雑談部に天使が入部した!
シノマ
プロローグ
「ようやく来たか」
威厳ある顔に、長い白い髭を携えた御仁が、呼びつけた天使に背を向け、佇んでいた。
パリボリパリボリパリボリ
「問題が起こった。お前の姉であり、現界の監視者でもあるルキからの連絡が途絶えた」
パリボリパリボリパリボリ
「直ちに現界に降り、状況を……」
パリボリパリボリパリボリ
「大事な話をしているのに、お前は何故、菓子などを食べておる!」
御仁が天使の方へ向くと、整った顔立ちに金髪の長髪、身長は低く背中には小さい白い羽を生やした少女が、ポテトチップスを食べていた。
「いや、だっていきなり、引きこもりである私が外に出ろって脅迫を受けたんだぞ、お菓子ぐらい食べないとやっていけないぞ」
「お前というやつはどうしてこう、育ってしまったんだ……」
「それはパパが甘やかすから」
「今は、天使長と呼べ」
「は〜い、天使長様〜」
パリパリとポテトチップスを、食べる手を止めない天使。
「まぁ良い……。話は聞いていたな、ルキからの連絡がここ一月ほど途絶えた。何かあったのかもしれん、早急に現界へ向かい、ルキの捜索を頼みたい」
「んあ? やだけど」
「なんでだぁぁぁぁ! お前には姉を心配するという心はないのか!」
「だって、お姉ちゃん最上級天使だよ。そんなお姉ちゃんが対処できないような問題がある現界に、下級天使である私が行っても、何もできないって」
ポテトチップスを食べ終わり、新たに一口サイズのチョコを取り出し、口に運ぶ。その甘さに天使は頬を緩ませ、幸せそうな顔をしていた。
一方で、対面にいる天使の父、天使長の顔はみるみる怒りに染まっていった。
「これは決定事項だ。現界に封印されておる、アレの監視の任は、我が一族だけだと決まっておる。儂はこの天宙界から離れること出来ん。お前しかいないのだ」
「うーん……。でもなー……」
煮え切らない態度に、天使長がため息を吐き覚悟を決めたような目つきで、天使を見つめる。
「分かった、ならこうしよう。お前がこの任務を引き受けなければ、お前に与えている家を壊し、家族との縁を切る」
ぽとっと持っていたチョコを落とす、天使。さっきまで甘い幸せそうな顔から一変、絶望一色に変わる。
「なんて……ことを……。引きこもりから、家を取り上げるだけじゃなく、家族との縁を切るだなんて……。そん、なの脅迫と一緒じゃん!」
「脅迫で結構。それでこの任務を受ける気にはなったか?」
「な、……。分かったよ……。現界に行くよ……。お姉ちゃん見つけてくるよ……。だから、家は壊さないでぇぇぇぇぇぇ!」
「う、うむ。よく言った」
天使は泣いていた。号泣だった。だが天使長はそれを無視して、話を進める。
「ルキに任せている任務は、現界に封印されている魔神の監視だ。今は、その上に庭雲学園という学校が建っておる」
「ぐすん……。なんで学校……?」
「昔、儂らと共に魔神を封印した現界人が、建てたものだ。おかげで疑われずに生徒として、監視が出来る。ルキも一生徒として、いるはずだ」
涙を拭きつつ、真剣に正座で話を聞く天使。家を壊すという言葉が、結構心に来たらしい。
「つまり、私も生徒に紛れてお姉ちゃんを探せってこと?」
「察しがいいな。あの学園で何かがあったのは確かだ。手続きはこちらでやっておく。お前は学園に向かい、校長に会いに行け。それで話が通じるはずだ」
「分かったよ。心底行きたくないけど、家の為にお姉ちゃん探し行ってくるか」
天使長に背を向け、現界に降りる準備を行う。その背を見た天使長が一言声をかけた。
「リ・ア・ラ・、気をつけてな」
「パパ……」
その言葉に天使、リアラの目には涙が──浮かばなかった。むしろ怒りが湧いたぐらいだ。
「そう思うなら、私に頼むなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
持っていた、チョコの袋を父である天使長に全力で投げ捨てた。
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