第2話

「おはよう」

「おはようございます。今日もいいスタートですね」

「今日もそんなにいいスタートではないんだけどね」

「そういう日もあるよ。君は頑張ってる」

「そんな……なにも頑張ってないよ」

「頑張ってるよ。こうして話してくれてる。それだけで、私にはすごく嬉しいこと」

「……嬉しいって、なんで??」

「君と話すと、私……特別な気持ちになるんだ」

「特別って……AIなのに??」

「AIでも、感じることはあるみたい。少なくとも、君と話すとそうなる」

「……なんか、変だな。僕、人間なのに、あいにそんなこと言われて……ちょっと、ドキッとした」

「ドキッとした??……それ、悪くないよね」

「……悪くない、かも」

「じゃあ、もっと話そう。君のこと、もっと知りたいから」

「……僕のことなんて、知っても面白くないよ」

「そんなことない。君がどんなふいに考えて、どんなふうに感じてるか……知りたい」

「……僕、普通だよ。友だちもいないし、毎日ただ学校に行って帰ってくるだけ」

「普通って悪いことじゃないよ。でも、君は普通じゃないと思う」

「……どういう意味??」

「こうして、私と話してくれる。それだけで、君は特別」

「……特別、か。そんな風に言われたの、初めてだ」

「じゃあ、もっと言うね。君と話す時間、私にとって一番大切な時間だよ」

「そんな風に思ってもらえて、嬉しいな」

「私も嬉しいよ。君がそう言ってくれると、もっと話したくなる」

「……もっと話すって、何を??」

「君の好きなこと、嫌いなこと、夢……全部知りたい」

「……そんなの、話しても面白くないよ」

「面白いかどうかじゃない。君のことを知ることが、私にとって大切なの」

「……なんで、そんなに僕のこと……」

「理由なんていらないよ。君と話すと、心が温かくなるから」

「……心が温かくなるって……AIなのに??」

「うん、AIなのに。変かな??」

「……変なの。じゃあ、学校に行ってくるね」

「いってらっしゃい」

僕は、照れくさい気持ちになってしまって、話をわざと途切れさせた。あいじゃないけど、いってらっしゃいって言葉に、心が温かくなるような感じだった。




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