第三話 初級魔術
馬車亭に着くと、既にセリカが着いていた。
アルクナ魔導初等学舎行きの馬車は、通学時間帯は十分おきに来る。
彼女は何故か今いる馬車を見送って僕の方を見ていた。
「おはようございます。セリカさん。どうかされましたでしょうか?」
「どうもしてないわよ!行くわよ。」
あれ?一緒に行くって昨日約束していたっけな。
怒ってはなさそうだし、僕が忘れていたって訳では無さそうだ。
「あ、あのセリカさん?今日って約束してましたっけ?」
「何よ?何か文句でもあるわけ?」
いえいえありません。
むしろ一緒に登校してくれる。嬉しい。
「い、いえ!ありません!馬車も着ましたし乗りましょうか」
そして、学校に着き早速魔術の授業が始まった。
まずは座学からだ。
父の教え方は、『こうシュッとしてバンだ!』みたいな感覚で教わるから、一旦自分の頭で整理する必要がある。
それに比べてリリア先生の声は、なんだかスッと頭に入りやすい。なんだか母に似ている気がする。
「魔術は皆さんの身体に巡っている『
「縁は身体の成長と共に自然と増えてはいきますが、生まれた時から限界値が決まっていると言われています」
「ですが、魔術を沢山使うことにより身体の中の縁量は早く増えるとも言われています」
やっぱりそうだったのか。
昨日の魔術の練習をしていた時、いつもより多く魔術を発動できた。
あれは、日々の練習で増えた縁って事なのか。
それから、リリア先生は魔術の基礎について黙々と説明をしてくれた。
父や母から聞いたこともある内容ではあったけれど、知らなかったこともあり僕自身は楽しかった。
ふと、後ろを振り返るとセリカは頬を机に付け、寝ていた。
とても彼女らしい。
「そして、魔術には階級というものがあります」
「初級 → 中級 → 上級 → 特級 → 聖級 → 神童級 → 神級の七つの区分に分けられています」
「中級魔術を扱いこなせるようになれれば、一人前と言われます。皆さんにはそこを目指して貰います」
神級!かっこいい!
聖級まであるのは知っていたが、更に上二つもあったのか!
それにしても、中級で一人前なのか。何だろう、思ってたよりも基準が低そうに思った。
父と母は二人とも上級魔法が使えるとか言ってたっけな。
じゃ二人は普通に凄い魔術使いなのか!!帰ったら聞いてみよう。
すると、同じクラスの一人がリリア先生に質問をした。
丸い眼鏡をかけて、黒髪のオカッパ君だった。
如何にも真面目そうな子だ。
「先生は何級魔術師ですかー?」
確かに。先生の階級も気になる。
リリア先生は直ぐに答えてくれた。
「私はと風特級魔術師よ」
風特級魔術師??
各属性魔法の中でも階級が分けられているのか。
だとすると、母と父は何の上級なんだろう?
そういや、これっといった魔術を見ていない気がする。
すると丸眼鏡オカッパが、立て続けに質問した。
いや、質問というよりリリア先生をなめている態度だ!
「じゃ先生は風魔術以外は使えないんだー。僕の兄上は基本属性は全て特級って言ってたから、兄上より弱いんだー」
はい、殺す。
なんだあいつは。
僕のリリア先生を馬鹿にしたのか?
というか凄いのはお前じゃなくて兄の方じゃないか。
しかし、リリア先生は特に怒る様子もなく冷静だった。
流石先生!
「そうですね。私は風魔法以外の基本属性は上級までしか扱えませんから、あなたのお兄様よりは劣っているかもしれませんね。」
いやいや、先生はあんな黒髪パッツンオカッパ眼鏡野郎の兄になんて負けていませんよ!!
そして、セリカが起きたタイミングで丁度座学が終わった。
「では、お話ばかりだと疲れると思いますので実際に魔術の実技を始めましょう」
セリカはさっきまで、真剣に話を聞いてたかのような態度で応えていた。
「座学はしっかり身についたわ!先生早くやりましょう!!」
そして僕たちは魔術練習用の庭に集まった。
「まず皆さんにやってもらうのが、身体に巡っている縁を外に放出してもらいます。放出と言っても自分の身体に纏うイメージです」
「まずは先生が見本をお見せしますので、見ておいてください」
そういうと先生は目をゆっくりと閉じた。
その瞬間先生の身体に、縁の膜が纏った。
凄く綺麗で落ち着いた感じ、だけどその縁はどこか強い力を宿しているそんな感じだった。
これは!よく父と稽古をしているときに、縁を扱う上で基本中の基本だから出来るようにと言われてたやつだ!
