第2話 流行りの周期

 すでに、時代は、いろいろ変わりつつあり、科学捜査というものも、いろいろ取り入れられたりしている。

 特に、

「犯人というものを特定する上での、物的なものだけではなく、心理学的な発想から犯人像をあぶりだす」

 ということでの、

「プロファイリング」

 というものなのが出てきた。

 そして、それらの捜査手段が出てきた背景に、

「時代の移り変わり」

 というものが大きな影響を受けているといってもいいだろう。

 特に、

「昭和の象徴」

 と言われた、

「根性論」

 などというものであったり、

「熱血刑事」

 ということでの、社会派ミステリーに多かった、

「ヒューマンチックなストーリー展開」

 とは、かけ離れた時代となってきたのだ。

 それらは、

「一長一短」

 というものがあり、それが、昭和というものを、

「過去の古臭い考え」

 ということで、

「一括りにしてしまう」

 というのはいけないことであろう。

 しかし、やはり昔の取り調べというものの強引さから、

「冤罪を生む」

 ということもあったりして、それが大きな問題となり、

「国民が警察を信用しなくなる」

 ということになる。

 例えば、一番いい例としては、

「自白の信憑性」

 という問題だ。

 警察の捜査とすれば、まずは、

「状況証拠から、犯人を選定し、そこから、アリバイを確認することで、容疑者のさらなる絞り込みを行う」

 さらに、

「逮捕できるだけの状況証拠をつかみ、容疑者を取り調べ、そこから、自白にもっていく」

 というものが、昭和の頃までの捜査段階だったといえるだろう。

 特に、

「拷問に近い」

 というやり方であったり、

「心理的に追い込苦」

 ということから、自白させたり、

「ウソをつく」

 あるいは、

「容疑者との間での取引」

 などというものが行われることで、

「検事が取り調べを行い、起訴する」

 という流れになっていた。

 当然自白させるまでに、

「拷問」

 であったり、

「容疑者を心理的に追い詰める」

 というようなことは、あってはならないことであった。

 だから弁護士の考えてくるもので、その警察のやり方の逆手を取って、容疑者に対して、

「わざと、自白をさせる」

 という方法を取ったりした。

 警察や検察は、

「自白」

 という最大の証拠をつかんだということで、

「勝ったも同然」

 ということで、

「そそくさと基礎をする」

 ということになるだろう。

 しかし、実際に裁判ともなれば、

「自白は、警察に強要されたもので、実際には、何もやっていない」

 と言えば、今度は、

「検察、警察が窮地に陥る」

 ということになる。

 しかも、今の時代は、

「取り調べにおいて、コンプライアンス違反があってはいけない」

 ということで、

 取り調べにおいて、昔のようなことがないようにと、いろいろな改善がされているということである。

 たとえば、

「取調室の扉は開けておく」

 ということで、

「中で秘密に何が行われているか分からない」

 ということにならないようにするなどということであったり、

「昭和の取り調べ」

 としての、

「泣き落とし」

 ということで、よく言われていた、

「かつ丼」

 というのも与えてはいけないということになっている。

 つまりは、

「取り調べにおいて、容疑者に与えられる食事であったり、飲み物は決まっている」

 ということだ。

「必要以上に、食べ物を与えなかったり、逆に与えすぎたりして、容疑者の心理状態をいたずらに刺激するようなことをしてはいけない」

 ということである。

 要するに、

「警察の取調室」

 というのは、ある意味、

「監禁状態」

 といってもいいわけで、そこで、まだ犯人と決まっているわけでもない人を、

「追い詰めたり、脅迫するようなことは許されない」

 ということである。

 もし、これが、

「犯人だ」

 ということであっても、基本的には、

「人権というものがある」

 というわけで、最終的に、裁判で結審されるまでは、

「たとえ犯人だ」

 ということであっても、何をしてもいいというわけではない。

 最終的に、結審されれば、それに伴った罰を受けるということになるわけで、それこそ、

「法治国家」

 というものである。

 昭和時代と、世紀末前後からの、警察というのが変わったというのは、そのあたりもあるだろう。

 もっとも、これらの、

「コンプライアンス違反」

 という問題は、何も警察組織に限ったことではない。

 どこの会社においても言われていることで、

「社会的な違反」

