第17話
自宅のソファーに俺は腰をかけ座った。
端山と教授はため息をつくと心配するように声をかけた。
「本当に大丈夫ですか?」
「ええ、助かりましたよ。あのまま座ってるわけにもいかないし来てくれて良かったです。それにしても、端山さんがバイクで現れる何て」
「こっちに滞在する際に富加さんに借りたので」
「え、教授が!?」
「昔バイクいじりが趣味だったのだが、今は乗ってなかったのでな。使わず埃被ってても仕方がないので、端山君に移動手段としてしたのだよ。それはそうと本当に杉田美穂。いやお憑き様は君の前に現れたのかね?」
「はい。昨日俺たちが話していた件で神雷というのでしょうか、落ちた場所がどうも今いるこの場所周辺らしいのです。周囲というかあの巨木の辺りを調べていた時に彼女は現れました。そこで俺は彼女と話して彼女は俺の事をお気に入りと」
「なるほど、お気に入り……。しかし何故箕原君が?」
「どうもこの地域はお憑き様による影響があるらしいのですが、影響下が俺が人一倍以上に受けているとのことだそうです。多分そのせいかもしれないですが」
「降臨した場所がここだからか。住んでいる場所からか。私達もあの資料を読み直して気づいたのだが、どうも本来神と云うのは形はどうであれ神社、祠、媒体となる物がその場所にあってこそ拠り所でようやく具現化できるものだそうだ」
「どういうことです?」
「つまり、当時災害があり移動させたとあるが、元々いた場所から動く事はあり得ないというわけだ」
「けど、お憑き様である杉田美穂は横小見町内を動いていますよ?」
「彼女の場合はあの肉体が媒介かもしれないというわけだ」
あれが媒介?
つまりは憑依して乗り移ったわけか。
確かに当時は生贄というなの若い男女の肉体と本に載ってあったが、数百年あの姿って事はゾンビか?
仮に人間を媒介としているとして、健康な女性と変わりない姿。
「更にはお憑き様というのも、そもそもの由来がそこにあるのかもしれない」
「確かに憑くという意味でなら納得しますが、しかしあれを見る限り何百年前の人間と見えるのは
「ええ確かに、仕事柄僕も幾人もの人を見ましたが彼女の肌質などは見た目と年齢が紛れもなく生きた人と同じ。見分けを付けるのは難しいかと」
頷きながらそう端山は云った。
教授は腕を組むとうーんと唸る。
「これも予想なのだが、乗り移ったであれ見た目以外で何かしらかけ離れた部分はあるかもしれない。あの写真の女性や箕原君が会ったお憑き様が同一人物であるのだから」
「見た目以外……。腕の部分ですが何度か触ったことありますが、冷たかったですね。けど顔は普通に健康的でしたし、あれもお憑き様の力なのですかね」
納得するように教授は頷いた。
「死人を蘇らせ動かす。お憑き様にはその力があると。なら今後僕等の前にも現れるかもしれないですね」
「祭りが行われる時には確実に」
「箕原君、やはりお憑き様は祭りには現れると」
「ええ、そういう話もしました。祭が終わると順番に殺すと宣言はしました」
「やはりそうなるか。急がなければならないな行こうか端山君」
「はい」
そういうと教授と端山さんは立ち上がる。
「二人ともどこへ?」
「丹波、御堂峰両家だよ。君の話も含め今後の対策を話し合う必要性があるので」
「でしたら俺も」
「未だに歩くこともままならないだろうから結果はまた折り入って伝えるので今はゆっくり休んでいたまえ」
教授の云う通り、歩く事も立ち上がる事も困難なのは事実。
仕方がないと思い二人に任せる事にした。
二人が出ていくと俺はため息をつき横になった。
時計を見ると昼前。腹は減っていないが今日の出来事を振り返りながら目を閉じた。
ふと頭に暖かい感触があり次に目を開けると、千鶴の顔が映りこむ。
嬉しそうに微笑みながら俺の頭を撫でていた。
後頭部の感触からしてこれは膝枕ってやつか……って、ん?
どうして千鶴は俺に膝枕を?
「おじさんおはよう。ぐっすり眠っていたよ?」
窓に視線を向けると夕暮れの光が家の中に差し込んでいた。
どうやら本当に眠っていたらしい。
慌てて起きるのも失礼か。
俺はゆっくりと顔を上げようとしたが、千鶴が拒むように俺の頭を押さえる。
「まだ起きちゃだーめ」
「けど」
「けどじゃないの。聞いたよ? 学校に行ってる間におじさんの前にお憑き様が出たんだって」
「端山さん達から聞いたのか?」
「うん」
「ならなおの事こんなゆっくりしてる暇がないのは分かってるだろ?」
「分かってるけど、あたしも含めて皆の問題なんだから。それにここ最近色々バタバタしてたから、今ぐらいゆっくりした時間も必要だと思うの」
確かにお憑き様関連で調べ初めてからここ最近色んな事が起きたのは事実。
まだ時間も残されてるし千鶴の云う事も至極まっとうな意見か。
「それにお父さんからも云われたし、ゆっくり休ませてやりなさいって」
「文彦さんにも云われたのか…………え?」
「お父さんもおじさんの苦労は知ってるしね」
「ちょっと待て。もしかして文彦さんここに来たのか? それにこの状態で?」
「うん、あたしが来てちょっとしてからかな。他に端山さんに富加さんが来たんだけど、おじさんが寝てるからって事で明日にあたしの家で渡したい物や話をするって。そういえば出ていくときお父さん目をこすりながらだったかな。花粉症の季節じゃないのにね」
そう云いあははと気楽に笑う千鶴。
対する俺は気分が滅入る。
明日会うの怖いな。別の意味で殺されそうだ……。
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