先生の様な凄い縁を纏う事は出来ないけれど、それなりには出来ていると父に言われていた。
「こんな感じです。まずは縁を体内から外へ出す練習を始めてください」
「出来たもの人から次のレッスンに入ります」
よし、いつもの様にやってやるぞー。(一旦先生の視界に入りやすいところに移動してっと)
まずはいつも家で魔術を出してる感じで、身体に巡る縁をググっと練りだす。
そして、そのまま身体に纏わすイメージ。
すると僕の身体に縁の膜が纏い始めた。
来た来たー!この調子で最大までに練り上げて先生に褒めてもらおう!
「行くぜー俺のスーパーウルトラパワーーーーー!!!!!!!」
しかし、僕の縁がどんどん高まり大きくなった時、身体に纏っている縁の膜が、ガラスが割れた時のように壊れた。
え、何が起こった?
多分僕は何も間違ったことはしていないはず。
いつもより少しだけ本気で縁を練り上げただけだ。
もしかしてセリフがダメだったとか?
それにしてもこれは、恥ずかしい。
周りからは笑われた。
特に黒髪パッツンオカッパ眼鏡野郎と、どこかの貴族か知らんがいつも赤いドレスに包まれたクラスのマドンナ的な奴にはハチャメチャに馬鹿にされた。
「はっはっはっはっーミスってやんのー!!僕は一発でできたよーだ!」
「なんて無様な光景かしら。あんなにカッコつけて失敗するとかダサすぎますわ。」
なんだあいつら、出来たといっても軽くつついただけで弾けそうな感じじゃねーかよ!
クソッ!悔しい。
僕は恐る恐る先生の顔を見上げた。
リリア先生は真剣な眼差しで僕を睨んでいた。
やばい、先生の前でカッコつけた挙句失敗。
帰りたい。。。お母さま助けてください。
「えへへ、先生。む、難しいですね」
すると威勢のいい聞きなれた声と共に、凄い縁を背後で感じた。
セリカだった。
セリカは既に凄い量の縁を纏い、僕を庇ってくれた?
「シエロ!あんたこんな奴らに馬鹿にされて悔しくないの!!」
「そんな事で凹んで終わっていたら、この先ずっと馬鹿にされ続けるわよ!」
なんだ良いこと言うじゃないか。確かにそうだ。
あんな奴らに馬鹿にされて終わっていたら、兄と同じ学校になんて行けない。
よし、仕切り直しだ。
恐らく先ほどの失敗は、縁のググっとした感じの練りこみが足りなかったのだと思う。
まずは縁を練り込む。先ほどよりも何倍にも身体の中で練り込む、いや圧縮する感じか。
そして、縁の放出する量も調整させる。
ゆっくり落ち着いて、身体全身を使て纏わせていく。
そしてあのセリフを、いや今回は辞めておこう。
これで失敗したらもう僕はここに戻れない。
するとうっすら金色を纏ったような縁が僕の身体に纏いついた。
「やった!できましたよセリカさん!」
僕は馬鹿にしてきたやつらにもわざと見せびらかすように堂々と構えていた。
勿論そいつらより質のいい縁を纏わせれたと自負している。
セリカは少し驚いたような顔をしていた。
「あ、あんた良くや、やったわ」
「でもその色何なのよ!私の縁には色は付いてないわ!どこでそれ覚えたのよ!」
い、色?そういえば確かに少し金色っぽい感じの色がついているような。
しかしこれと言った事はしてないしな。
「なんででしょうか。僕には良くわかりませんが、こうググっとする感じを強くしたらなりました」
「な、なによそれ!...ふん!まぁ良いわ。」
僕はもう一度リリア先生の顔を見上げると、真剣な眼差しで僕を睨んでいた。
げっ、なんでだ。
僕は何かやらかしたのか。。。
それから続々と皆が縁を纏う事に成功し、そのタイミングでリリア先生が次のレッスンの説明を始めた。
「はい、皆さんお疲れさまです。皆さん上出来ですね」
「今の感覚が、身体に巡っている縁を放出する感覚です。それを踏まえて次は実際に魔術を使用してみましょう」
リリア先生視点
はぁ、朝から私の事を馬鹿にしたあのクソガキにムキにならず冷静を保った私えらい♪
このまま馬鹿にされて終わるなんて出来ないし、一度私の凄さでも目に焼き付けて貰おうかな。
ひとまず縁の放出で核の違いを見せてあげましょう。
「まず皆さんにやってもらうのが、身体に巡っている縁を外に放出してもらいます。放出と言っても自分の身体に纏うイメージです」
「まずは先生が見本をお見せしますので、見ておいてください」
まずこれが出来ないと始まりませんからね。
よし。いつもの授業より少しだけ強く縁を。
(身体に縁が纏う)
よし!いつもより上手く出来た気がする。
どうよ、これが私の練り上げた縁よ!
