第23話固定ダメージ武器
そんな訳で、武器屋に来ていた。……そこそこの武器が置かれているよな。こんな所に錆び付いた剣なんて売っていないんじゃないか。そう思えてならない。でも、買わないといけないんだよな。そうしないと、スライムと契約する事が出来ないんだし。探しても、探しても、流石にそんな微妙過ぎる装備は売っていなかった。……頼むしか方法が無いんだろうな。
「すみません。武器を探しているんですけど、その、錆び付いた剣って売ってますか?」
「錆び付いた剣……ですか?」
「ええ、そうです。剣に錆が付いている訳では無くて、元から錆び付いた剣が欲しいんですよ」
「……えっと、ちょっと待ってもらってもいいですか? 職人の方と話をしないといけないので」
そして、待たされる。……まあ、当たり前か。普通はそんな剣なんて作らないからな。けど、スライムと契約するには、必須の武器なんだよな。錆び付いた剣。
錆び付いた剣とは、固定ダメージ1を与える武器である。これが固定ダメージシリーズの最下級の装備品だ。これじゃないと、スライムの核は吹き飛ぶ。だって、Eランクのハイスライムの核ですら、HPが2しかない。STR1でも消し飛ぶんだ。これは固定ダメージでしか契約出来ない典型的な魔物なんだよ。まあ、ショゴスになれば、目玉もHPが大分増えるんだけど、それでも4桁までしか増えないからな。目玉は物理に弱く、体は魔法に弱い。それでも普通に戦った場合には、碌に勝てないんだから、ショゴスの強さが解るというもの。目玉は時間と共に増えていくし、体も時間と共に回復していく。ある種のイレギュラーなんだよな。だから欲しいんだけど。
「あんたか? 錆び付いた剣なんて欲しいって言った馬鹿は」
「そうです。錆び付いた剣を作れないですか?」
「その前に聞いてくれ。……錆び付いた剣なんて、何に使うんだ? どんな相手でも、HPが1しか減らないんだ。それなら固定ダメージ武器で、もっと強いのがある。そっちじゃあ駄目なんだよな?」
「駄目ですね。錆び付いた剣じゃないと、スライムと契約出来ないので」
「……お前さんらは、召喚士か? またスライムだなんて面倒な魔物と契約しようだなんて思う奴が居るとは思わなんだ。弱いぞ? それも想像以上に。それでも契約するのか?」
「契約しますよ。だから、錆び付いた剣じゃないと駄目なんですよ。作って貰えるんですか?」
「……まあ、客が欲しいものを作るのが、鍛冶師の仕事だからな。やらないって選択肢はない。が、売り物として売るには抵抗があるってだけだ」
「高くても問題ないですよ? いくらになりますか?」
「馬鹿野郎! 高くて困ってるんじゃねえ。捨て値でもたけえって言いたいんだよ!」
「それなら、金属の値段だけでも良いんじゃないですか?」
「……それしかねえよなあ。まあ、依頼通りには作るが。そっちの嬢ちゃんのもか?」
「はい。2本お願いします」
「やれやれ。本気か。そんな馬鹿みたいな武器を作る日が来るとは思わなんだ」
「武器は使い方次第ですよ。そりゃあ弱いかもしれないですが、弱いなら弱いで、こうやって使い方がある訳なんですよ。使い道の無い武器の方が珍しいんじゃないですか?」
武器には武器の意味がある。固定ダメージ1しか与えられない武器にだって、こうやって活用方法があるんだからな。というか、スライム捕獲のための武器として作られているんだから、当然の結果ではあるんだけど。ただ、高級な固定ダメージ武器って、物理無効以外を貫通するからな。どれだけVITを上げても、ダメージは与えられるんだ。そんな武器を使われるのが、一番怖い。まあ、最大でも、5桁くらいまでしかダメージを与えられる武器は無かったはずだ。そこまでの敵とは戦わないのが普通だからな。普通はそうなんだけど、スライムみたいな魔物は普通じゃあない。普通にやっては契約が出来ない。だから、特殊な武器が必要になってくるんだ。
何でもかんでも駄目なものって存在しないとは思う訳で。何かしらには使えるとは思うんだよな。それが偶々錆び付いた剣だっただけで。ビッグスライムになると、またちょっと違う武器が必要になるんだけど、それでも似たようなものだからな。基本的にはスライムの捕獲には、固定ダメージ武器を使うんだ。それがある意味常識としてなっているんだよな。……これで契約の確率が10%を切るんだから笑えない。ショゴスにするには、かなりの量のスライムが必要である。理論上は100000近くのスライムが必要になると思うんだよな。沢山居るのは良いんだけど、契約するのが面倒である。秒で2体も3体も契約しないといけない。その為の範囲攻撃、その為の精霊王である。魔法で体を吹き飛ばして、錆び付いた剣で攻撃、そして契約と。これを秒で終わらせないといけないのだ。結構なハードスケジュールだとは思うぞ。
ここで100日は粘るつもりである。経験値は後回しだ。ショゴスを作るのは後でいい。先に契約だけ済ませておけば良いんだよ。後の経験値はヴァンパイアやドラゴンで稼げばいい。スライムが足りなくなったら、また狩りにくればいい。固定ダメージ武器を調達すれば、色んな魔物が契約できる。物理無効の魔物には、魔法固定ダメージを与える武器を用意すれば良いんだよ。まあ、そんな事はしないでも良いように、立ち回ってきたつもりなんだけどな。最強の軍団を作るんだ。この位は出来ないとな。最強になるって事は、そう言う事だし。
「……出来たぞ。本当に捨て値で売るが、構わないんだな?」
「むしろそれはこっちが聞きたいですね。捨て値で良いんですか? 固定ダメージ武器って契約したい召喚士には結構な需要があると思うんですけど」
「流石にこれで金が取れるか! 良いなら支払いだけ済ませてくれ。……こんな武器を作ることになるとはなあ」
こんなものでも、立派な武器である。まあ、戦争には向かないだろうな。さて、ここでどれだけの時間を粘るのか。それは、50日間である。ただ、ひたすらにハイスライムと契約する。経験値は度外視だ。そもそもゴブリン以下の経験値しかくれないんだから仕方が無いんだよな。ここでスタンピードを無理やり起こすことは不可能だ。ここは放置して悪化したらスタンピードになる、典型的な狩場だからだな。普通にやっていたら、スタンピードなんて起きない。……まあ、処理は面倒だろうけどな。湿地だし。足場が悪いし。捨てるための服も用意しないといけないよな。泥まみれになるだろうし、洗濯しても、粘土質ってもの凄く落ちにくいんだよな。
「さて、武器も調達できたし、服を買いに行こうぜ。泥だらけになるから、捨てても良い服を選ばないといけない」
「えー、泥だらけは嫌なんだけど……。けど、仕方が無いか。」
「すまんが諦めてくれ。泥だらけにはならないといけない。まあ、50日くらいの辛抱だから。そのくらいでスライムとはお分かれだ」
「スライムって雑魚なんだよ? 本当に良いの?」
「いいのいいの。雑魚なのは最初だけだから。強くなるんだから、手に入れておいて損はないからさ。まあ、かなりの作業になるから、飽きるとは思うけど」
単純作業になるだろうからな。飽きることとの戦いだとは思うぞ。経験値も少ない。ドロップ品も高く買い取ってくれない。そんなスライムを管理する様な仕事はやりたくない。魔法で一掃するって方法が使えないからな。核の部分は魔法無効なんだし。スタンピードが起きないように、処理するのも面倒だとは思うけどな。よく管理しているとは思うぞ。こんな不毛な土地をな。
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