第七話:忘れられた神殿

街を脱出した三人は、森の中に身を隠していた。元傭兵だというガルムは、サバイバルの達人だった。彼の知識のおかげで、追っ手を気にすることなく休息を取ることができた。


「反乱軍の狙いは、エリアーナ様の血筋だ」


ガルムは重い口を開いた。「エルフの王家には、古代の魔導兵器を起動する力があると言い伝えられている。奴らはその力を欲している。兵器が眠る場所は、『忘れられた神殿』。おそらく、奴らはエリアーナ様をそこへ連れて行くつもりだろう」


「それなら、先回りして奴らを迎え撃つしかないな」


健司の提案に、エリアーナは頷いた。ガルムの案内で、三人は神殿へと向かう。道中、健司はエリアーナに自分の過去を少しだけ話した。大きなプロジェクトを任され、必死に働いたが、最後の最後で失敗し、全ての責任を負わされたこと。そのせいで、何かを守り抜くことに自信が持てなくなってしまったこと。


「私は、結局いつもそうだ。大事なところでヘマをする。君のことも、本当に守り切れるかどうか……」


弱音を吐く健司に、エリアーナは静かに言った。


「あなたは、もう十分に私を守ってくれている。ゴブリンから助けてくれた時も、街で私を庇ってくれた時も。あなたは、あなたが思っているよりずっと強い人だ」


その言葉は、健司の乾いた心にじんわりと染み渡った。誰かに、こんな風に真っ直ぐに認められたのは、一体いつ以来だろうか。


数日後、三人は苔むした巨大な遺跡、「忘れられた神殿」に到着した。だが、神殿の入り口には、反乱軍の姿はなかった。静かすぎる。嫌な予感がした。


「罠だ」


ガルムが叫んだのと、周囲の遺跡の壁から無数の矢が放たれたのは、ほぼ同時だった。三人は咄嗟に身を伏せる。矢が止んだ瞬間、フードを被った魔術師風の男が、反乱軍の兵士たちと共に姿を現した。


「お待ちしておりました、エリアーナ姫。そして、物好きな仲間たちよ」


魔術師が杖を振るうと、地面から岩の触手が伸び、ガルムの体を捕らえる。エリアーナが剣を抜くが、別の触手が彼女の動きも封じた。


「やめろ!」


健司はなす術もなく叫ぶ。魔術師は嘲笑うかのように、健司の足元に魔法を放った。激しい衝撃と共に、健司の意識は闇に飲まれた。


(まただ……。また、俺は何もできなかった……)


遠のく意識の中で、彼はエリアーナが連れ去られていくのを見ていた。

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