第2話 超能力検証とおっぱい
パイロキネシスをいう言葉がある。自由自在に炎を操る超能力のことだ。
水を操る超能力のことを何と言うのかはわからないけど、指先から自由に水を出せる僕は、たぶんそれなのだろう。
「いひ~~~~!」
僕のテンションはぶち上がりだ。
だって超能力だよ? これでテンションが上がらないなんて男の子じゃない!
でも、超能力を使える赤ちゃんとかバレたらどうなるだろう?
お母さん、あの少女はたぶん大丈夫だと思う。というか、そう信じたい。
しかし、世間がそれを許すかはわからない。
悪魔の子とか言われるかもしれないし……。
少女は僕を守ってくれるかもしれないが、父親が僕を売り払ってしまうかもしれない。
僕は少女のことは信じているけど、父親のことはまだ信じていないんだ。
あんなに筋肉モリモリの奴がいい奴だなんて信じないぞ!
「ん~~~~~」
少し考えた僕は、超能力のことは秘密にすることにした。ボクに愛情を注いでくれる少女にも秘密にするのは心苦しいけど、少なくとも言葉が話せるようになるまでは内緒だ。
この地域で超能力者についてどういう感情を持っているかわかるまで、誰にも内緒の方がいいかもしれない。
でも、できればこの超能力を使ってお金を稼ぎたいんだよなぁ。
家は貧しいのか、この部屋には電気も水道もない。少女も繕った跡のある服を着ていたし、僕の着ているおくるみも素材がいいとはとても言えない。
できれば、母親である少女には少しでも楽な暮らしをしてほしい。少なくとも、出産直後から働かなくてもいいように。
それに、僕だっていい暮らしをしたい。せっかく超能力という力があるんだ。ぜひ活用したいところだけど……。まぁ、それは追々考えよう。
それよりも今は、超能力の能力を調べて鍛えないと。
将来、この超能力を使って芸やマジックで身を立てるにしても、水がチョロチョロ出るだけでは観客は盛り上がらないだろう。
もっとすごいことができればいいな! 例えば、腕から炎を出すとかどうだろう? 盛り上がること間違いなしだ!
僕はマッチの炎のような小さな炎を想像しながら、先ほどと同じように体の中にある粘土のようなものを指先に集めていく。
「あみゃ!?」
しかし想像は違い、指先から出たのは炎ではなく水だった。
もしかして、僕は水を生み出すことしかできないのか?
いや、それだってすごいことだけど、もっと派手な超能力が欲しかった。できれば舞台映えするような超能力だ。
でも、まだ諦めるのは早い。炎は相性が悪かっただけかもしれない。次は雷とかどうだろう? 他にも、宝石を生み出すとか、風を吹かすとか、植物を操るとか、光とか闇とか――――。
「あう~……」
思いつく限り超能力を試してみたけど、どれも成功しなかった。もしかしたら、成長したら他の超能力も使えるかもしれないけど、今の僕にできるのは、ただ水を生み出すことらしい。
その水だってチョロチョロと力なく出るだけだ。
僕は指を咥えて、生み出した水を飲みながら考える。
どうやら体の中にある粘土のようなもの。これは超能力の素みたいなものらしい。これをどれだけ出したかによって、水の出る量が変わるようだ。勢いはあんまり変わらないけどね。
僕は時間をかけてこねることで超能力の素が少しずつ柔らかくなったことを思い出す。
今はちょっと出すのがやっとだけど、このカチカチ粘土のような超能力の素をもっとこねて柔らかくする。そうすれば、もっと自在に超能力を使えるのではないだろうか?
「あう!」
そうと決まれば、徹底的にこねてこねてこねまくってぐにゃんぐにゃんにしてやるぞ!
◇
「キース、お待たせしました。ご飯の時間ですよ」
「あう!」
黒髪の少女が少し慌てた様子で部屋に帰ってきた。そして、そそくさと服を捲って片胸を出すと、僕を抱きかかえる。
「はい、どうぞ」
「あむ!」
あれから何か月が経っただろうか。
僕の目はますます良くなり、少女の髪の毛一本一本まで見分けることができるようになった。
「どうかしましたか?」
「ん~」
少女のよく磨いた黒曜石のような綺麗な瞳が細められ、愛おしそうに僕を見ている。間違いなく美少女と言っていいだろう。その顔はほっそりとしており、ちょっと心配になるけど、それが儚い美を感じさせる。
そんな少女がおっぱいを出してるし、なんならその乳首を僕は吸っているのだけど、いやらしい気持ちは全然湧かない。むしろ、安心感と多幸感が広がっていく。
あれかな? 少女が僕の母親だからだろうか?
もしくは、僕がまだ赤ちゃんだからかもしれない。
少女に背中を優しく叩かれ、ゲプッとゲップをする。
「今日は――――」
少女が僕をベッドに戻すと、僕の頭を撫でたり、ほっぺを突いたりしながらおしゃべりを始める。
思えば、僕もだいぶこの国の言葉を覚えてきたな。
「あうあー」
まぁ、発音はまだできないんだけどね。
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