燃え尽きかけた胸の中で

夕凪あゆ

第1話


あなたの笑顔を思い出すたび、

胸の奥で火がつく。

小さな火じゃない、全身を焦がすような炎。


あなたには触れられないのに、

抱きしめた感触まで身体が覚えている。

呼吸が乱れ、心臓が早鐘のように鳴る。

息を吸うたび、

あなたがそこにいるかのような錯覚に襲われる。


こんなにも愛しているのに、

あなたは無垢なまま、ただ笑っている。

その白さが、私を狂わせる。


独りになると、思いがあふれて止まらない。

胸の奥がぎゅっと締めつけられ、

手のひらまで震える。

心は暴れ、体は疲れ果てる。

それでもなお、あなたを追い続ける。


忘れたいのに、忘れられない。

許されないのに、愛してしまう。

こんな感情は、誰にもわからないだろう。

けれど、私は知っている。

私の全てが、あなたに吸い寄せられていることを。


窓の外の星を見ても、

あなたの光に比べれば薄い。

冷たい風に触れても、

あなたのぬくもりを思えば寒くない。

世界は何も変わらないのに、

私の体も心も、あなたで満たされている。


もしもあなたが振り向いてくれるなら、

この燃え尽きそうな胸を差し出す。

でも、振り向かなくても構わない。

ただ、あなたの存在を知っているだけで、

私の世界は炎に包まれる。


深夜、街の灯りが遠く消えていく頃、

静けさの中で私は震える。

心臓の音が耳に響き、

息が詰まり、体の熱が夜の冷気と混ざる。

手の指先まで緊張し、

肌の奥が疼く。

その全身の感覚が、あなたの存在を追い求める。


夢の中でさえ、

あなたは手の届かない場所にいる。

触れたくても触れられない、

抱きしめたくても抱きしめられない。

その切なさが、胸を締めつけ、

体中を炎のように駆け巡る。


愛とは痛みであり、狂気であり、苦しいものだ。

それでも私は、あなたを求め続ける。

消えない恋情が、

私の全てを、あなたの光に焦がしている。


私はまだここにいる。

あなたを愛し続けながら、

心も体も、静かに、激しく、燃えている。

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燃え尽きかけた胸の中で 夕凪あゆ @Ayu1030

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