第6話 クラス1のギャル

 時間はあっという間に経過し、放課後に突入する。


 帰りのホームルームが終わり、騒々しい教室を帰りの支度を早々に済ませて誰よりも早く退出する俺。


 廊下を進み、階段を降り、昇降口に到着する。


「我妻って帰るの早いな」


 あまり聞いたことのない女子の声色が俺の耳に届く。


 俺は靴箱を開けた手を止め、声のした方向に視線を走らせる。


 俺の視界に金髪のロングヘアに茶色の瞳、色の白い肌が特有の濃い目のメイクをしたギャルの美少女が映る。


 南莉央。クラス1のギャルであり、男子から人気の高い美少女である。


「南さんだよね? 俺に何の用かな? 」


 南の意図が分からず、戸惑いつつ、探るように用件を尋ねる。


「ちょっと話したいことがあってさ。一緒に帰ったりしない? 」


 南はフランクな口調で提案する。


 なんだ。なんだ。涌井といい、何でクラスの美少女が俺に接触してくるんだ?


 俺は少なからず警官心を抱く。いつでも対応できるようにアンテナを張り巡らす。


「それは構わないけど」


 俺は断る理由も無かったので承諾する。


「了解。なら行こうか」


 南は昇降口で上履きからローファーに履き替え始める。


 俺も南に倣い、上履きからスニーカーに履き替える。開いたままの靴箱も閉じる。


 俺と南は無言のまま校内を進む。しばらく歩き始めて、いつの間にか正門を通過していた。


「いきなりだと思うだろうけどさ。我妻のあそこってもっこりしてて大きいんだな」


 南は頬を僅かに染めながら話を切り出す。


「は? な、なんでそれを!? 」


 俺は自身のあそこに対し触れられ動揺を隠せない。クラス1のギャルからも俺のあそこに対する話題が出るとは思いもしなかった。


「そんなの。今日の女子更衣室で見たからね決ってるだろ」


 南は俺にツッコミを入れ、肩を叩く。


 結構な強さだった。まあまあ痛かった。


「な、なるほど」


 俺は理由を理解し、相槌を打っておく。


「もし我妻が良かったら…あそこで見せてくれないか? 」


 南は学校近くのコンビニを指す。コンビニまで残り100メートルも無い。非常に近い場所である。


「え、そ、それって。コンビニの中で? 」


 俺は恐る恐る南に聞く。


「そうだけど? それがどうした? 」


 南は不思議そうに首を傾げる。


 いやいや。コンビニ内で俺のあそこを見る気か? AVかよ。そんなの出来るわけないだろ。他の来店した客にバレたらどうするつもりだ? 同じ高校の生徒の来店可能性も高いぞ。


「ご、ごめん! ちょっと用事があるの忘れてたよ。じゃあ、また!! 」


 俺は適当に理由を付けて、南の隙を突いて駆け足で逆走する。もちろん逃げるためだ。用事など皆無だ。


「は? ちょ、ちょっと待てよ! 我妻~!! 」


 南の制止を背中に感じながらも、無視して返事を一切せずに自宅へと駆け足で向かった。全ては恐怖を避けるために。

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