吠えろ!ガラクタ~塵芥戦術~

堀尾 朗

第1章「虚ろな涙」

序文

【がらくた】

使い道や値うちのなくなった雑多な品物や道具類

――大辞泉より引用――


とあるゴミ屋敷の主人は、溢れ返るそれらを「宝の山」と呼んだ。

また、とある老人は、廃墟と化した建物を見上げ、目に涙を浮かべた。

さらに、とある女は、山奥にある誰も見向きもしなくなった石像を、律儀に毎日掃除していた。


とある少年は、レストランのお子様セットに付属されたそれを玩具と形容した。

しかし一年が経つ頃には、それはガラクタへと変貌していた。

ガラクタと認定された末路は、決まって焼却炉行きである。

だが幸か不幸か、床に転がったそれを少年は無意識に蹴飛ばしてしまい、ベッドの下に隠れた。

これにより、それは焼却炉行きを免れた。


一方の少年は、かつてガラクタ扱いしたそれを押入れから引っ張り出した。

自嘲の笑みが溢れる。

積もった埃を払い落とすと、灰色であったそれがカラフルに彩られていく幻影が広がる。

電気を通すと、それは懐かしい音色を立てて起動した。


少女はそれを踏んづけて、「イタッ」と小さな悲鳴を上げた。

腹を立てた少女は、容赦なくそれをゴミ箱に放り込んだ。

少女はそれをガラクタと呼んだ。

だが、一つ下の弟はそうではなかった。

怒り出した弟に、少女は「床に放っておく方が悪い」と捨て台詞を吐いた。


ガラクタとは、所詮、人の主観による産物である。

ただひっそりと佇み、時に反感を買っては、理不尽な仕打ちを受けるだけの哀れな存在。


それでも――我々はどこまでも従順なのであった。

この国では、少しでも異なる者は“ガラクタ”と呼ばれる。

そして今日も、誰かが焼却炉へと運ばれていく。

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