第6話 プレゼント
『響の声』
僕が十九歳のクリスマス、かおるがくれたのは、手編みの青色に白文字の二人用マフラーだった。三カ月も編むのに費やし、結構大変だったみたいだ。でもその間、お互いの会う回数が減ることはなかった。二人用マフラーの両端の裏表には、僕とかおるそれぞれの名前が編み込んであり、手が込んでいた。
そういえば、僕は何を送ったかな? 確かバラにカスミソウの花束と、オルゴール。とにもかくにも、素晴らしくうれしい夜だった。
年を越して大学一年の二月後半、東京の証券会社の内定を受け、福岡で研修を受けていたが、その後、二年の時、僕は大手電機メーカーに就職し、九州を離れ、大阪へ赴任することになった。
遠距離恋愛が始まった。高校を卒業した彼女は、父親が高校一年生の時に亡くなっていたので、母親の実家のある東海地方へと勉強するために九州を離れた。毎日欠かさない三十秒の電話でのやり取りや、手紙のやり取りで我慢していた遠距離恋愛が実を結び、そして七月、僕は二十歳の誕生日を迎えた。かおるは、付き合いだして二度目の誕生日にして、珍しく僕にプレゼントに何がほしいのか聞くのだった。夕食を済ませたファミリーレストランで、僕たちはまたそれぞれの近況などを話し合っていた。
かおるの学生生活のことや、僕の新人研修や人間関係など、さまざまな話で、その日の僕は、ずいぶんとおしゃべりだった。話が一段落をするのを待っていたかのように、かおるが僕に聞くのだった。
「ねえ、かずくん、プレゼント何がほしい?」
「え? プレゼント、そうだねー…」
僕はいろいろなことを考えてみた、そしてふと思いついた答えを、口にしようとした。
いや、ふとではなかったか?それは、ずいぶん前から。でもなぜか、なかなか口に出す機会を見つけられなかった…
かおるの問いに答えるとき、僕の周りの音は潮が引くように遠のいていた。かおるを抱きたい…
かおるが不思議そうな顔で、僕を見つめている…
目を合わせられない…
音がさらに遠くへ消えていく。僕たちのテーブルの周りだけに静寂が満ち溢れていた…
かおるが僕の目を見つめながら、少し照れくさそうに言った。
「かずくんは、今まで出会ってから二年間、私の心を力いっぱい抱いてくれたから、いいよ…」
僕は自分自身に問いかけ、心の中で、ガッツポーズをした後、一変して音が、このテーブルに戻ってきたような感じがした。
その夜僕たちは初めて結ばれて、今までにない二人だけの特別な時間を過ごした。
そして、僕たちは今までとは違い、未来へ向かうための話をたくさんし、幸福な時間を過ごした…
遠く離れていても、こころはつながっているよね…
僕の腕の中で、かおるがつぶやく。
うなずくと、かおるが起き上がって、いつものように、自然に、ひざまくらをしてくれて、九州の海みたいな気分がしていた。そして耳元で、力いっぱい幸せな結婚生活をしようね、いつか、絶対だよ、の言葉を言ってくれた…
その夜から、僕たちは結婚についていろいろなことを話すようになっていた。
仕事とかおる、半年に一回の僕の転勤について、そうしながら一人暮らしには、もうとうの昔に慣れている。僕は今までにない充実感を覚えながら、福岡で、一人暮らしを送っていた!
かおると心はつながっている、確かにそう思えた一年間。まとまって休みが取れると、旅行やドライブをしたりしていた!
かおると時間を共にした一年が過ぎた。佐賀に転勤になり、僕たちは結婚の約束をし、かおるのお母さんとも仲良くなり、結婚の承諾を得るための挨拶もした…
その年の桜の季節、僕たちは二人で、ちょっと長めの旅行、一週間の日本一周旅行に出た。思い出に残る幸せな旅行…
しかし、物語の終わりには、突然の悲劇が訪れます。彼女とお腹の赤ちゃんが交通事故で命を落とし、主人公は深い喪失感に包まれます。それでも、彼女の「響く声」が心の中で生き続け、主人公を支えているのでしょう。
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