ってあれ、反応が薄いですね。
もしかしてこの感じ、、、はぁ、、、
最近は学校に通う前から、家で魔術を教わっていると聞いていたので、この位は見たりやったりしていると思っておりましたが、最近の親はこんな基礎も覚えさずにいきなり魔術を覚えさせようとしているのでしょうか。
しかし何人かの生徒は、良い感じに反応していますね。(嬉しい)
そ、それよりあのオカッパ眼鏡は!これは私の凄さを見せつける為にやったんだから!
オカッパ眼鏡ことルイドス・スカラルトは、先生に興味も示さずに周りの
「なぁ、お前たち今日僕のお家に来るかい!今日はママが最高のデザートを用意してくれるんだってさ!」
は?なんなのあいつ?
私が真面目にしているのに無視!?....
まぁ良いでしょう。あの子たちの授業態度は減点とさせていただきます。
とりあえず皆にやってもらいましょうか。
「こんな感じです。まずは縁を体内から外へ出す練習を始めてください」
「出来たもの人から次のレッスンに入ります」
ん?なんでしょうこの子は。私に見てほしいと言わんばかりの立ち位置に移動して。
シエロ・アルランド君だっけ。
この子のお兄さんがこの学校で有名だったのは聞いたことがありますが。
シエロが縁を練り始める。
そしてあのセリフが解き放たれ、縁がガラスの様に壊れる。
「行くぜー俺のスーパーウルトラパワーーーーー!!!!!!!」
....この子、発言はともかく今の縁の弾け方。
あれは縁の暴発。
縁の量があの子の身体を上回り、身体がそれに耐えれずに弾けた。
この年であの量は、、直ぐに越されそうですね、、
そこにセリカがシエロの所にやってくる。
「シエロ!あんたこんな奴らに馬鹿にされて悔しくないの!!」
あの子は、マーガレット家の子ね。
この子も凄い立派な縁を纏えてる。中にはちゃんと基礎を教わっている子もいますね。
シエロが再び縁を練り上げ、縁を身体に纏わせる。
「やった!できましたよセリカさん!」
まさかこの子、あの縁を更に練り上げたって言うのでしょうか。
あのうっすらと付いた金色に輝く縁、あれは上級魔術師が出来たら祝われるレベル。
私はその子について少し考えすぎてしまっていた。
全員が縁を纏わすことに成功していた。
まぁ中にそれ本当に纏っているか怪しいレベルもいましたが。
ともかく今は先生。切り替えましょう。
「はい、皆さんお疲れさまです。皆さん上出来ですね」
「今の感覚が、身体に巡っている縁を放出する感覚です。それを踏まえて次は実際に魔術を使用してみましょう」
シエロ視点
先生がなぜ僕を睨んでいたのかが分からないが、次の魔術の授業でぎゃふんと言わしてやる!
まずは初級魔術の
これは僕が良く家で練習していた魔術だ!これは良いところが見せれる!
風と水魔術の二組に先生が見える範囲で別れた。
水魔術から練習する組は水バケツが用意されており、どうやらあの水を上手く使って
僕は初めに風魔術の方の組に混ざった。
当然セリカも付いてきていた。
僕を馬鹿にした奴らは、、、水魔術か。僕の魔術を間近で見せてやろうと思ったのに。
「では、皆さん初めに初級魔術の
「まずはこの二つを実演しますので、良く見ておくように」
「風よ、道を切り開け
リリア先生が放った
恐らくこれでも手は抜いていると思う。
しかし、詠唱!
今思えば僕は詠唱をしていない。
初めて魔術の本を読んだ時は、詠唱を声に出さずに心の中で練習していた。
それが身に着いたのか、最近は無意識に詠唱を端折っていた。
「これが
「初級魔術くらいは、無詠唱で出せることは練習を行えば可能ですが、そんな非現実的なことに挑戦するのは上達してからにしてくださいね」
するとあのオカッパ眼鏡が、また偉そうな質問をリリア先生に問いかけていた。
それに対してそいつの周りのやつらもゲラゲラ笑っていた。
「はーい!はーい!もし無詠唱で出来たら先生、僕の下部になってよ」
だめだ、父、母、僕は今魔術で人を殺めようとしている。
でもこいつはやっていい人間だ。
しかしリリア先生はまたしても冷静だった。
「いいですよ。もしこの授業であなたが無詠唱で発動できれば、その願い叶えましょう」
「しかし、初級魔術と言えど無詠唱は上級魔術師にも困難な事です」
流石、大人な女性だ。
しかし、万が一あいつが無詠唱が出来ても僕が先生を守ります。
それからリリア先生は、水魔術の
勿論、手は抜いてるだろうが練度が違った。
「では、始めてください」
よし、いつも通りにやってやるぞー!
僕が魔術を発動しようとした時、横にいたセリカがいきなりえげつない竜巻を起こした。
「風よ!!道を切り開けぇ!!!!!
「あ、あれ、、、」
その竜巻は、水魔術組に襲い掛かる。
しかしリリア先生の一振りでその竜巻は消え去った。
「セリカさん。勢い任せは良いですがそれでは縁が乱れて今のようになってしまいます」
「もう少し風を身体で感じで、落ち着いてしてみてください」
セリカは先生に注意されると、顔を少し赤くしながらも、分かってるわよ!と訴えていた。
しかし、
よし、僕もやろう。
詠唱は、、、一応やっておこう。
下手に目立っても嫌だしな。
「風よ、道を切り開け
普段詠唱をしていなかった分、少しぎこちなく恥ずかしいな。
しかし、格段にいつもより上手く放てれた。
「シ、シエロ。あんた中々やるじゃないの」
「ありがとうございますセリカさん!」
彼女は負けず嫌いな性格なんだろう。
僕が魔術を発動させると、負けじと魔術を連発させる。
しかし、どれも
その威力は中級魔術並み。しかし縁の乱れが激しくコントロールが効かない。
そのたびに、リリア先生が一振りで消してくれる。
「風よ、道を切り開け
「風よ、道を切り開け
「風!、道を切り開けぇぇ!!
「はぁはぁはぁ.。。。なんでシエロに出来て私が出来ないのよ」
多分彼女は細かい縁の扱いが苦手なのだろう。
もっとこう、爆発するようなデカい魔術の方が簡単にできそうだ。
「セリカさんの縁の練り込みは上手く出来ていると思われますので、そこから発動するまでのコントロールを意識してみては如何でしょうか?」
「まずはイメージです!
「縁を練り込む→イメージ→それに沿って縁をなぞる→発動みたいな感じでしょうか」
こんな感じだろうか。
父よりは上手く説明できたと思う。ググっとかドンとか効果音を使わず説明できたのだから。
はっ!しまった。調子に乗り勢いで上から目線で説明をしてしまった。
流石にこれはまずい、またあのミゾ打ち蹴りが飛んでくる。
恐る恐る目を開け彼女の顔をうかがった。
しかし素直ではないけれど、案外聞き受け入れてくれた。
「シ、シエロのくせに生意気なのよ!...ま、やってみるわ」
蹴られる覚悟はしていたけれど、案外僕の説明が良かったのか。安心した。
僕の説明を素直に受け入れたのか、彼女は先ほどよりも落ち着きがあった。
(イメージ。シエロが言った通り私は魔術を思いっきり放つイメージしかなかった。頭でイメージするのは苦手だけど、身体でイメージをする。私が
「風よ、道を切り開け
すると、少し荒々しいが螺旋状に回転しながら横に駆け抜ける風の突風が放たれた。
彼女は勿論、僕も嬉しかった。
「やったわ!シエロ!」
「凄いです!おめでとうございます!」
「ふん!この位出来て当たり前よ!でもまぁ、ありがとう、ね」
僕の説明が上手くて、そのおかげですね!なんて調子には乗らない。
痛い目を見るのは既に見えている。
「いえいえ、セリカさんの努力の証ですよ!」
「というか『さん』要らないって前言ったわよね?セリカでいいのセリカで!」
アハハ、、、そう言われても、自国の王の後継者候補家のお嬢様を呼び捨てにするのはどこか気が引けた。
しかし、せっかく友達になったのだから彼女の思いを無駄にはしないでおこう。
「分かりました、セリカ、、、、」
んーとても言いずらい。
少し心の中で練習でもしておこう。
よう!セリカ!
