裏ボスですか?お菊さん
「ここのダンジョンには元々お菊という名のフロアボスがおりました。⋯あの、骸の6階のボスです」
「あの甲冑じゃなかったんだ⋯」
ふうが語り始めたのは奇妙に抜けていた6階のフロアボスについてだった。
「彼女はそれはそれは⋯大層な美人で⋯私の良き友人で⋯時折共に夜を過ごす事もありました」
「SEX?」 「こらカレンっ」
「⋯しかしお菊は⋯お菊は⋯殺されてしまったのです。私の部下のものに⋯」
「部下って⋯その甲冑?」
「はい。もともとは両方黒の甲冑でした。しかしそのお菊を殺した一人をすぐに処刑しましたので、代役の赤です。」
どうやらフロアボスが他のモンスターに殺され、ダンジョンボスがそのモンスターを処刑するというかなり人間チックなことをしていたようだった。
すると引っかかる点が出てくる。
「なるほどな⋯でも妙だな。モンスターって死んでも復活するんじゃなかったか?」
竜胆がその問いをふうに投げかけた。
確かに、6階で死んだならば6階に蘇るはずだ。
ふうは答えた。
「えぇ⋯しかし彼女は全ての記憶を失いました。今はその怨念に突き動かされ、夜な夜な泣き叫ぶ、ただの獣と成り果てました」
ふうが言うにはお菊は心神喪失状態になっているらしい。
「夜になると出るんですか?」
「はい⋯ここに来る道中に井戸があったでしょう。お菊はそこに⋯うぅっ⋯」
ふうは泣き出してしまった。
ここに来るまでの井戸、たしかに不自然に大きな井戸が一つあった。
「美月ちゃん⋯助けてあげたいよ⋯」
「そうですね⋯私と陽鞠さんと竜胆さんで見に行きましょう」
「⋯皐月は来ないのか?」
やはり人間味があると助けたくなるのが人間だ。
だが何故か皐月は行けそうにないらしい。
「あの子お化け的なのだめなんで⋯ほら、今もあそこに」
皐月はいつの間にかふうの裾をつかみ、がくがくと震えていた。
「ごめんお姉ちゃん⋯ふうちゃん、お話しようねぇ⋯」
「え、えぇ⋯」
気付かないうちに近付かれたと思ったら怪談に怯えている謎の少女にふうも戸惑っている。
「っし、じゃあちょっと見てみるか。昼でも静かなだけで居るには居るんだよな?」
「はい、暗い井戸の底で寂しい思いをしていると思います⋯しかし私はダンジョンボスゆえにここから出ることが出来ません⋯」
ふうは姫路ダンジョンのボスだ。
そのせいでここからは出られないと思っているのだろう。
きっとそのせいで気の狂ってしまった大切な友人を助けることが出来ず、もどかしかったのだろう。
その頃陽鞠はあべのダンジョンでど派手な登場をしたあのボスの事を思い出していた。
「⋯出来るよ?」
「え?」
「だってセレミアさん出てたしね⋯」
遠くの空から突っ込んできたあべのダンジョンのボスと、6階のフロアボスが井戸にいる事が出来ているという話をしてみると、
「確かにそうですね⋯ダンジョンボスだからと先入観で試そうともしませんでした⋯でしたら、私もついて行ってもよろしいでしょうか」
なかなかに天然なのかもしれない。
「いいですよ、行きましょう」
「ふ、ふうちゃん!行かないでよォ!!」
ただひとりのみ、皐月だけが及び腰だった。
―――
「⋯ここか?」
「はい⋯本当に出られるなんて⋯これならすぐに助けにこれたかもしれないのに⋯」
5人+1人+2甲冑と少し大所帯になって天守閣の下に降り、井戸のある場所まで帰ってきた。
「ふうちゃん⋯⋯お菊さんはきっと今もふうちゃんを待ってるはずだよ」
「⋯っそうですね。泣くのは、あの子に会ってからです」
「どうやってお菊さんのところまで行くんですか?」
手ぶらだったはずの竜胆がどこからかロープを出してきた。
「ロープを使うといい」
「どこから出したんですか?!」
救助やなにやらに使えるからといって下着と同じように何時も身体に巻き付けていたらしい。
「準備OKだな?」
「OKです!」「私も大丈夫です」「少し怖いですが、大丈夫でございます」「わ、私も…ひぃぃ…」「we're Okaaaay!!」
近くに植えられた木に端を縛り付け、井戸の中に垂らした。
「皆さん…ご迷惑をおかけします…行きましょう!」
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