37 スーヴェル平原の会戦
――バジル王国の王都タイムを陥落させてから、2週間後。アリアは、アスール王国軍の陣地から王都タイムまで掘った坑道を埋めていた。その周りには、『また、土だらけになるのかよ!』と騒いでいるマグヌスを筆頭に、アリア隊の面々もいた。
現状、政治などに関しては、バジル王国の国王に一任している状況であった。どうやら、バジル王国自体は、アスール王国をそれほど、目の敵にしているという訳ではないようであった。どちらかと言うと、バジル王国を脅していたブルーティア帝国の方が嫌いなようであった。
そのため、アスール王国軍に降伏してからは、ある程度、アスール王国の指示に従っていた。また、アスール王国から食料が大量に運ばれているため、バジル王国の国民はアスール王国に対して、良い感情をもっているようであった。
また、ブルーティア帝国がバジル王国を脅してアスール王国に攻めさせていたが、援助は竜騎兵を送るだけであり、食料や軍需物資の支援はなかったため、バジル王国の兵士の中でも、ブルーティア帝国に従うより、アスール王国に従った方がマシであるという意見が多いようであった。
そのため、第1王子マイロは、強引な占領政策をするのではなく、元通り、バジル国王にバジル王国を治めさせた方が良いと判断し、アスール王メギドを説得した。その結果、アスール王国からは食料の援助をするだけであり、バジル王国の政治などは、元通り、バジル王国の国王に一任されることとなった。
その発表に、バジル王国の軍関係者と文官は驚いた。当然、アスール王国の者達が、バジル王国の占領政策を行うと思っていたからだ。バジル王国の国民も、その発表に対して、好感をもったようであり、現状、反乱などは起きていなかった。
そのような状況で、アリアが穴を埋めるのに必死になっていた頃。タイム城で、マイロを始め、アスール王国の将官達が、軍議をしていた。
「リカルド! レファリア帝国の使者殿が言っていた内容を皆に共有してくれ!」
「分かりました。まず、今日の朝に、レファリア帝国の使者殿が王都タイムに到着し、マイロ王子に謁見をしました。内容は、援軍の打診でありました。どうやら、現在、レファリア帝国軍は、ブルーティア帝国軍とオーシア王国軍の連合軍に対して、攻勢を仕掛けている状況のようです。ですが、連合軍も大軍であるため、中々、突破出来ずに
「ありがとう、リカルド! 現在、レファリア帝国の使者殿を別室で待たせている状態のため、迅速に今後の方針を決めたいと思う。何か、意見のある者はいるか?」
マイロはそう言うと、部屋の中を見渡した。すると、ロナルドが手を上げていた。
「ロナルド! 意見を述べよ!」
「分かりました。まず、お尋ねしたいことが1点あります。レファリア帝国軍の兵力とブルーティア帝国軍とオーシア王国軍の連合軍の兵力を教えていただきたい」
「リカルド、答えよ!」
「分かりました。現在、レファリア帝国軍は10万、連合軍もほぼ同数の10万の兵力を有していると考えられます」
「ありがとう、リカルド! それを踏まえ、ロナルドの意見を聞きたい!」
「分かりました。現状、我が軍は、3万程度の軍勢を有しています。そして、王都タイムを陥落させてから、2週間が経過したので、ある程度、兵士の疲れもとれてきてはいると考えられます。そのため、連合軍を奇襲することは可能であると考えます。ただし、ブルーティア帝国も、こちら側の動きには注意しているはずです。そのため、スーヴェル平原まで、迅速な軍の移動をしなければ、奇襲は成功しないと考えられます」
「ロナルドの意見は分かった! 他に意見のある者はいるか?」
マイロはそう言って、再び、部屋の中を見渡した。どうやら、意見のある者はいないようであった。
「他に意見がある者はいないようであるな! それでは、結論を言う! 我が軍は、速やかに、王都タイムを出発し、スーヴェル平原に前進し、ブルーティア帝国軍とオーシア王国軍の連合軍の後背から攻撃をする! そのために、準備せよ!」
