに触れた。

目をやると、草の中にバットほどの太さの枝が半分埋まっていた。


それをつかみ取ると、手に力がこもり、震えるような笑みが浮かんだ。


「……ぶっ殺してやる……」


スライムはぶるっと震え、色が濃くなった。跳ねるように、こちらへ突進してきた。


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