 というものと、

「個人的なことでの問題」

 というものとに分かれているといってもいいだろう。

 社会的な違反というのは、その言葉の通りの、

「コンプライアンス違反」

 ということで、一番大きな問題というのは、

「会社の機密保護」

 という問題である。

 たとえば、

「顧客情報の流出」

 などというのが一番の問題で、特に、

「昔であれば許された、家に会社の資料を持って帰って仕事をする」

 ということができなくなったということであろう。

 そもそも、そのような状態になったのは、

「バブル崩壊」

 というものからであろう。

 そもそも、

「バブル経済」

 という時代は、

「事業を拡大すればするほど儲かる」

 ということで、

「残業は当たり前」

「会社に泊まり込んでの仕事」

 であっても、残業手当が当たり前に出るということで、社員も、頑張ったものであった。

 しかし、バブルが崩壊することで、

「収入に限界」

 というものができてきたのだ。

 つまり、

「どんなに働いても、収入は、以前の足元にも及ばない」

 ということで、経営者とすれば、

「支出を減らす」

 という方法しかないということである。

 そのためには、

「経費節減」

 ということで、

「リストラ」

 ということになる。

 これは、

「会社のおいての一番の支出である人件費を削減する」

 ということで、

「一番直接的な経費節減だ」

 ということになるのだ。

 そのために、社員を削ってしまうと、

「最低限の業務もできない」

 ということで、

「アルバイトやパートなどの、非正規雇用を行う」

 ということになる。

 そうなると、

「非正規雇用は、残業をさせられない」

 ということで、残った仕事は、正社員が受け持つということになり、

「自分の仕事と、残った仕事をすべてを賄わなければいけなくなり、就業時間では、賄えない」

 ということになるのだ。

 しかも、会社とすれば、

「残業手当は出せない」

 ということ、さらに、

「労務という問題」

 から、

「会社に残って仕事をしているところがバレれば、ペナルティがある」

 ということで、

「会社で仕事もできない」

 ということになり、必然的に、

「会社の資料を家に持って帰って、家で仕事をする」

 ということになるのだ。

 しかし、そのため、

「途中で、会社の資料が紛失した」

 などという問題から、

「会社の情報が、外に漏れる」

 という問題が起こり、それが、さらに、

「コンプライアンス違反」

 ということになった。

 社会的には、

「ストーカー問題」

 と呼ばれるものから言われるようになった、

「個人情報保護」

 という問題と、会社の、

「情報漏洩」

 ということが重なって、

「会社でも、個人でも、個人情報の保護というのは、当然のこと」

 ということになったのだ。

 だから、

「企業においてのコンプライアンス」

 ということで、

「会社の情報漏洩」

 というものが、

「個人を特定する」

 ということになり、

「詐欺の問題などにも絡んでくる」

 ということで、

「重要な問題だ」

 といえるだろう。

 あとは、

「個人間の問題」

 というものと絡んでくるといってもいいだろう。

 いわゆる、

「ハラスメント」

 と言われるものが、その正体であるが、いわゆる、

「セクハラ」

「パワハラ」

「モラハラ」

 などと言われるもので、これらは、またごく一部といってもよく、

「本来、もっとたくさんのハラスメントというものがある」

 ということになるであろう。

「ハラスメント」

 というのは、一種の、

「嫌がらせ」

 ということであり、これこそ、

「昭和の時代の一番の悪しき伝統」

 といってもいいだろう。

 今の時代では、想像もできないようなことが、

「昭和の会社」

 という世界では行われていた。

 たとえば、

「定時を超えても上司が会議をしていたり、上司が帰ろうとしなければ、帰宅してはいけない」

 という、

「サービス残業」

 であったり、

「忘年会や新年会。社員旅行などは、絶対参加が最低条件」

 ということで、さらに、

「俺の酒が飲めないのか?」

 という強制などの、今の時代でいうところの、

「パワハラ」

 などが行われているということである。

 ただ、確かに、

「パワハラ」

 であったり、

「セクハラ」

 などと言われるものは、

「決して許されるものではない」

 といえるのだが、それも、

「限界というものがある」

 ということだ。

 今の時代であれば、

「少し行き過ぎ」

