森井まさとの記録 ③

 そして夏休みが明け、学校が始まった。同じ学校の六年生たちが災害についてのプレゼンテーションをしにやってきた。それぞれの一年生のクラスに選ばれた人たちが来て、画像やデータを使いながらプレゼンテーションをしてくるこの学校の恒例行事だ。何故恒例行事になっているのかというと、六年生は人前で何かを発表する練習にもなるし、一年生は他人のプレゼンテーションを黙ってちゃんと聞く機会にもなるからである。

 まさとのクラスにも選ばれた六年生たちがプレゼンテーションをしに来た。初めはうまくいっていたが中盤にあるトラブルが起きた。

 地震で起こる津波の説明をしている時にしゃべっていた女の子が、急に黙ってしまったのだ。周りの子も異常を察知して助けようと必死に教えるが、とうとう泣き出してしまった。結局その女の子は先生につられて教室から退出することとなった。

 これを見ていたまさとは思った。


(何でこんなことになってしまったんだろうか・・・僕はなにかしてあげられただろうか・・・)


 ただ


(周りの人達がサポートしようとしていたし、きっとこのミスもあの人たちならきっと優しく許してくれる・・・)


 そう思うとまさとは少し安心して、考えることをやめられた。

 あのトラブルがあった後、クラス内では前後の友達と話したり勝手に席を立つ子もいたりして少し騒がしくなっていた。

 学校でのまさとはいじめこそなかったものの腫物扱いをされていた。最初は真面目で勉強もでき、友達ともうまくやっていたが、授業中先生に当てられたときあの現象が起きた。

 まさとは意識がない時間、首をかしげたまま固まってしまい、先生に何度呼びかけられても反応しなかった。普段真面目な性格だったこともあり、何の応答もなく真顔のまま首をかしげ続けているまさとを見て、他の生徒は気味が悪いと思った。

 目が覚めたまさとが事を把握するのにそれほどの時間はかからなかった。先生からは心配されたが、ボーっとしていたと誤魔化してしまい相談することができなかった。なぜ相談できなかったかはまさとにもわからなかった。そのためまさとのところにやってくる友達などいるはずもなく、一人で席に座りぼーっとしていた。

 まさとに盗み聞きをするつもりはなかった。だが聞こえてしまった。


「あの子六年生なのに急に泣き始めてダサいよねww」


 ドックンッ  


 その瞬間まさとの中で

 まさとはこの出来事を忘れることが出来なかった。そしてあの意識がなくなる現象はこの出来事の後確実に多くなっていた。

 それからもう一つ、あの夢の中で見る沼の底のような場所。そこにまた新しい人物がいた。その子はただ立っていた。赤いワンピースを着て、目は裂けそうなほど開かれ、そこからは液体がダラダラと流れ出ていた。そしてその女の子は顔の鼻から下の部分が全て削り取られていた。

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 赤いワンピースを着ており鼻から下が削り取られて、口がなくなり泣いている女の子

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