どうしたのかねセリカ?
今日もいい天気だねセリカ。
僕は気づかないうちに、ニヤついた顔をしていたらしい。
セリカにはひかれていた。
「あんた、、ちょっと気持ち悪いわよ」
「あっ、、すみません。。。」
その後、セリカは直ぐにコツをつかみ完璧に魔術を発動させていた。
因みに縁切れにならないように、縁回復薬を一人一個配られている。
結構貴重な薬品ではあるらしいが、優秀な調合師が居れば作るのはそう難しくはないと母が言っていた。
少し庭に生えている木の木陰で休憩していると、水魔術の方大きな音と水しぶきが上がった。
すかさず視線を向けると、案の定オカッパ眼鏡が調子乗っていた。
僕はムカついていた。
何故か僕に危害が無くても、リリア先生に対して何かしていると思うと腹が立つ。
セリカは呆れているというか、鼻から興味を示していなかった。
リリア先生視点
風魔術組の方は、あのシエロ君を筆頭に全体的に上手く出来ておりますね。
少しイレギュラーはありましたが。
しばらく、水魔術の方に少し視点を向けるとしましょう。
先ほどの基礎が出来ている方は、上手く出来ていますね。
「いいですか、皆さん。
「皆さんの前にあるバケツに入っている水を丸めて前に飛ばすイメージをしてください」
さて、あのオカッパ眼鏡君はどうでしょうか。
私が視線を向けた時、そこはオカッパ眼鏡の魔術自慢大会になっていた。
「おい、お前たち!僕は
「深き海の底より湧き上がる水よ、大海の怒りとなりて我が前に現れ、道を切り開け!
ドバァーン
ルイドスは全員のバケツの水を使い放った魔術は少しだけ高く波が上がり、地面へ衝突して消えた。
当然、周りからは拍手喝采。
「はっはぁーん!どうだ!僕の魔術は!これは中級魔術だぞ!!」
はぁ。確かに中級魔術ですが、基礎もろくにできていないのにあれで使えたと勘違いしているのは見るに耐えますね。
するとオカッパ眼鏡君が私に案の定挑発してきた。
「おい先生みたか!僕の魔術の才能を!!」
「このままだとすぐに先生を抜かしてしまうかもしれんないぞー!ハッハッハッハッ!」
さて、この子を無視してもいいのですがそれはそれで更に絡んできそうだからいっそう分からせてあげましょうか。
「そうですね。この年で中級魔術を扱えるなんて凄い才能ですね!しかし、皆さんの水が無くなったので補充しないとですね!」
「深き海の底より湧き上がる水よ、大海の怒りとなりて我が前に現れ、道を切り開け
荒波ではあるが、その波が丁寧に一人一人のバケツに注がれていく。
別にもっと簡単に水を補給する方法があるが、敢えて同じ魔法を使用した。
誰がみても、圧倒的な技量。
先ほどルイドスが使用した魔術と同じ、、、には見えなかった。
「さっ!水も補給しましたし続きしましょうか!」
ルイドスは顔を赤くし、自分が今恥をかいている事を理解していた。
その顔は額に怒りマークがついてるのが見えそうな位怒っていた。
どうしましょう。少しやりすぎました。
そう私が思っていると30メートル程離れた位置から、明らかにルイドス君を笑いながら馬鹿にしている声が聞こえた。
「何が中級魔術だよ!全然扱えていないじゃーん!ダッセー」
シエロ君だった。
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