第十一話 平和な日常の幕開け
リリア先生の突然の教師引退発言。
それは僕にとって大きなショックだった。
これから先生の授業を受けて、先生とお話をして、幸せな日々を送る予定だったのだから。
「リリア先生、一体どういう事なのでしょうか?」
馬車が小さく揺れる。
リリア先生は窓の外の夕日を眺めながら、静かに話し始めた。
「前にシエロ君にはお話ししましたが、私は先生をする為にここに居るのでは無く、あくまでお金を稼ぐ為にやっていましたので、、、」
確かに先生からしたらただのお金稼ぎなのかもしれない。
でも、僕達からすれば学校の先生だ。
もう会えなくなると思うと、胸の奥が痛くなりそうだ。
「先生!」
セリカが身を乗り出した。
「お金の為ってどういう事!?先生は私達に魔術を教える為に先生になったわけじゃないの?」
セリカは初めてこの話を聞いたので、困惑を隠せずにいた。
リリア先生はセリカの方に視線を向けて話した。
「実は私は冒険者と言いますか、浮遊者と言いますか、、、
先生は髪をクルクルと指で触りながら、頬を少し赤らめて恥ずかしそうに話していた。
しかし!そんな仕草も、とても可愛らしい!!!
「え!?先生って
セリカが身を乗り出した。
「は、はい。私の故郷が
「いいなー!私も行ってみたい!
セリカの目がキラキラと輝いている。
僕が住んでいるこの
「
「ユボンの事でしょうか?確かにあれは甘くて美味しいと言われてますね」
「先生は食べたことないの?」
「私の故郷は
セリカは口からヨダレがこぼれそうになりながら話している。
その時、ずっと静かに座っていたニナが会話に入ってきた。
「お話し中申し訳ございません」
ニナの声に、馬車内の空気が少し引き締まる。
「リリア・マートルさん、大変ご失礼なことをお伺いするかもしれませんが、、、」
「何でしょうか、ニナさん」
「その...リリア・マートルさんはリネット族でしょうか?
流石ニナだ。
リリア先生がリネット族だとすぐに分かったのだ。
「そうです。ニナさんのおっしゃる通り、私はリネット族なのです」
「え!でもリネット族って縁も少なくて、戦闘にも向いていない種族ってママが言ってたわよ!」
セリカが興味津々で前のめりになる。
「それなのに先生はめちゃくちゃ強いし、縁も少ないように見えないわ!」
「流石セリカさん、良く知っていますね」
「当たり前よ!ママやニナに沢山聞いてるんだからね!」
「まぁ、私の場合は少し恵まれただけですが、、、」
セリカの質問に対して、リリア先生は少しだけ表情を暗くして答えた。
きっと何かあるのだろう。
それより早く本題を聞かないと!
「それでリリア先生。どうして先生を続けられないのでしょうか?」
リリア先生はすぐに表情を戻した。
「あっ、お話が脱線してしまいましたね!そんな難しい理由ではありません」
先生は再び、綺麗な夕日を眺めながら話し始めた。
「実はもうこの仕事をして一年ほど経ちますので、次の国に行けるくらいのお金は溜まっているんです」
夕日が先生の横顔を優しく照らしている。
「生徒に魔術を教えていると、辞めるタイミングを失っていて、ちょうどいい機会かなって思いまして、、、」
先生が慌てたように手を振る。
「べ、別にあれですよ!セリカさんやシエロ君に教えたくないとか、そんなんじゃありませんよ!」
なるほど、確かにお金が手に入ればまた冒険に出たいに決まっている。
その為に先生をしてお金を稼いでいたのだから。
「それに今回の事で身に染みるほど分かりました」
リリア先生の声のトーンが一段階大きくなった。
「私は魔術を教える才能が無いなって、、、」
え?
魔術を教える才能が無い?
