第2話

「すっごーい!歌、やっぱり何度聴いてもうまいわ!」

くだらないカラオケハウスで、私は友達?と呼べる人間の歌を聞いていた。

私たちは基本、四人グループだ。そしていわゆる「一軍」。自分で言うのも何だが、私も含めてみんな可愛い。そして愛嬌とコミュ力がある。そんな四人が集まるのは自然なことじゃない?と思うくらい私たちは一緒にいる。

 ただ、見た目も中身、頭の良さも他の三人と私とは段違いだと個人的には思っている。

 一応私は教育学部で将来教師になる予定だが、別に教育熱心と言うわけではない。ただその学部が受験で受かりやすかっただけ。あとコミュニケーションができたら教員としては向いているだろう、それぐらいの打算だ。

「やっぱり愛瑠も歌いなよ~!」

「ええ~私音痴って言ってるじゃん~!」

心底恥ずかしそうな表情を一瞬で作れるのは、私の特技だと思っている。いくら心の中で相手を馬鹿にしていても、それをおくびにも出さず会話の流れを継続させる。かと言って私が「歌わない」と言うことだけは譲らない。まあ音痴なのは本当なのだが、極端な話音楽ができて成功するのは一握り。そんな特殊能力より、コミュ力の方がよっぽど大事だ。

「もう~愛瑠の恥ずかしがり!」

「ごめんごめん」

こんな茶番を繰り返して、私は大学生まで育ってきた。

 「ちょっとジュース入れてくるね」

「分かった~!」

そう言って私は一旦カラオケルームを出る。ああ、もうちょっと私以外の三人にコミュニケーション術があったらなあ、と思わなくはない。三人とも見た目は(私の次に)レベルが高いのだが、なんか違う気がするのだ。まあ、その分私が引き立つから良しとしよう、そんなことを時々思ってしまうがもちろん顔には出さない。

 

そして、私が元のカラオケルームに戻ろうとした、次の瞬間―。

急に地面がぐらつきだした。

 何、地震?そう思ったまた次の瞬間、今度は目の前が真っ暗になる。もしかして停電もしたの?何て運が悪い!そう私は思ったが、それにしてもこれ、暗すぎない?

 このままだと危ないので、とりあえず私は外に出ようとする―が、出口が見つからない。向かって右側に歩けば外に出られるはずなのだが、その道自体が存在しない。道が封鎖?そんなわけないよね?どう考えてもこんな状況はおかしい。

 その直後、地震?の揺れが強くなった。このまま立っていることができないぐらい。そして反対側、左側を見ると大きなドアがある。こんな部屋、あった?と私は思うがとりあえずその中にでも入らないと揺れで怪我しそうだ。そう咄嗟に思った私は急いでドア、その部屋に駆け込む。

 部屋の中に入ると、さっきまでの揺れが嘘のように止んでいた。そこはカラオケハウスの大部屋らしい。さっきまで私がいた所に比べて照明が暗いが、一応電気は繋がっているらしい。私は少し安心しながら椅子に座ろうとする。

 すると―。

 そこには一人の男子がいた。多分私と同じ大学生だ。

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