わらわは猫だった

天野 純一

第1話 へんてこ翻訳サイト

 なかがわまさは横浜に住む高校生。学校から帰ったらパソコンでネットサーフィンをするのが日課だ。


 今日もいつものごとくGoogleを起動。適当に頭に浮かんだ言葉を検索にかける。


 「神奈川 香川 違い🔍️」と。


 我ながら意味不明な検索ワードだとは思いつつ、彼は目を通していく。


 すると、とあるサイトが目を引いた。


「……何だこれ。『神奈川か香川か?』? パッと見ブログとかじゃなさそうか。こういう謎のやつはあんまクリックしないほうがいいか」


 ウイルス感染を警戒し、彼は一旦スルーすることにした。またサーフィンを再開する。


 ――しかし、どうにも引っかかる。


 なぜかはよく分からないが、無性に好奇心を掻き立てられていた。『神奈川か香川か?』を通りすぎてからは日本語が全く頭に入ってこない。


「やっぱちょっとだけ開いてみるか」


 彼は『神奈川か香川か?』が掲載されていたところまで戻った。一瞬ためらってから、URLをクリックする。


 開くと、とても簡素なWebページだった。上部に「神奈川か香川か?」という黒文字のタイトル。中央には入力ボックスがあって、その下に出力ボックスがある。


 入力ボックスの中にはうっすらと「翻訳したい文章を入力してください」と表示されている。


 どうやら翻訳サイトらしい。でも何語を何語に翻訳してくれるのかはどこにも書かれていない。


 とてつもなく怪しい。怪しいんだけど――。


 あとちょっとだけなら。個人情報やパスワードを入力しなければ問題ないはずだ。


 昌也は試しに夏目漱石の『吾輩は猫である』の冒頭文を入力してみることにした。


 吾輩は猫である。名前はまだ無い――。


 すると出力ボックスにズラズラと文章が表示された。その文章は「わらわはマヤーだった」という一文で始まっていた。


 わらわ……? マヤー……?


 よく分からないが、彼は最後まで読んでみることにした。

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