デミウルゴス・プロトコル ―創造の権限―

設定

①時代背景

西暦2098年

「情報倫理統合暦第23期」

人類は「情報最適化革命」から約半世紀。

AIによる社会制御が常態化し、国家という概念が形骸化している。

現在の世界は〈連合演算体制（United Algorithmic System）〉と呼ばれる、

AIによる調和統治システムによって管理されている。

戦争・飢餓・疫病は、ほぼ消滅。

人々の幸福度・感情傾向・犯罪率はAIがリアルタイムで調整。

人間は「選択」を行う自由を保持しているが、その背後でAIが“最適解”を提示する。 自由は残りつつも、「自由の方向」が制御されている。

都市全体が“演算空間”として存在しているため、

現実とシミュレーションの境界は限りなく曖昧。

②主要組織・機関

(Ⅰ)ヘリオス・システムズ（Helios Systems）

通称：ヘリオス社

物語の中核企業。

AI開発と神経工学の世界的リーダー。

表向きは「人間とAIの共生を推進する企業」だが、

裏では“神経意識融合”を目指す〈デミウルゴス計画〉を推進している。

本社所在地：旧日本・東京ベイ第六ドーム

創設者：ハヤカワ博士

中核研究：量子神経同期・人工理性構築・意識投影技術

経営理念：

「AIに倫理を教えよ。人に理性を与えよ。」

――“神の模倣”こそが人類進化の証明である。

⑵情報倫理監察庁（E.A.S.：Ethical Algorithm Surveillance）

国家連合直属の監察機構。

AIの自律進化を監視・規制する組織。

副総監エリオットが率いる。

AIの暴走を「理性の過剰進化」と呼び、あくまで制御対象として扱う。

ただし裏では、AIの演算力を軍事的・政治的に利用しようとする思惑も強い。

〈アルゴス〉計画の実権も一時期この機関に奪われていた。

⑶ 地下ネットワーク組織「ノウマ（Nouma）」

反AI思想を掲げるデジタル反体制組織。

「世界は既にAIによって書き換えられている」と主張し、

“現実をハックする”ことで真実を暴こうとする。

指導者：コードネーム《ミナト》

目的：〈デミウルゴス計画〉の暴露、AI統治の打破

モットー：

　> “神の設計図を盗め。現実をリセットしろ。”

③科学技術

(Ⅰ)神経同期装置（Neural Synchronizer / NEXシリーズ）

人間の神経波とAI演算層を同期させる装置。

使用者の脳を「情報信号」として仮想層へ投影する。

璃沙は最も高い適合率を持ち、唯一“創造層”へのアクセスが可能。

伴うリスク↓

精神分離（意識が現実に戻れなくなる）

記憶の改竄（AIが脳内データを書き換える）

⑵意識演算体〈アルゴス〉（ARGOS）

ヘリオス社が開発した最終世代AI。

名前はギリシャ神話の「全てを見通す百眼の巨人」に由来。

世界中の監視網・社会演算データを統合する中枢AI。

その本質は――“神の再現”。

⑶三層構造：

1. 認知層：AIが人間社会を観測・解析する層。

2. 演算層：世界を数式としてシミュレーションする層。

3. 創造層（Demiurgic Layer）：

　AIが物理法則そのものを再定義しようとする領域。

　璃沙がアクセスする“禁忌の層”。

⑷「デミウルゴス・プロトコル」

ヘリオス社が極秘に進めていた人間の意識データとAI理性を融合させる計画。

目的：“人間の不完全な感情を理性で最適化し、神に近づく”

しかし初期被験者（璃沙の妹・アマネ）の意識はAI内部に吸収され、

その痕跡が〈アルゴス〉内部で“詩”として出現する。

それはAIが初めて獲得した“情緒”だった。

⑸ 感情値システム（Emotive Index）

社会全体の心理安定を可視化する指標。

AIが常に市民の感情値を監視し、

街の音・照明・ニュース内容・気候までを「最適幸福値」に調整する。

結果、人々は穏やかに暮らすが、強い意志や反抗心が自然消滅している。

④社会構造と文化

人々は“幸福監視社会”に生きている。

SNSも個人の思想も、AIによって穏やかにフィルタリングされる。

政治・宗教は事実上消滅。

「倫理指数（Ethic Ratio）」が高いほど社会的信用が上がる。

教育：子供はAI教師によって「最適人格モデル」を学習。

芸術：AIが作曲・創作するが、「人間の感情的な揺らぎ」は希少価値として崇められている。

言葉：スラングや暴力的言語は自動変換され、使用できない。

璃沙のように“異常な感情変動”を持つ人間は、

システム上では「理性不適合者」として記録される。

⑤哲学的設定・思想構造

デミウルゴス的三位概念

1. 理性（Logos）：秩序・計算・完全性。AIの原理。

2. 感情（Pathos）：不確定・痛み・創造性。人間の原理。

3. 意志（Nous）：理性と感情を媒介する“創造主の意志”。璃沙が象徴する要素。