何を急にリリア先生は言っているのだろうか。
あの実力があって才能が無いなんて、嘘だ。
「そんなことは無いわ、先生!」
「そうですよ、リリア先生。リリア先生は立派な特級魔術師じゃないですか!」
僕とセリカは同時に反論した。
あんな戦いを見たら余計にそう思う。
しかし、リリア先生は本当に自信が無いのか、声が細くなっていた。
「特級と教える才能は別です。実際、私はルイドス君を数か月指導しても、基礎も完璧にしてあげられなかったですし、、、」
いやいや、あれはルイドスの才能もあるけど、基礎より強い魔術を習得させようとするイザトラの環境のせいだ!
リリア先生は悪くない。
「リリア先生、それは!」
「シエロ君の言いたいことは分かります。これは先生を辞める都合の良い言い訳なのかもしれません」
「それでも僕は、リリア先生に才能が無いなんて思いませんよ!」
「シエロ君、、、」
僕は思い切って言った。
「リリア先生!もしよろしければ、少しだけで良いので僕を鍛えてはくれませんか?」
「シエロ君!?急にどうしたんですか!?」
「そうよシエロ!シエロだけずるいわ!私も混ぜなさい!」
セリカが僕の袖を引っ張りながら抗議してくる。
「セリカさん、まずは落ち着いてください」
リリア先生が苦笑いを浮かべながら、僕に視線を向けた。
「シエロ君。一体どういう事でしょうか?」
「そのままです。僕は先生に魔術を教わりたいと思っています」
僕は真っ直ぐに先生の目を見て答えた。
「しかし、先ほども言いましたように私は教えるのは向いていなくて、、、」
「それにシエロ君は、その歳で縁も上手く練れていますし、複合魔術や無詠唱など、、、私が小さい頃は出来ませんでした」
先生の声に、少し驚きが混じっていいた。
「そんな才能があるのに、どうして私なんかに?」
夕日がさらに傾いて、車内がオレンジ色に染まっている。
僕は少し考えてから答えた。
「確かに僕は、父に稽古を付けてもらったりして、縁なども最近は少し上手く練りだせるようになりました」
僕は拳を握りしめながら続けた。
「しかし、今回イザトラを相手にした時、僕は何も出来ませんでした、、、」
ルイドスや同じ階級の魔術師になら勝てても、イザトラには攻撃を裁くので精一杯だった。
早く兄に追いつく、、、いや、超える為にも上級魔術師相手には勝てるようになりたい。
そういえば、どうやったら階級が上がるんだ?
平然と過ごしてきたけれど、階級試験とかそういう話は聞いたことが無いな。
まぁ今はそんなことどうでも良い。先生に教わる方が先だ。
「シエロ君は、どうしてそんなに強くなりたいのでしょうか?」
「それは、、、」
「今でも年齢に見合わない魔術のセンスがあります」
「そうですね、、、優秀な兄を超えたい、、、とかですかね」
僕は視線を逸らしながら答えた。
「それだけですか?」
先生の問いかけに、僕の頬が熱くなる。
「ま、まぁ欲を言えば、、、その、、、先生と肩を並べて冒険出来たらなーって、、、」
口に出してみて気づいた。
僕の本心は、恐らく後者だ。
馬車の中が静かになった。
セリカがニヤニヤしながらこっちを見ている。
ニナは相変わらず無表情だ。
そして、リリア先生は、
少し驚いたような、でもどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。
「私と冒険とかはひとまず置いておいて、良いですよ!シエロ君に稽古を付けるの!」
「え!良いんですか!?」
僕は思わず身を乗り出した。
「はい!なんだか気分が良くなりました!」
先生が微笑んだ。その笑顔はとても綺麗だった。
「まぁ、シエロ君の為になる稽古が出来るか分かりませんが、、、」
や、やったぞー!
リリア先生直伝の魔術を教われる!
やっぱり何でも言ってみるものだな。
「シエロ君」
「はい!何でしょうか!」
僕は勢いよく返事をした。
「その、、、厚かましいことを言うと思いますが、、、」
先生が少し言いにくそうに口ごもる。
「何でしょうか!」
リリア先生の頼み事なら何でも聞きますよ!
やっぱり一緒に冒険か!?
それとも、先生は僕の事を!?
