第3話 おねーちゃんといもうと


「今年は暑いわね~。葉が焼けそう」

 天を目指すかのように伸びるツタには、焼けても問題ないと言わんばかりに次々と葉がついている。

「焼けたらまた新しい葉を出せばいいのよ!ドンと来い猛暑!ついでに水もバンバン持ってこーい植え主!」

 そろそろ花も付けなきゃ虫が急かして来るわね。私は単体でも受粉出来るんだけど。

「はいはい、明後日まで待ってね。花咲かせるから」

 そして明後日には花をポンポン咲かせた。

「咲かせたからなんぼでもコーイ!取り敢えず受粉もして行きなさーい」

 こうして私は花をつけ、受粉し、種の用意をしていた。すると…


 ……何か根元がモゾモゾするわね?何かしら?


 下を見ると何かが芽を出している。もしかして、いもうと!? まさかこんな時期に!?


「ぷはぁ~、やっと出られたぁ」

「アンタもう9月よ?今から出て来て大丈夫なの?」

「え~、だって~あんな暑い時に出たくなかったから、ちょっと寝てたらこんな時期になっちゃった。まあ今の方が丁度いい気候だしいいじゃない」

「丁度いい気候って…どんだけ呑気な妹なのよ。今から伸びて花咲かせられるの?」

「んー、頑張ってみる」


 しかし、9月になっても暑い時は結構暑い。

「うーん、喉、もとい根が乾いちゃうなぁ」

「そうね、まだ暑いものね。ほら、これでも飲んでなさい」

 おねーちゃんは地中に張り巡らせた根で土に水分を幾らか保たせていた。

「わー!ありがとおねーちゃん!」

「私はもうあまり水いらないけど、伸び盛りのアンタには必要でしょ。ちゃんと飲みなさい」


 ゴクゴクと水を飲んだから元気回復!

「うん!もっと伸びて見せるよ!」

「ほら、こっちに支柱があるから絡まるならこっちに来なさい」

「わ~い♪絡まるの大好き~♪」

 マキマキ、マキマキ。


「やっぱり妹ねぇ。絡まり方が私とそっくり」

「ん?そう?」

「ええ、私もそうやって絡まったのよ。ついでに支柱のおかわりも要求したのよ」

「ホントだ、随分高くまで絡まれるね。おねーちゃんはあの上まで伸びたの?」

「もちろん。足りなくて困ったのよ」

「すごーい!私もあそこまで行けるかなぁ」

「もう時期が時期だから行けるかどうかは難しいわね。でも、半分くらいまでは行けるんじゃないかしら」

「やっぱりちょっと寝過ごしちゃったかな?」

 妹はちょっと反省した。けどおねえちゃんは優しく励ましてくれる。


「しょげる事ないわ。あなたが出て来たから、植え主はまたあなたの成長を楽しみにして毎日見ているじゃない。頑張って大きくなってちゃんと花を付けなきゃね」

「うん、頑張る!」


 その週の日曜日。植え主がやって来て…

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