第4話 新天地
ゼラノス:「ほら見えてきたぞ。厳命基地 緋縅支部だ。」
ゼラノスの言葉にアテナは不満ばかり垂れ流す。
アテナ:「やっとか。いつもより随分のんびりだったな、太ったか?」
ゼラノス:「しゃーないでしょ、右脇にでかい荷物抱えてんすから。ほら」
とゼラノスはアルバの方を見ると、今にも吐きそうな顔でなんとか必死に耐えている。
ゼラノス:「ちょっ、おまっ!絶対吐くなよ!俺の服に吐いたらお前がスパイだって言いふらすからな!」
アテナ:「喋ってないでもっと足を動かせ。もう砂浴びの時間なんだ。てか、やっぱりお前は乗り心地が悪いな」
アテナは相変わらず文句しか言わない。
ゼラノス:「俺はネズミ運びのために隊長やってるんじゃないんですけど」
アテナ:「バカかチンチラだ!!ワザとだろ?お前ワザとだろ??」
アテナはゼラノスのほっぺを怒りながらペチペチする。その瞬間、アテナの視界に面白い光景が映り、分かりやすく悪い顔でニヤける。
アテナ:「なぁゼラ〜、そいつスパイとしてやっていくらしいぞ〜」
アテナのその言葉にゼラノスは急激に変な汗が吹き出る。恐る恐るアルバを見ると、それはそれは盛大に吐き散らかしていた。
ゼラノス:「ギャーーーーーーーァァァ!!!」
成人男性から発せられたとは思えないほどに大きな悲鳴は隣町まで響き渡った。
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カァーカァー
カラスの鳴き声が聞こえ始める。もうすっかり夕暮れだ。
アテナ:「チンチクリン、お前が吐いたせいで基地直前で運行休止しちまっただろ」
アルバ:「あれで吐くなって方が難しいですって」
少し回復したアルバとアテナが仲良さげに歩き、その少し後ろを涙目のゼラノスが何やらグチグチ言いいながら歩いている。
ゼラノス:「こいつ絶対スパイだわ、打首だわ。明日ブルーに引き渡しに行かねぇと。俺にゲロかけるってスパイ行為よりも普通に罪重いからね。いやマジで打首からのケツバットだわ。何発でも打ち放題だな。せっかくならケツバッティングセンターでも開業して金稼ぐか」
アルバ:「なんか後ろでブツブツ言ってますけど大丈夫ですかね?」
アテナ:「ハハハッ面白ぇなお前!お前のせいなのに"大丈夫ですかね?"はないだろ!ハハハッ。そうだな、ならその口でキスでもしてやったらどうだ?」
アテナの提案が聞こえたゼラノスは、口を膨らませて後ろからアテナを睨みつけた。
アテナ:「着いたぞチンチクリン、ここがお前の仕事場兼新しい家だ!」
そこには燃えるような赤色をした無駄に横長の建物が建っていた。
アルバ:「うぉぉぉすげぇぇぇ!!...でもなんでこんな横に細長いんすか?」
アテナは1回溜息をついてから短い指でゼラノスを指さした。
アテナ:「この怠け者が階段はしんどいから階段無しの建物がいいとか抜かしやがってな。本来5階建てになるはずだったものを横に長くすることになった」
アルバは後ろを振り返ってゼラノスを見ながら、そこまで面倒くさがりだったのかと呆れたように苦笑する。
ゼラノス:「絶対上り下り無い方が楽でしょ!」
ゼラノスは必死に反論しながら近寄ってくる。
しかしアテナは落ち着いて問う。
アテナ:「その結果どうだった?」
ゼラノスは拗ねたように下を向き、しょんぼりと答えた。
ゼラノス:「端から端までの移動が大変で、大人しく5階建てにした方が楽でした...」
まるで親に怒られる子供だ。実際はチンチラに怒られる成人男性だが。
アテナ:「だから私は反対したんだ」
過ぎた話だがアテナはかなり根に持っている。端から端までの移動は人間でもしんどい。それを小さくて可愛らしい足のチンチラが移動するとなれば、疲れ具合はトライアスロンをするのと何ら変わりないからだ。
そうこう話しているうちに2人と1匹は入口の前まで着いた。アルバはドアに近づくが開く気配が無い。
アルバ:「自動ドアじゃないんすか?」
アルバの素朴な疑問にゼラノスは答える。
ゼラノス:「基地内は関係者以外立ち入り禁止なんだ。生体認証式だからお前のも登録しないとな...けど、今は1秒でも早く風呂に入りたい。お前のせいでな」
と言いながらゼラノスはドアの横のパネルに手を置く。
機械音声:「オカエリナサイマセ、ゼラノスサマ」
機械音声と共にドアが開く。
アルバ:「すげぇ!喋るドアだ!」
無邪気にも機械音声によってアルバのテンションは跳ね上がる。
???:「テメェら隊長のご帰還だぁぁ!!!」
ドドドドドドッ
バタバタバタ
基地内から凄まじい大声と走る音が聞こえる。
???:「ご苦労さまです!隊長ぉ!」
???:「やっと帰ってきたかアホナマケモノ!!」
???:「お疲れ様です」
???:「隊長、お帰りなさいです」
ドアの向こうに何人か見える。
ゼラノスがアルバの背中をポンッと押す。
ゼラノス:「お前の先輩達だ、存分に可愛がってもらえ」
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