第14話組織加入
私が質問しかけた時、また新しい声がした。
「戻ったかクルミ。そちらの反応はどうだった?」
「はい、お二方とも了承してくれましたぁ。」
了承、一体なんのこと
「あれ、まだ了承貰えてないんですか?」
「少しトラブルがあってな。急で悪いんだがクルミ、彼女の鑑定を頼めるか?」
すると、クルミという人が私をじっと見つめた。
「あぁー、なるほどです。分かりました、ちゃちゃーとやっちゃいます!……あなた名前は?」
「……リト・ホーリーです。」
「じゃあリトちゃん私が手を出すからその上に手を置いて、私と目を合わせてくれる?」
言われた通り、差し出された手の上に手を重ね、クルミさんと目を合わせる。
「彼の者の全てを見せよ」
一瞬自分の目と手から大量の波が押し寄せてきたような感じがした。そのまま意識が虚になる。だがそれも長くは続かず、すぐに意識が戻る。
「……………これは……………リトちゃんとても優秀です。これなら問題ないですよ。」
「な、なにをしたんですか?!」
なにをされたのか頭では分かってるはずだが、内蔵がぐるぐるして気持ち悪くて、声を荒げずにはいられなかった。
「ちょっとした鑑定だから、そう騒がないで……これでも食べて落ち着きなさい。」
少し戸惑いながらそう言い、フェルトさんは私の口に捩じ込むようにして、飴を舐めさせてきた。飴の味はよくわからなかったが、飴のおかげで気持ち悪さは段々と落ち着いていった。その様子を見て、フェルトさんは満足そうに言った。
「落ち着いてきたようね。じゃあ話を戻すわね。あなた生徒会の小間使いにならない?」
「小間使いってなんですか?」
「次期生徒会メンバーへの加入が約束されてる私たちに都合の良い雑用のことよ。それに入ると、生徒会への加入が認められる。これはクルミから説明した方が良いわね。お願いできるかしら?」
「もちろんですぅ。リトちゃんは生徒会に入るメリットをお二人から聞いたと思うんですが、そんな生徒会への加入がとてもスムーーズに行えるんです。ですが、そんな甘〜い話ではないんですよ。成績は上位十名以内!」
「じゅっ……ういい」
今回のテストの順位を思い出し、途方もない絶望感を感じた。
「それだけではなくですね、二年生から選択授業というものが増えるんですけど、その選択権がないんです!」
予想していた条件よりもなんだか優しいことだったので安堵のため息を漏らすとクルミさんが容赦なく突っ込んできた。
「因みに選択する授業は全てです。もちろんそれに伴い、テストの量も多くなります。」
「わ、わたしそろそろ寮に戻ります……」
「最後まで話は聞くものですよ。クルミの鑑定魔法はとても優秀でね。この学校の教師も舌を巻くくらいなの。そんな彼女があなたには才能があると言った。」
その言葉を聞き、顔が歪んだ気がする。遠回しにでも、真正面から才能があると言われて、嬉しくならない人はいないだろう。普通に考えて
この誘いを受けない理由はない。授業料、生活費の免除だけでも私には理由がある。だけど、私は首を縦に振れずにいた。
「でも……」
断りを入れようとしたその時クルミさんが私の手を掴んで言った。
「フェルト先輩、ワイルくん」
何かを察した二人は静かに頷くとクルミさんは私の手を強く握った瞬間黒い霧が私たち二人を取り囲んだ。
「なに……これ….」
「これはね、外にある一定の音量を漏らさない不思議な霧なんです。時間もないので、私が今からあなたのことについて話すので絶対に大声を出さないでください。」
どういうことかと頭の整理が追いつかないまま話が進む。
「リトちゃん、あなたは生徒会に入るべきです。なぜなら……」
そうするとクルミさんが私に耳打ちする。その内容を聞いた私は赤面した。
「なむっ、っむむむむむむ」
「段々と悩む、むむむになってきたね」
確かにクルミさんの提案はとても魅力的だった。でもなんでそのことをクルミさんは知っているのか。クルミさんをじっと見つめる。
「…………これ以上の詮索をしないと約束してもらえるなら」
というとクルミさんの顔がパァーッと明るくなる。それと同時に霧が晴れ、クルミさんがフェルトさんの元に掛けより、報告する。
「先輩!先輩!オーケーもらえました!」
それを聞いた先輩たちはとても満足そうな顔をしていた。
「ふぅ、これでニ人ゲットですね」
「でも、これから何人やめるかわからないですから」
私は首を傾げる。
「あの、先ほどクルミ先輩は二人から了承を得たと言っていませんでした?」
「あぁ、それはですね……あなたが入るならば入っても良いという方が一名いまして。逆にあなたがいないのであれば絶対入りたくないと………」
(あー、あいつか)
私の頭に一つの顔が思い浮かぶ。
「もう夜も遅いですし、寮まで送りますよ。」
クルミ先輩がそう言った時、ワイル先輩が何かを思い出したような表情をして、こちらに駆け寄ってきた。
「そういうことなので、リトさんこれを渡しておきます。」
ワイルさんから白い紙をもらったかと思うと、それはハトの形に変えた。
「それは伝書鳩だよ。僕らは普段、この紙でしかやり取りしないんだ。内容と宛先を書いたらその人の元に飛んでいってくれる。内容が一度確認されたら紙に書いた文字は消え、主人の元に戻るから使う時は、その内容を忘れないように気をつけて。」
「それでは、魔法を発動させますね。リトちゃん、暫くお別れだけど元気でね」
「あの、お別れってどういうことですか?!」
「私たちは多忙だからな。次会うことがあれば来年くらいになりそうだということよ。じゃあねリト。」
「ご武運をお祈りしています。」
そう言う姿をぼやけた視界で見たと思ったら、私は寮の自分の部屋にいた。
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