今ここで全裸になれって言われても直ぐになれます!
「稽古する代わりになのですが、、、その、私、、、」
先生が再び髪をクルクルと触りながら、恥ずかしそうに続ける。
「先生をしていた時は学校が用意していた宿に寝泊まりしており、その後はスカラルト家に寝泊まりさせていただきました」
先生の声がだんだん小さくなっていく。
「それで、、、実はその、、、今、宿が無くてですね、、、」
「大丈夫ですよ!」
僕は瞬時に理解した。
脳がOKと即答していたのだ。
「シ、シエロ、、、まだ先生は最後まで話してないわよ」
セリカが少し苦笑いしながら言った。
「フフフ、本当に面白い子ですねシエロ君は」
「稽古の代わりに家に泊めて欲しいって事ですよね!」
「ま、まぁそんな感じです、、、」
先生が頬を赤らめながらうなずく。
「是非来てください!ちょうど兄も出ていきましたので、部屋も一つ余っています!」
最高だ!
まさかリリア先生が僕の家に来るなんて思いもしなかった。
今なら何でも出来そうな気分だ。
「シエロ、あんたが良くても、パパとママが許さないと駄目じゃないの?」
「そうですよシエロ君。まずはご両親に聞いてもらえると助かります」
父は綺麗な女性が来たら直ぐにOKが出るだろう。
母も状況を説明すれば、案外すぐに受け入れてくれると思う。
大丈夫、問題ない。
「では、このまま一緒に帰って聞いてみましょうか」
僕たちはその後コエム馬車亭に着いた。
セリカとニナは専用の馬車に乗って帰宅していく。
「また明日ね、シエロ!先生もお疲れ様でした!」
「はい!セリカもニナさんも今日はありがとうございました!」
僕と先生はそのまま家まで一緒に歩いて向かった。
リリア先生の荷物はスカラルド家を出る時に全て回収しているので問題は無い。
時刻は十八時頃。
まだ夕日も沈まず、長い間オレンジ色の光を照らしてくれている。
「私がいない間、学校は順調でしたか?」
先生が歩きながら尋ねる。
「そうですね。代わりに来た担任の先生が少し気味悪いですが、それ以外は順調です!」
「順調なら良かったです」
夕日を浴びながら歩く先生の横顔が、とても綺麗だった。
「そういえば気になったのですが、魔術の階級ってどのようにして上げるのでしょうか?何か試験とかでもあるのでしょうか?」
「そうですね」
先生が少し考えてから答える。
「まずは今シエロ君が通っている学校を卒業すれば、最低初級魔術師の称号が与えられます。その後、お兄様のようにエリート学校に通い、そこで試験を受ければ中級や上級魔術師にはなれます」
なるほど。
つまり都市魔術栄生学校などに行かないと、上級魔術師にはなれないという事なのか。
しかし、それでは最低後10年以上はかかってしまうじゃないか。
それでは遅すぎる。
もっとこう、、、ドラゴンとかそういう古の類のモンスターを討伐したら、一気に聖級になるとか無いのだろうか?
僕がそんなことを考えていると、家が見えてきた。
「あちらが僕のお家です!」
家に近づくと、父が庭で肉の解体作業をしていた。
恐らく今日の狩りで手に入れたものだろう。
「お父様、ただいま帰りました!」
「おう!シエロお帰り!どうだった?今日のお嬢様と、の、、デー、、、ト、、、、」
父の動きが止まった。
そして僕の後ろにいるリリア先生に気づく。
「、、、大変だ、、、大変だお母さん!!シエロが女の子を!!」
父は突然慌ただしく家の中へと駆け込んでいく。
「お、お父様!?何か勘違いされております!」
父の悪い癖だ。
どうせ僕が彼女を連れてきたなんて思っているのだろう。
いや待てよ?リリア先生が僕の彼女?