「ハッ!」
部屋にいた将官達は、返事をすると、部屋を出て、準備にとりかかった。
――軍議でスーヴェル平原へ向かうことが決まった頃。アリアは、アリア隊の面々とともに、王都タイムで休憩をしていた。
「それにしても、坑道を掘るのも時間がかかったけど、埋めるのも時間がかかるな!」
マグヌスがそう言った後、容器に入った水を飲んでいた。アリア隊の他の面々も、それぞれ、水を飲んだり、布で汗をぬぐったりしていた。アリアも、布で汗をぬぐっていた。
「掘るのに、1ヶ月もかかったんだ。埋めるのにも、それ相応の時間がかかるよ。それに、焦って、坑道を埋めて、それが原因で坑道が崩れて、生き埋めになるのはお話にならないだろう」
マグヌスのボヤキに、ブルーノがそう答えた。アリアも、そうだよねと思いながら、休憩していた。
「まぁ、ブルーノの言う通りだな! 生き埋めなんて、絶対に嫌だからな!」
マグヌスはそう言った。その後も、アリア隊の面々は休憩しながら、雑談をしていた。
そのように、アリア隊の面々が休憩していると、ルビエが走ってくる姿が、アリアの休憩している場所から見えた。そして、ルビエが、近衛騎士団が休憩している場所まで来ると、叫んだ。
「近衛騎士団の部隊長は、今すぐ私の下に、集合しろ!」
嫌な予感がするなとアリアは思いながら、アリアはルビエの下に行った。そして、続々と部隊長が集まり、数分後には、全ての部隊の部隊長が集合した。
「よし! 全員、集まったようだな! 我が軍が、スーヴェル平原まで前進し、ブルーティア帝国軍とオーシア王国軍の連合軍に攻撃を仕掛けることが決まった。そして、近衛騎士団も出撃することになったため、今すぐに出発準備をせよ。出発は、2時間後だ! それぞれ、かかれ!」
「ハッ!」
ルビエの命令に対して、近衛騎士団の部隊長は返事をすると、すぐに自分の部隊がいる場所に向かっていった。
(……はぁ。また、戦いか……)
アリアはそんなことを思いながら、他の部隊長と同様に、アリア隊の休憩している場所に向かった。そして、アリア隊の面々に、出撃することを伝えた。『またかよ!』と、アリアの言葉を聞いていた、マグヌスが言っていた。
私も、同じ気持ちだよと思いながら、アリアはアリア隊を指揮して、王都タイムを出発する準備をさせた。そして、2時間後。アスール王国軍は、王都タイムを出発した。
――アスール王国軍が、王都タイムを出発して、1週間が経過した。その間、ブルーティア帝国の妨害もなく、アスール王国軍は、順調に移動していた。だが、休憩時間が短かったため、アスール王国軍は、疲れていた。
そして、スーヴェル平原の周辺にアスール王国軍は到着していた。アスール王国軍は、スーヴェル平原から、少し離れた森林地帯に隠れていた。そこからでも、レファリア帝国軍が、ブルーティア帝国軍とオーシア王国軍の連合軍と戦っている様子を観察することが出来た。
「それにしても、こんな大軍同士がぶつかり合う戦場なんて、中々、見ることは出来ないぞ! なぁ、リカルド?」
ロナルドはそう言いながら、リカルドの方を向いた。リカルドは、地上を埋めつくす両軍の兵士が戦闘を繰り広げている様子を見ていた。
「私も、こんな大軍同士が戦闘をしている戦場を見るのは、生まれて初めてだ。この戦いに割って入るのは、中々、勇気がいるな」
「だから、万全を期して、明日に攻撃することにしたんだろう?」
「そうだ。これで、多少は兵士も休めるだろう。この様子だと、今すぐに、戦況が変わるということもあるまい。1日だけなら、休んでも大丈夫だ」
「まぁ、確かに、そうだな。それじゃ、俺も明日に向けて、準備するわ! じゃあな!」
ロナルドはそう言うと、自分の天幕へ戻っていった。
(明日のために、私も自分の天幕で休憩しよう)
リカルドはそう考えると、自分の天幕へ戻っていった。
