引っ越し
あおじ
新生活
大学を卒業し、俺は今年新社会人となる。
期待と不安を胸に抱き、会社近くのアパートへ引っ越してきた。親元を離れ、初めての一人暮らしだ。
自分だけの城となったワンルームにはまだ解かれていない段ボールが山積みになっており、これを一人で開いていくのは少々面倒だとため息をつく。
生活するにあたり直ぐ必要なものだけを取り出すべく、段ボールの側面にマジックで書かれた内容物の殴り書きを確認する。
べりべりとガムテープを剥がしながら、ふと母親の言葉を思い出す。
「ちゃんと他の部屋の皆さんに挨拶しなさいよ」
所謂"引っ越しの挨拶"というやつだ。
玄関の上がり口に置いてある紙袋には焼き菓子のセットが入っており、挨拶の時にそれを渡せと母親から厳命を下されている。
引っ越しの挨拶なんてぶっちゃけ面倒だが、荷解きの面倒と比べたら……まぁ楽しそうか。
2階建ての木造アパートには6つの部屋がある。1階に3部屋、2階に3部屋。俺の部屋は2階のド真ん中で、1階の一室には大家の老夫婦が住む。
残りの4部屋に住む人達は果たしてどんな人だろうか? 優しい人だったらいいなぁ。どちらかのお隣が綺麗なお姉さんとかだったらテンション上がる。おかずを作り過ぎたからお裾分け、なんてことあったりしないだろうか??
都合の良い妄想をしながら靴を履き、紙袋を手にする。袋を持っていない方の手でドアノブを回す。
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