第5話 鎖を断つ音
翌日の教室。
窓際の席は、相変わらず日差しで灼熱だったが、俺の心臓の周りは、昨日の冷たい氷から、ほんのりとした温かさに変わっていた。
真斗は、もう俺に遠慮しない。
休み時間には、いつものように俺の机に肘をつき、馬鹿話を持ちかけてくる。
真「なぁ、心助。やっぱ、あの白鳥奏学院のスイーツ、もう一回食いに行かねぇ?文化祭じゃなくても食べれるらしいぜ!調理部が定期的に出してるらしいんだ!」
心「……まだ懲りないのか、お前」
真「懲りるわけねぇだろ!でもよ、俺はもうお嬢様より、お前の作ったアクセサリーの方がすげーと思うぜ。小学生の時作ってくれた首飾り、家にまだあるからな!」
その言葉に、俺は少しだけ目を見開いた。
真斗は、俺の持つ「力」を、暴力ではなく物作りの側面から見てくれている。
やっぱり、こいつには勝てないな。
空「ふーん、和解したんだ」
斜め後ろの席から、鷲宮空音が顔を出す。
相変わらずラメのハンディファンを回しているが、その目にはいつもの気まぐれな光がない。
空「真斗と、ちゃんと話したんでしょ。心助、顔つき戻ったよ。あれ見たら、さすがに私も気分悪かったし。次、あんなことあったら、私でもブチ切れるからね」
空音はそう言って、再び不機嫌そうに鼻を鳴らした。
宏「心助」
宏太朗が、いつもの冷房のような無表情で俺を見た。
宏「真斗には済んみたいだな。もう一人、残ってるだろ。誤解、解けよ」
鶴蔵澪波。
あの少女の瞳に映った俺は、冷酷な獣だった。
俺は、放課後、白鳥奏学院へ向かうことを決めた。悲しみの色で染めてしまったあの、白い世界へ。
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