ロナルドとリカルドが、自分の天幕に戻っていた頃。アリア隊とアリア自身も自分の天幕で寝ていた。そんなアリアの天幕に、一人の男性が近づいて来ていた。アリアは、その気配に気づくと、天幕を出て、その気配の人物が誰かを確認した。
「誰かと思ったら、師匠ですか。どうしたんですか?」
「いや、明日まで暇だから、アリアちゃんと修行しようと思ってさ!」
「……師匠の申し出は嬉しいのですけど、疲れてるので、寝かせて下さい。あと、今回は、師匠も出るんですか?」
「そうだね! なんか、ブルーティア帝国の黒竜騎士団が来ているらしいんだよ! 噂だと、ただの竜騎兵じゃなくて、黒い竜に乗っているらしいよ! しかも、その竜は、普通の竜と違って、急所を狙わないといけないらしいよ! それ以外だと、鱗で弾かれるんだって! 戦うのが、楽しみだよ!」
「そうですか。それじゃ、私は寝るので、失礼します」
「了解! ゆっくり、休んでね!」
レリフはそう言うと、どこかへ行った。アリアも、天幕の中に戻ると、すぐに寝た。
――次の日の朝。アスール王国軍は、攻撃準備を整え、出撃の合図を待っていた。既に、レファリア帝国は、ブルーティア帝国軍とオーシア王国軍の連合軍と戦闘を開始していた。アスール王国軍が隠れている森林地帯まで、その戦闘音が聞こえていた。
「よし! 準備は整ったようだな! それでは、全軍、突撃!」
マイロがそう叫ぶと、アスール王国軍が連合軍に向けて、突撃を開始した。だが、アスール王国軍の攻撃を、連合軍は予期していたようであった。そのため、アスール王国軍の突撃に対して、連合軍の部隊が防御態勢に移行していた。
「やはり、こちらの動きは読まれていたか! だが、今更、引き上げることは出来ない! 近衛騎士団、突撃して、敵の防御を崩せ!」
「ハッ!」
アスール王国軍の先頭を馬で走っていたルビエがそう言うと、近衛騎士団は返事をして、連合軍に突撃をしていった。上空からは、矢が降り注いでいた。
「アリア隊も、突撃するぞ! 私に続け!」
「おう!」
アリア隊の面々も、アリアの声に返事をすると、アリアを先頭にして、突撃を開始した。そして、アリアは、盾を構えている連合軍の兵士を蹴散らしていった。その後ろから、アリア隊も、連合軍の兵士に攻撃していた。
近衛騎士団の突撃によって、連合軍の陣形に
「このまま、一気に突き崩せ!」
ルビエがそう叫ぶと、近衛騎士団は、一気に突撃を開始した。これには、連合軍もたまらず、後方へ後退し始めた。そこに、アスール王国軍が追撃を加えたため、連合軍は、総崩れになり始めていた。
(このままいけば、勝てる!)
アリアがそう思いながら、連合軍の兵士を倒していると、上空から黒い竜に騎乗した竜騎兵が、急降下して、アリアに攻撃を仕掛けてきた。当然、アリアも気づいて、急降下してくる竜騎兵の槍を剣で弾くと、竜に攻撃を加えた。
だが、ガキンという金属音が辺りに響き、アリアの剣が弾かれた。そして、黒い竜に騎乗した竜騎兵は、そのまま、上空へと戻っていった。
(あれが、黒竜騎士団の竜騎兵か! 騎乗している兵士も強いな!)
アリアは、周りの連合軍の兵士を倒しながら、そう思った。そして、周りを確認すると、黒竜騎士団の攻撃によって、アスール王国軍の突撃の勢いが完全に止められていた。そして、連合軍は、そのまま退却していった。
その間に、レファリア帝国軍は、オーシア王国の王都に攻撃を仕掛け、一気に攻め落としていた。アスール王国軍も、これ以上、深追いすれば、被害が大きくなると考え、進軍を停止した。
その後、ブルーティア帝国は、オーシア王国の王都を攻めようとはせずに、和睦の使者をレファリア帝国に送ってきた。どうやら、ブルーティア帝国は諦めたようであった。レファリア帝国も、これ以上、戦うのは得策ではないと考え、その和睦に応じた。
こうして、スーヴェル平原の会戦が終了した。
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