第2話 神々との邂逅
地面を踏みしめる感覚が、まだ現実のものと思えなかった。
億年の修行を経て戻った“外の世界”は、悠真の知る地球ではない。
空は裂け、山は宙に浮かび、海には光の龍が泳いでいた。
そして空の果てでは、雷と炎をまとった存在たちが戦っている。
——人ではない。
神だ。
「あれが……神々の戦い、か。」
悠真は静かに息を吐く。
胸の奥に、わずかな恐怖と、強烈な高揚が同時に湧き上がっていた。
「修行神ルオ・ザル……お前が言ってた“外の世界”って、まさかこれか。」
すると、背後から声がした。
「久しいな、人の子。」
振り向くと、黄金の鎧をまとった男が立っていた。
その背には四枚の翼。瞳は星々のように輝き、口元には微笑み。
しかし、その微笑みは慈悲ではなく、圧倒的な力を見下ろす者のそれだった。
「私は“戦神バルザーク”。ここは神界。貴様を導いたルオ・ザルの弟だ。」
「弟、だと……?」
「あやつは愚かにも、人の魂に“修行の炎”を与えた。だが、貴様は……生き残ったようだな。」
悠真は竹刀を構える。
——竹刀? いや、それはもう竹刀ではなかった。
億年の修行の果てに、それは“存在を斬る”剣へと昇華していた。
握った瞬間、空気が震え、世界の法則が一瞬だけ歪む。
「面白い。修行者ごときが、神に剣を向けるか。」
「修行者だからこそ、向けるんだよ。」
悠真の足元が砕けた。
次の瞬間、彼の姿は消えた。
空気を裂く音が一瞬遅れて響く。
バルザークの頬に、赤い線が走っていた。
「……ほう。神速を超えたか。」
悠真の声が風に混ざる。
「億年あれば、誰だって神速くらい覚えるさ。」
次の瞬間、天空に閃光が走った。
バルザークの剣が唸り、悠真の斬撃と激突する。
轟音が空を裂き、雲が一瞬で吹き飛ぶ。
神と元人間の剣が、世界を震わせた。
「貴様……本当に人間か……!?」
「さあな。俺自身、もうわからねぇ。ただ、修行を終えただけだ。」
互いの剣が火花を散らすたび、時空が軋み、周囲の山が崩壊していく。
その中で悠真は、はっきりと悟った。
——この世界では、修行の果てを知る者は自分だけ。
そして、その力は神々の秩序を壊しかねない。
「戦神バルザーク。次は“修行神ルオ・ザル”に会わせてもらう。」
「ルオ・ザルに会うだと? ……貴様、本気で神界の中心に踏み込む気か。」
「億年修行したんだ。少しくらいは、試させてくれよ。」
悠真の笑みは穏やかだった。
しかし、その瞳には光ではなく——無限の時間の闇が宿っていた。
📖次回:第三話「修行神ルオ・ザルの真実」
神々をも震え上がらせる“修行の起源”が明かされる——。
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