 と言われることもあったりする。

 例えば、女性社員に、

「まだ結婚しないのか?」

 であったり、

「最近、きれいになったね」

 などと、昭和の時代であれば、

「世間話」

 と言われていたものですら、

「セクハラ」

 と言われることから、今度は、上司も、

「セクハラ」

 と言われることを恐れて、女性社員と話ができなくなるという不具合も起こってくるのである。

 そうなると、

「本当は教えなければいけない」

 ということを教えられなくなり、

「会社の業務の歯車」

 であったり、

「女性社員の成長」

 というものができない。

 ということになる。

 女性社員だけではなく、男性社員に対しても、ちょっとした教育のつもりでも、

「上司のパワハラ」

 と言われてしまうと、今度は、

「上司が悪い」

 ということになり、それまででいうところの、

「部下の教育」

 であったり、

「後進の成長」

 ということにおいては、まったく機能しなくなるといってもいいだろう。

 それこそが、

「会社の存続」

 ばかりではなく、

「社会のつながり」

 というものすら、先ゆかなくなるといってもいいだろう。

 そんな時代において、社会の成り立ちを考えていくと、

「社会の変化の激しさ」

 というものとは別に、

「昔から変わっていない」

 というものが、

「えてして、悪しき風習というものだ」

 ということは、実に皮肉なことだといえるのではないだろうか。

 その一つが、

「警察による、昔からのやり方」

 といってもいいだろう。

 特に、

「警察というものは、公務員」

 ということもあって、旧態依然として、組織が変わりないということになるであろう。

 そもそも、警察組織というのは、完全に会社とは違う。

「階級社会」

 というものであり、さらに、

「官僚」

 と呼ばれる者たちの集まりということだ。

 その悪しき風習として、言われているのが、

「縦の関係と、横の関係。それぞれに、絶対的なつながりがある」

 ということである。

 縦の関係というのは、

「階級社会」

 ということが示すもので、

「昇進というものには、昇進試験というものが伴う」

 ということである。

 さらに、昇進において、

「キャリア組」

 と呼ばれるものの存在があるということだ。

「キャリア組」

 というのは、

「上位の国家試験に合格した人が、一握りの幹部候補生として、将来を約束されている」

 という制度である。

 高級官僚と言われ、

「出世が約束されている」

 ということから、

「警察に入る前から約束されたもので。それだけ、学生時代からの英才教育であったり、本人がその気になって勉強をしている」

 ということであろう。

 ただ、官僚の中には、

「潰しあい」

 なるものもあり、実際に、自分が何かをなしたいと思えば、

「より上を目指さなければいけない」

 ということになる。

 それが、刑事ドラマや小説などでのテーマということになり、

「いろいろな職種の探偵」

 というバブル崩壊後の、

「ミステリー界」

 の次のブームということになっている。

 今もその傾向は強く、息づいているのであった。

 そういう意味で、

「警察などの専門職」

 という意味で、

「刑事ドラマ」

 などのほかに、

「医療ドラマ」

 なるものもあり、テーマとしては、似たようなもので、

「それぞれの組織に対して、個人のアウトローな男が挑戦していく」

 というところがテーマになっている。

 どうしても、組織の中にいると、

「昇進するごとに、責任であったり、組織を守らなければいけない」

 ということに縛られるようになる。

 それができないと、

「警察官僚ではない」

 ということになるのだ。

 本来であれば、誰もが警察官になった時というのは、

「弱い者を自分が警察官になって守る」

 ということを目指していることだろう。

 なんといっても、警察官には、

「公務」

 というものがあり、一般の人にはない、

「特権や力が与えられている」

 ということである、

 しかし、実際には、

「その力というのは、かなり制限されている」

 といってもいい。

 力があるだけに、ここで勝手に使ってしまえば、収拾がつかなくなり、警察というものが何のためにあるのか分からなくなる」

 というものである。

 だから、政府をそれぞれでコントロールできるように、政治というものは、

「三権分立」

 というものがあるわけである。


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