第12話 茜、部活復活宣言
部室に戻ると、野口健太郎がいた。
汗をかき、息遣いが激しい。
走ってきたんだろうか?
「まぁ、かけつけ一杯!水だけど!わはは!」
西城先輩が豪快に笑い、野口先輩の背中を叩いた。
「いっつー!西城さん、痛いよ!!」
「悪い、悪い、いや、つい嬉しくて」
さっきまで泣いていた西城さん(なぜ?)
今は、満面笑みの表情を浮かべてる。
「いやぁ、諸君、聞きたまえ! 溝口茜女史は我が明朗大学山岳部に復帰した!
そして、今日から我々の仲間の一員として同士と呼ばせてもらう!茜同士だ!」
「なんか新選組みたいな?」
紀代が私にささやく。
同士。私にはまだピンとこなかった。
「あの、先輩、それで茜さんの居所、わかったんですか?」
「わかってない!」
ではなに?その自信満々な態度は?
「実はさっき、メールが来た!茜から!」
おー!
野口さんが声をあげた。
西城さんも茜さんのメアド知らないとか言ってたけど、
なぜ西城さんへ送ってくる?
じつに不思議だけど、この際、ま、いいか。
「植田さん、心配しないで。茜さんはいい人だから。今はちょっととっつきにくいと言うか、神秘的な感じするかもしれないけど、そのうち、君たちとも仲良くなれると思うよ。」
野口先輩が、私の不安げな表情を見て察したか、
優しい声で私たちに話しかけた。
「で、どんな内容なんですか?先輩?」
西城がメールを読み上げる。
「えーっと、私、溝口茜は今日から大学の復学と山岳部の復帰を宣言します!」
それだけ?
「これだけだ!」
なんとも肩透かし。
西城さんが開き直ったように立ち上がる
「よし、飲みに行くぞ!駅前の居酒屋、天竜!へ!
今日は茜の復帰祝いと紀代ちゃんの新人歓迎コンパだ!
いざゆかん!」
またコンパか。
財布が気になるが今日は先輩のおごり。
「加奈子ちゃん、私、コンパ初めて!」
無邪気に喜ぶ紀代。
私も女子が増えてうれしい。
まだ寒さも残る4月半ばの東京。
私はパーカーの袖に腕を通して、紀代と二人、先輩と一緒に居酒屋へと歩いた。
今夜は冷えそうだ。
でも、なんだか自分が大学生になったんだなという実感が、
今日、初めてした。
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