悪くない響きだ。
「賑やかなお父様ですね」
リリア先生が苦笑いを浮かべている。
「あ、いや。ただの馬鹿な父ですよ、アハハハ、、、」
僕は慌てて取り繕おうとするが、顔が熱くなっているのが分かった。
家の中から、父と母の慌ただしい声が聞こえてくる。
「ノエル!大変だ!シエロが!」
「何よ急に、、、あら?」
母が玄関から顔を出した。
その瞬間、母の目がリリア先生を捉える。
「、、、まあ」
母の表情が、驚きから興味深そうな笑みに変わった。
「シエロ、お帰りなさい。そちらのお連れ様はどなたでしょうか?」
「はい、お母様。こちらは僕の先生、、、僕が通っている学校の先生だったリリア先生です」
「リリア先生って、、、あっ!」
母の目が大きく見開かれる。
「前に探そうとしていた方ですか!?」
「ちょ、お母様それは、、、」
しまった!
結局母に嘘を付いて、リリア先生の捜索依頼を出していたことを忘れていた。
それに、リリア先生にもそのことは言っていない。
まずい、、、そこを詰められたら言い訳が思いつかないぞ。
僕が冷や汗をかいていると、リリア先生が一歩前に出た。
「シエロ君のお母様、お父様。初めまして私は元教師のリリア・マートルと申します」
その瞬間、父はいつの間にか身なりを整えており一歩前に出てきた。
「こ、これはこれは!お美しい方で、、、」
父が照れながら頭を下げる。
母はそんな父の足を踏みながらも笑顔で会話を続ける。
「それでシエロ。今日はセリカちゃんとお出かけじゃなかったの?」
あ、まっずい。
完全に忘れていた。
今日はセリカとサフラニアに出かけると言って家を出たんだった。
ヤバイヤバイ、どうするシエロ。
「じ、実はですね、、、そのーサフラニアで、、、」
僕が言葉に詰まっていると、リリア先生が何かを察したのか、助け船を出してくれた。
「実はシエロ君とセリカさんがサフラニアにいるところに、偶然遭遇しまして、それで私のミスなのですが、宿を取っていると思っていたら取れていなくて、、、それで宿もどこもいっぱいで困り果てていた所を、シエロ君が『良ければ家に来ませんか』と、、、」
リリア先生、、、
「あら、そうだったのですね。シエロ、今のは本当?」
母の視線が僕に向けられる。
その目は優しいけれど、何かを見透かそうとしているようだった。
「は、はい!本当でございます!」
リリア先生に助けられた挙句、また母に嘘を付いてしまった、、、
母がリリア先生を見つめ、それから僕を見て、小さくため息をついた。
「そ、それで一先ずリリア先生を泊めていただくことは可能でしょうか、、、」
「まあ、困っている方を放っておくわけにはいきませんものね!」
「ありがとうございますお母様!」
「この度は本当にありがとうございます。シエロ君のお母様、お父様」
ふぅー、良かった良かった。
やはり母は偉大だ。
父は気合が入っているのか浮かれているのか、すぐに家に戻ると、いつも出さない少し高価なお酒などを開けようとしていた。
「よかったですね、リリア先生」
僕がほっと息をつきながら言うと、先生が微笑んだ。
「こちらこそありがとうございます」
「いえいえ、今日はゆっくりしてください」
僕は声を小さくして続けた。
「それと、今日あったことは秘密でお願いします」
「勿論ですよ。シエロ君のことだから、どうせご両親に嘘を付いて家を出たのでしょう?」
「ま、まぁそんなところです、、、」
僕は頬を掻きながら苦笑いした。
家の中から、父の上機嫌な声が聞こえてくる。
「ノエル!今日は特別な日だ!あの高いワインを開けよう!」
「あなた、まだお客様と話もしていないのに、、、」
母の呆れた声も続いて聞こえてきた。
「賑やかなご家庭ですね」
「すみません、、、いつも父は早とちりなんですよ、、、」
それから僕たちは、リリア先生を迎えて食卓を囲んだ。
いつもより豪華な夕食だった。
僕の隣にリリア先生が座っている。
先生は今、ローブを脱いで軽装な格好をしていて、いつもと違う雰囲気で最高に良い!
