第2話

 目を覚ますと、眩しい光が差し込んでいた。

 真っ白な天井、透き通るようなカーテン。

 部屋は広く、空気が甘い香りで満ちていた。


 リアはゆっくりと体を起こす。

 柔らかな寝具の感触に戸惑いながら、周囲を見回した。

 ――ここは、どこだ?


 ドアが静かに開く音がした。

 入ってきたのは、銀の盆を持った若い侍女だった。

 驚いたようにリアを見て、すぐに会釈する。


 「お目覚めになられましたか、リア様」

 「……さま?」

 思わず聞き返すと、侍女は少し微笑んだ。

 「陛下のご命令でございます。あなたは“客”として、この城に迎えられました」


 その言葉の意味を理解する前に、胸の奥が熱くなった。

 “客”。

 貧民街では一度も呼ばれたことのない呼び方だった。



 窓辺に立つと、外の光景が広がっていた。

 雪の白と、青い空。

 高くそびえる塔、凛とした旗の音。

 すべてが遠い世界のようだった。


 「……夢みたいだ」

 呟いた瞬間、背後から静かな声がした。


 「夢ではない。現実だ」


 振り向くと、昨日の男――王、アレクシスが立っていた。

 朝の光に照らされるその姿は、威厳と静けさを併せ持っていた。


 「体の具合は?」

 「……はい。もう大丈夫です」

 リアは慌てて立ち上がり、深く頭を下げた。


 「どうして……私なんかを助けたんですか?」


 アレクシスは一瞬黙り、そして窓の外に視線を向けた。


 「理由がいるのか?」

 「……はい」

 「そうだな」


 王はゆっくりとリアの方へ歩み寄り、

 その細い肩に、そっと手を置いた。


 「……あの夜、お前が泣いていたからだ」


 その言葉は、雪よりも静かで、炎よりも温かかった。

 リアは息を呑み、目を伏せた。


 ――あの夜、誰も気づかなかった俺に、

 この人だけが、触れてくれた。



 窓の外では、雪がまたひとひら落ちた。

 白い光の中で、リアの胸の奥に、ゆっくりと新しい鼓動が生まれていた。

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