情報を募っているオカルトライター ②

 誰かに追いかけられるようにして目が覚めた。ベッドから起き上がり、洗面所に向かう。時刻は午前6時半。今日はビジネスホテルに泊りに来ている。1月にも関わらず背中が汗でぐっしょりと濡れていた。

 悪夢を見た。得体の知れない奴がそこにいた。いや・・・そいつが何なのかは知っている。だが知っていることを認めたくなかった。そして奴らがこの現世でのさばっていることも。何とかしなければ。。だが、どうしたらいいのかはわからなかった。とりあえず今は情報を集めるしかない。

 昨日は食事を取らなかったが、鏡の前にいる自分の顔は変わりなかった。洗面器の横に置いてあるアメニティの歯ブラシを取り出し、歯磨き粉をつけて磨き始める。

 昨日は一日中奴らを捜索していた。四津ケ原市を中心に周辺の市や町を歩き回っていたが、それらしきものを発見することはできなかった。途中すれ違う人に聞き込みをしてみたが、めんどくさそうな顔をしながら知らないと言われるだけだった。事件から四日が経とうとしている、まだそこまで遠くへは行っていないはずだ。

 口に溜まった歯磨き粉を吐き出し、近くにあったコップでうがいをする。このまま着替えようかと思ったが、汗で濡れている感覚が気持ち悪いのでシャワーも入ることにした。服を脱ぎ、シャワー室に入る。幸いチェックアウトまでの時間はまだまだある。

 今日は名刺を印刷しに行く予定があった。近くにセブンイレブンがあるため、そこで印刷をする。その名刺は明後日会う情報提供者に使う予定だった。レイアウトなどはすでに考えられているため、あとは印刷をするだけ。

 シャワーから出て、タオルで体を拭き下着を着ていたとき、スマホから通知音がした。服を着てスマホが置いてあるベッドへと向かい、スマホを開いて確認する。通知の正体はインスタグラムにDMが来たことだった。知らないアカウントからのメッセージ。開いてみると


『お前が知っていることを教えろ、今入院している』


 よくわからないメッセージだった。入院していることと自分が知っていることを教えることにどういう繋がりがあるのか。それとも変なスパムかもしれない、このあと怪しいリンクに飛ばされるとか。


『すいません、どういうことですか?』


『プロフィールに書いてある【両腕がなく常に笑顔で下手くそなスキップをし続けている男の子】に襲われた。ふざけんな。知ってることがあったら教えろ。怖くて外に出られないんだ。こんなってことはいろいろ知ってんだろ』


 なんだこいつ。初対面なのにため口?こっちが知ってることを話すのはいいが、。襲われたのはかわいそうだが、こっちだって止めれたら止めてる。最悪だ、最悪。・・・・落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け。この人は恐ろしい目に会い混乱しているんだ。それに情報は貴重だ、頭を下げてでももらわなければ。


『こっちが知っている情報を話すのは構いませんが、こちらも情報がそんなにあるわけではありません。なので、被害にあわれたあなたの情報も教えてくれませんか?お金も払います。』


『絶対な、もしこれで噓だったらお前のこと開示請求して訴えてやるからな。覚悟しとけよカス。』


 金で釣られたな。というか口が悪すぎる。顔が見えない相手だからってなんでも言っていいと思ってないかこいつ。・・・・・・・・


『一昨日の夜、犬の散歩をしてたんだよ。結構嚙み癖があるから、割と暗い時間にな。そんでしばらく散歩してたら、笑い声が聞こえてきた。しかもその笑い声がどんどん近づいてくる。変な足音も聞こえるようになって、犬も吠え始めた。早く家に帰ろうと思って振り返ると、目の前から両腕がない男の子が変な歩き方で猛スピードを出して近づいてきた。逃げようとしても足が動かなくて、そいつに顔面を嚙まれた。そいつにそのままものすごい力で引っ張られて、顔を嚙みちぎられた。すると、犬も応戦して嚙みつき始めた。そのままの勢いで横にあった畑に突っ込んでいった。この間に助けを呼ばないといけないと思って、近隣住民に助けを求めた。その後すぐに病院に行き治療をしたが間に合わなかった、俺の顔はもう元に戻らないらしい。鼻の一部と左の頬がゴッソリ持ってかれた。犬も畑のところで穴だらけになって死んでた。化け物はまだ見つかっていない。

 おら、話したぞ。さっさとそっちの情報よこせ。あと丁寧に話したから金も上乗せしろよ』


 一つの仮説が立った。奴らは夜にしか現れないんじゃないか?昼間もいたら長身の奴なんて目立ちすぎる。それに自分が知っている数少ない情報と照らし合わせてもしっくりくる。そしてこちらからも知っていることをすべて教えた。すると、


『は?そんなわけないだろ。ゴミが。噓つくんじゃねぇ。ほんとのこと話せよボケ』


 やっぱり納得しないか・・・だから言いたくなかったんだ

 相手のアカウントを開き、なにかしらの画像が投稿されていないかを確認する。残念ながら何も投稿されていない。そのままタブの部分を開きブロックする。

 スマホを閉じ、身の回りを整理する。鞄の中にすべての荷物を入れたかを確認し、カードキーを抜いて部屋を出た。ロビーに行きチェックアウトを済ませて近所のセブンイレブンを目指した。

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