第27話 勝機

ドロル:「さっきの植物人間を出せ!お前にはもう興味が無い」


アルバ:「悪ぃな。俺がお前をぶっ倒すことに決まったんだわ。大人しく殴られろ!」


ドロルは今まで1度心が折れた人間がまた勢いを取り戻したことを見たことがなかった。

だが、目の前の少年は最初に挑んできた時よりも目が生き生きとしている。

その不思議な光景にドロルは好奇心をそそられる。


ドロル:「グへへへへお前なかなか面白いやつだな。いいだろう相手してやる」


おでこから生えている2本の角をまるでサイのようにアルバに向けて突進する。

先程の砲撃で陰力が減ったとはいえ、最初に戦った時よりは断然スピードが増している。

しかし、今はヴォイドの呪符のおかげで集中力が増している。


アルバ:(この状態なら出来る)


脚と腕に陰力を集中させ、光を纏う。

ドロルの突進を楽々と右に避ける。


アルバ:「どうした?太って遅くなったのか?」


馬鹿にしていた虫けらが、まさか自分のスピードより早いとは思わずドロルは動揺する。

その隙を狙い、ドロルの腹部に左手で一撃叩き込む。


ドロル:「すばしっこさには驚いたが、決定打にかけるな」


アルバ:「やっぱ皮膚が硬すぎる、どうすりゃ」


バブル:「背中を見て!!」


アルバはドロルに近づき、目の前でグローブを思いっきり光らせて視界を奪う。


ドロル:「グワァァ」


その間に背後に回り込む。

すると、まだレイスの刺した影刃がドロルの体にめり込んでいる。

急いでアルバはそこに一撃を入れよるとする。


アルバ:「壹ノ業 閃光の天撃」


ドロル:「グウォォォォ!!!」


視界を奪ったはずのドロルが、即座に体の構築を変えて影刃を体から押し出してしまう。


アルバ:「まじかっ!でも、これなら効くんじゃねぇか!」


アルバは閃光の天撃の発動をやめ、即座に業を切り替える。


アルバ:「貮ノ業 瞬刃光破」


シュゥーー


ドロルの背中から煙が上がっているが、全く効いている様子は無い。


ドロル:「もっと驚かせてくれ、退屈だ」


アルバ:(手刀じゃ奴にダメージを与えれるほど深くは斬り込めない...)


ドロルは体を捻り、右足を床に思いっきり踏み込む。

すると床に亀裂ができ、タイルやコンクリートと一緒にアルバは打ち上げられる。


アルバ:「なっ、なんだ!?」


そのタイミングを逃さずドロルは殺すつもりで強烈なパンチをかます。


リーフ:「やばい!あれじゃ避けられない」


リーフは蔓を何本もドロルの腕に絡みつける。

それはパンチの威力を弱めることに成功するが、パンチ自体を止めることは叶わなかった。


アルバ:「ぐはぁぁっ!!」


ドンッ


飛ばされ、壁にめり込んだアルバから黒目が消えかかる。


バブル:「意識が飛びかかってる!早く回復を」


ヴォイド:「少しでもレイスの治療から離れると今度はレイスが危ないです!」


バブル:「そんなこと言ってもアルバが!!」


アルバの生死が危ぶまれる状況にリーフが一喝する。


リーフ:「お前が自分の手で争いを無くすんだろ!お前が死んだら誰が叶えるんだ!誰の夢だ!僕に見せてくれるんだろアルバの夢を!」


アルバ:「もちろん、俺が自分で叶えないと意味無いっすよ...そのために最強になるまで信念封じたんすから」


リーフ:「なんだ、ちゃんと起きてるじゃないか。1発かましてこいヤンチャ坊主」


アルバ:「任してくださいよ師匠」


ゆっくりと壁から体を剥がし、2本の足で地に立つ。


アルバ:(とは言ったものの、どうすっかな。俺の攻撃は一切効かないなんてな。早速自信無くしそうじゃねぇかよ)


ドロル:「万策尽きたか?まだ目は死んで無さそうだな。苦しみの中で殺してやる」


ドロル:「壹ノ業 狂苦の鋭牙」


ドロルの身体中から鋭く大きな牙のような物が生えてくる。


ドロル:「この牙の表面には特殊な液が膜を張ってる。少しでもかすれば正常な思考は出来ず、痛覚だけが何十倍にも膨れ上がる。ただ立っているだけでも死にたくなるような苦痛が襲いかかって1発KOだ」


アルバ:「こいつ、業まで狂ってるのかよ!」


ドロルは体から牙を発射する。


ブチッブチッ


体から牙がちぎれ、悲痛な音と共に発射された牙はアルバを目掛け飛んでくる。


リーフ:「アルバのスピードがあるといえど全て避けるのは不可能だ、ヴォイドやるぞ」


リーフは何本もの蔓を生やし、牙を撃ち落とす。ヴォイドは札で防御壁を展開してガードする。


ヴォイド:「アルバ君!何枚か落とし損ねたです」


アルバ:「こんだけなら余裕で避けれます!」


ドロル:「馬鹿め。獣の牙は獲物を喰らうまで逃さないぞ」


ドロルの言う通り避けたはずの牙が向きを変えて追ってくる。


リーフ:「あれも落とさないと」


リーフが蔓を伸ばして落とそうとするが


ドロル:「つまらないことするなよ、大人しくしてろ」


ドロルはカマキリのように手首から鎌を生成して、リーフの蔓をスパスパ切ってリーフ達に近づく。


バブル:「ぎゃー!!キショいのが来る!!」


リーフ:「残りの力じゃ歯も立たないだろうけど背に腹はかえられないか」


ドロル:「くたばり損ない達はさっさと死ね!」


勢いよく鎌を振りかざす。

するとドロルの背後からアルバの声が聞こえる。


アルバ:「おーい忘れ物だぞー!」


アルバはドロルの股の下をスライディングで滑り込んで現れる。


グサッ ザシュッ ザクッ


その直後、アルバを追っていた数本の牙がドロルの背中にざっくり刺さる。


ドロル:「痛ぇぇぇ!!グワァァ!!」


牙の刺さった箇所から紫の線が体中に張り巡っていく。

恐らくこの線が痛覚を何十倍にもしているのだろう。


ドロルは自身の隠力を解放する。


ドロル:「虫けらごときがぁぁ」


アルバ:「死にたくなるほど苦痛が走って1発KOじゃなかったのかよ!話が違うじゃねぇか!」


ヴォイド:「隠力で能力を抑え込んで、その間に苦痛に耐性のある体の構築に変えたんだよです」


いつの間にかヴォイドはドロルの体に呪符を貼っており、ドロルの体で起きていたことを視覚化していた。


ヴォイド:「けど、今ので奴はかなり力を使って、ダメージも蓄積されてるです。また体の構築を変えて、せっかく蓄積したダメージを逃がすかもしれないです。チャンスは今しかないです!」

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