第6話 災害備蓄庫3
「で、結局、時食庫の解除キーのありかは?」
「俺が知っているわけないだろう」
あくまで罠の仕組みを理解しただけだ。
「ちょっと待て、では開けられないではないか、困るぞ! それは凄く困るぞっ!」
焦り、取り乱すシェラ。
「お、お主なら、なんかこう、手で穴をほじくってちょいちょいやれるのでは?」
「無茶を言うな」
あと、おかしな言い方するな。
「罠解析を使った時、カードキーの構造、材質、作り方は理解できたんだがな」
「なんだと、凄いではないかっ! だったらキーをっ!」
「作り方と言っただろ? さすがに材料がなきゃ作れないぞ」
「そう、か……ううぅ」
さてどうするか?
このままずっと倉庫と睨めっこをしても意味がない。
何もせずにいたら飢え死にするしな。
とはいえ、俺たちに物理的に倉庫を破壊するパワーや道具もない。
何か突破口が見つからないか、今できることを探す。
「シェラ、もっとスキルについての詳細を知りたいんだけど」
「念じろ、知りたいと念じるのだ……」
「オーケー」
じゃあとりあえず片っ端からスキルを。
**探査**
半径三十メートルの地形把握、隠し通路や罠などを発見する。
**暗視**
暗い場所もしっかりと見えるようになる。
さらに流れ込んでくる情報。
頭にはっきりとその効果が浮かんできた。
ふむ、この二つがあればダンジョン探索なんかする時もかなり安全にできそう。
早速『探査』を使ってみる。
脳内に流れる半径三十メートル範囲の地形情報。
かなり使えそうなスキルだが、食料庫を開ける役には立たないので、次に行こう。
**毒耐性(超特大)**
スラム街だろうが、廃棄物処理場だろうが、どんなに汚い場所でも生きていくことが可能、いかなる毒も受け付けず、弾き返す。
**病気耐性(超特大)**
病気や感染症に対する圧倒的な抵抗力を持つ。
地味だけど滅茶苦茶ありがたいな。
地球でも未知の場所に行く時とか検疫必要だしね。
(そういえば……)
前にシェラは、この地に適応可能な魂を呼び寄せたとか言っていたな。
このスキルを所持しているということは……。
いや、うん深く考えると怖くなるのでやめておこう。
次に罠関係のスキルだ。
**罠解析**
罠の構造を解析する。
解析した罠を知識として獲得、作成法を知ることができる。
**罠作成**
罠を作成する。ただし、解析で得た知識を元に作成するため未見の罠は作れない。
また作成には素材も必要となる。
こちらは先ほど試した効果と一致する。
とにかく、罠を作れて解除道具も作れるが、さすがに材料なしでは限界があるってことだな。
(やっぱ扉を開けるのは無理かな、これは……)
「悪い、期待に応えられなくて」
「ユ、ユーリが謝ることではないぞ、勝手に期待したのは我の方だしな」
そうは言うが、残念そうな顔は隠せていない。
もう一つあった罠スキルも一応確認しておこう。
**罠ボックス**
罠を自由に出し入れ可能な亜空間倉庫。
罠専用のマジックボックス。
「ん、んん……?」
「どうした、ユーリ」
これは……もしかすると。
「どうにかできるかもしれないぞ」
「な、なんだとっ! ほ、本当か?」
期待の眼差しで俺を見るシェラ。
「危ないかもしれないからこっちに来てくれ、シェラ」
「あ、ああ」
時食庫に寄りかかっているシェラを呼び寄せる。
えぇと、こいつの使い方も普通に念じればいいと。
理屈をぶっ飛ばす感じ、本当に好きよ。
異世界新入生の俺に、細かい理屈なんか理解している時間はない。
発動……『罠ボックス』。
俺が念じると同時。
「ふぇ?」
「よっし! 成功だ」
時食庫が一瞬で眼前から消える。
そして、中に入っていた物が落ちて、大きな音をたてた。
「ちょっ! ユーリ、お、お前……何をした?」
口をポカンと開けて間抜けな顔をするシェラ。
「なな、何が起き、きき、消えてっ、え?」
「俺のスキルで罠を亜空間に収納した」
「はい? し、収納?」
やったのは難しいことではない。
『罠ボックス』ってスキルを使っただけ。
罠を入れる俺専用の収納空間が存在するらしく、そこの中には時食庫を収納した。
と、いうことを説明すると。
「は、なんだ……その意味不明なスキル? わ、我っ、そんなの知らないぞっ!」
「そうなの?」
罠スキルについて、ちょっと知っている感じだったけど。
「記憶から抜け落ちているんじゃないのか?」
「わ、忘れるか? こんな異常なスキル……念じるだけで罠を収納するスキルなどさすがに聞いたことがないわ!」
んなこと言われてもな。
この世界の罠関係のスキルなんて知らないもの。
「とにかく、これで罠の解除に成功したな」
「か、解除? か、解除っていうのかこれ……なんか違くないか?」
「……愚かだな」
「お、愚かだとぅ?」
理解していないようだな。
大事なのは結果である、過程ではない。
一流のハンターは痕跡すら残さないのだ。
俺、ハンターじゃねえけど。
「もっと、こう……我の知る罠師って、鍵の機構だけを壊したりとかなのだがな」
「俺、あまり好きじゃないな、なんでも壊せばいいって考え方は」
「そうじゃなくて、そうじゃなくてなっ! ……もういいわっ!」
シェラは何をイライラしているんだろうか?
そんなやり取りをしながら、時食庫の中身を物色し地上に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます