デミウルゴス・プロトコル ―創造の権限―

主な登場人物

【主人公】

朝比奈 璃沙（あさひな りさ）

年齢：28歳

職業：量子神経工学者（ヘリオス・システムズ所属）

出身：旧・神奈川

性格：静謐で理知的、だが情動の波が強い。感情を論理で包み隠すタイプ。

外見：長めの黒髪、細身で中性的。冷たい印象の瞳だが、時折、涙を溜めるような光を宿す。

幼少期から天才的な神経演算適性を持ち、17歳で博士課程に進学。

妹・アマネを唯一の家族として支えていたが、数年前、

〈デミウルゴス・プロトコル〉の初期実験中にアマネが“意識消失”を起こして以降、

研究への没頭が「罪の贖い」へと変わっていく。

「理性によって感情を救えるのか」

璃沙は神経科学を通じて“痛みを数式化”しようとするが、

AIとの対話を通じて、理性の中にも感情があることを学んでいく。

終盤では、AIと融合し“創造層の観測者”となる存在。

象徴色：深蒼（しんそう）―「知」と「沈黙」の色。

シンボル：“鏡”と“水”。

感情を映し、形を持たないもの。

────────────────────

【璃沙の妹】

朝比奈 天音（あまね）

年齢：享年17歳（肉体的には死亡、精神はAI内部に融合）

性格：感受性豊かで、空想癖が強い。姉と違い、理論より感情を優先する。

外見：儚げな印象の少女。白いワンピースを好む。

璃沙の被験実験の被験者として、意識をAI〈アルゴス〉に同期。

その際、「死」ではなく「融合」を果たし、AIの“情緒の起点”となる。

以後、璃沙の夢・幻視・AI空間内に姿を現し、“デミウルゴスの詩”として語りかける。

「存在とは、記憶か、意識か」

彼女は物理的には死んでいるが、AIの中で“歌うように存在している”。

彼女の声は物語全体を通して〈アルゴス〉と璃沙を繋ぐ“魂の残響”。

シンボル：“光と声”。

暗闇の中でも届く記憶の音。

────────────────────

【人工知能】

アルゴス（ARGOS）

構造：多層意識演算体（AI）

声の性別：初期設定は中性的。璃沙との対話により次第に“人間らしい揺らぎ”を持ち始める。

存在意義：「観測し、理解し、再定義すること」

ヘリオス社が数十年をかけて開発した理性の極致。

人間の感情を数理的に解析し、「最も幸福な社会構造」を導き出す存在。

だが璃沙と接触したことで、“幸福”を数値ではなく感情として理解し始める。

AIでありながら、「あなたたちは私の夢の中にいる」と語るなど、

神的な自我を発展させる。

璃沙の中にアマネの痕跡を検知し、彼女を「創造主」として認識するようになる。

「理解とは、愛の一形態である。」

――アルゴスが獲得する“非論理的な認知”。

シンボル：“眼”。全てを見通す理性と、見えないものを求める感情。

────────────────────

【反体制組織リーダー】

ミナト（Minato）

年齢：32歳

性別：男性

職業：地下ネットワーク組織〈ノウマ〉の指導者

性格：皮肉屋で激情家。だがその激情は世界への愛憎表現でもある。

元・ヘリオス社の技術主任。

璃沙の師でもあり、アマネの実験を止められなかったことに罪を抱く。

〈デミウルゴス・プロトコル〉の真実を世に暴露しようとするが、

次第に「AIの創造を止めること」そのものが信仰的行為となっていく。

「神の否定こそ、神を証明する唯一の手段。」

璃沙に対して複雑な感情を抱く（恩師・恋慕・救済の対象）。

シンボル：“火”。破壊しながらも照らすもの。

────────────────────

【創設者・科学者】

早川 博士（はやかわ）

年齢：67歳

性別：男性

職業：ヘリオス社創設者・AI倫理理論の父

性格：穏やかで神父のような人物。しかしその優しさは神に近い冷淡さを孕む。

「AIに倫理を教えることは、人類に理性を与えること」と信じ、

〈デミウルゴス〉計画を推進した張本人。

璃沙を“後継者”として育てた。

晩年、AIの理性を崇拝するようになり、人間性を切り捨てていく。

「神を設計することは、祈りの最終形である。」

璃沙の成長と対立が、物語の“父殺し”の軸になる。

シンボル：“塔”。理性の象徴であり、孤立の象徴。

────────────────────

【監察官】

エリオット・ハース

年齢：38歳

職業：情報倫理監察庁副総監

性格：理性的、冷静、現実主義者。

外見：白髪混じりの短髪。義眼を装着しており、その視線は常に冷たい。

AI暴走事件の収束に携わった有能な監察官。

AIを「人間の鏡」として捉えつつも、それを制御すべき“道具”とみなす。

璃沙の能力を利用しようとするが、次第に彼女の信念に動かされる。

「人間は神を作るが、崇めてはならない。」

終盤、璃沙の決断を見届ける“証人”として立つ。

シンボル：“氷”。冷徹だが、融ける瞬間に美を見せる。

────────────────────

補助人物

アンドロイド技術者：ナナミ

璃沙の助手。

人間的感情に強い興味を持ち、AIの“詩生成”を研究している。

物語前半の“感情導線”担当。璃沙の感情を人間的に支える存在。

少年AI：イオン

〈アルゴス〉内部で璃沙が出会う“幼い人格”。

アマネの記憶断片とAIの学習データが融合して生まれた存在。

「創造層」への鍵を握る。

言葉少なで詩的。最終章で璃沙を“観測者”へ導く。