普段見ることのできない先生の姿だ、、、
「さぁさぁリリアさん、食べてください!」
父が張り切って料理を勧める。
「こちらは今日俺が狩った肉です!そしてこっちは母さんが育てている取れたての野菜です!」
「は、はい。いただきます」
この日の父は気持ち悪かった。
リリア先生の前で完全に鼻の下が伸びていた。
「もうお父さん、いきなりガツガツ行かないの」
母が呆れたように言う。
「リリアさんもびっくりしてるでしょう」
「そうですよ、お父様。鼻の下伸ばして、それで母様に嫌われたら、僕は迷わずお母様について行きますからね」
「な、なんだと!シエロ!今日は随分と生意気じゃないか!」
リリア先生がクスクスと笑っているのが見えた。
良かった、楽しんでもらえてるみたいだ。
それから、今日あった偽のサフラニア旅行についての話と、リリア先生の話で盛り上がった。
リリア先生がリネット族で十六歳、そして特級風魔術師という事を知った時には、当然二人とも驚いていた。
その後は今日の疲れもあったのか、僕は布団に入るとすぐに眠ってしまった。
「起きてくださーい、シエロ君。もう朝ですよー」
なんだか心地の良い声が聞こえる。
恐らく夢の中だろう。
しかし、その優しい声はどんどんと大きくなり、夢から現実へと変わっていく。
「起きてください、シエロ君!学校遅刻しますよ!」
はっ!
僕は目を覚ました。
目をこすりながら、苦手な朝がやってきたことに文句を言う。
「まだ眠いです。もう少しだけ、、、」
誰に向かって言っているのかも分からないまま、僕は顔を上げた。
そこには―――
白銀の髪にフローラルな香り。
リリア先生だった。
いつもは兄に起こされるか、最近は父が叩き起こしに来るような朝だったが、今日は最高な朝の始まりだった。
「リ、リリア先生!おはようございます!」
「シエロ君、いつもこんな感じなのですか?」
先生がクスッと笑いながら尋ねる。
「い、いや―まさか。たまたま今日は起きられなかっただけですよ!」
起きたら先生がこの家にいるのには、まだ慣れないな。
胸がこう、ドキドキしてしまう。
それから僕は、リリア先生の元を離れたくはなかったが、学校に向かった。
授業を受けて、いつもより早足で帰宅した。
何故なら―――今日からリリア先生に稽古を付けてもらうのだから。
「ただいま帰りました!」
「お帰り、シエロ」
「お帰りなさい、シエロ君」
僕が帰宅すると、母とリリア先生が庭の花や薬草、野菜たちに水をあげていた。
二人は楽しそうに話しながら作業をしている。
既に母とリリア先生は仲が良くなっているみたいだ。
「ではリリア先生!今日からよろしくお願いします!」
「はい、分かっていますよ、シエロ君」
先生が微笑みながら答えた。
「シエロ。リリアさんに無理させないのよ」
「大丈夫ですよ、お母様!」
僕たちは稽古場所を探した。
家の庭でやるには少し狭いことに気づき、近くの空き地で行うことにした。
「ここなら周りに迷惑もかからないでしょう」
「はい!よろしくお願いいたします!」
「ではまずは、、、」
その時だった。
「お—―いシエロー!それと先生!私も混ぜてくださーい!」
セリカがもうダッシュでこちらに向かってくる。
後ろにはニナがお辞儀をしていた。
「セ、セリカ!?」
「あっぶなーい。間に合った―」
「セリカどうしてここに?」
「どうしても何もないでしょ!?シエロだけ強くなろうとしているにが気に入らなかったのよ!」
「べ、別に僕だけとかは、、、」
セリカがそのままニナに手を振る。
ニナはそれを見ると馬車に乗りどこかへ行ってしまった。
「さぁ始めるわよ!」
「元気ですね!私は三人でも構いませんよ」
「で、では始めましょう」
せっかく先生との二人の時間だったのに。
学校でも今日から先生との稽古をするなんて言わずに黙ってたのに。
まぁ良い、いずれはこうなると思っていた。それが早くなっただけだ。
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